兎来栄寿1年以上前漫画版は定期的に読み返したくなりますね。 哲学的で深いテーマに真正面から挑んで書き切っていて読むのにもカロリーは要りますが、比類なき名作だと思います。 いつか漫画版全部、映像化して欲しいなぁと昔は思ってました。 そして、ナウシカは可愛いですね(大事)。風の谷のナウシカナウシカが可愛い3わかる後悔の先へ歩み始める彼らの物語マイ・リグレット 砂糖野しおん兎来栄寿皆さんは人生において「何であんなことを言ってしまったんだろう」「あのとき、もしも違う行動を取っていれば」といった強い後悔はあるでしょうか。 私は大いにあります。何なら時々、色々と思い返して苦鳴を上げてしまうタイプです。人間には折角「忘却」という便利な機能が付いているのに、忘れられないことばかりです。 ただ、人生とはそうした後悔の連続で作られるもの。後悔があるからこそ、未来へ向けて推進する力が湧くし成長もできるという面もあります。 この作品は、そんな個々人の過去の苦い後悔を想起させてくるような内容です。 スリ・恐喝・ギャンブルなどを日常茶飯事とする不良少年の主人公は、無料でご飯を食べさせてくれる老人が営む店を知りそこに通うようになります。 その老人には、非常に頭脳明晰でありながら他者との関わり合いが上手くできずに引きこもりになってしまった孫がいました。 不良の主人公と、元・優等生の老人の孫。まったくタイプの違うふたりであるが故に、そこに物語が生まれていきます。そして、彼らの行動原理となるのは、まさにタイトル通りそれぞれの「後悔」です。 後悔は前述の通り、人生における通過儀礼のような側面もありますがそれでも相応の痛みは伴うもの。そんなところに 「お前もあの子らも みんな何かが足りてないんだよ でも それでも生きていかなきゃだろ?」 という、人生の先達である老人の言葉が非常に沁みます。 最初はインモラルな主人公に感情移入しにくいかもしれませんが、1冊を読み終える頃にはそれも変わっているかもしれません。マンガは愛と魂ッッッ!!!!! #1巻応援ゲモノが通す 堀北カモメ兎来栄寿「シシファック」の堀北カモメさんが初の連載を始める。 それは、2022年のマンガ界において明らかに大きなトピックのひとつでした。 「シシファック」をご存知ない方は、検索またはマンバのリンクを辿って読んでみてください。 野生の獣のような剥き出しの荒々しさは、技術云々を超えたところにある圧倒的な熱量を体内を駆け巡る血液に与えてくれ、興奮を呼び覚ましてくれます。 この『ゲモノが通す』も、「シシファック」の持つ類稀なる熱量を見事に引き継いでいます。その上で、秀でた現代的なキャラクターたちの魅力、抜群なセリフのセンス、エンターテインメント性たっぷりの設定やストーリー展開など更なる進化を遂げた境地を見せてくれます。 作者の実体験からくる「補修職人」のディティールも素晴らしく、あまり知らない、しかし誰しもの身近に存在する世界を見せてくれる仕事マンガとしての魅力も携わっています。 それでも、やはり一番の魅力はこの作品に込められた魂の超常的な熱量。『ゲモノが通す』という怪作が放つ咆哮を、言葉では伝えきれない原石というにはあまりに巨大な聳え立つ巌の魅力を、その身で体感してみてください。 明らかに人を選ぶ作品ですが、『忍者と極道』などが好きな方には特にお薦めです。 #マンバ読書会兎来栄寿1年以上前『2022年完結巻これも良かった編 #マンバ読書会』リスト作成をしました兎来栄寿1年以上前『2022年完結作品 #マンバ読書会 』リスト作成をしましたJK×アコギの青春……に留まらない物語 #1巻応援ドミナント 五十嵐純兎来栄寿good!アフタヌーンやハルタに読み切りを掲載していた五十嵐純さんの初商業連載作品です。 何と言ってもまず絵が良いですね。透明感のある表紙のカラー絵も良いですが、フリーハンド多めで描き込まれた線が生み出す人物や背景が特に魅力的に感じられます。 内部生が多くいる高校で新生活のスタートを上手く決められず、孤立してしまった外部生の少女が主人公。彼女が彷徨った末に辿り着いた謎の屋敷の謎の青年からギターを教わっていくところから物語がスタートします。 全くの未経験者がギターを始めるにあたって、持ち方や指の使い方など基本の基本から学んでいく様子がかなり本格的で、これを読んでギターを弾いてみたいと思う方もいるかもしれません。 ギターを始めたことでクラスの中でも友達ができていき、「ああ、ギターを題材にした青春ストーリーなのかな」と思っていたら……何やら違う気配が漂ってきます。個人的にはそこに非常に惹かれる作品です。色々な意味で目が離せません。 説明しようとするとネタバレになるので、とにかく読んでみてくださいと言う他ないのですが……。タイトルの「ドミナント」は音楽用語であり、不安定性を暗示させる言葉でもありますが、それに加えて本来の言葉の意味合いも強いタイトルなのかなと思います。 幕間のオマケマンガや、筆者がちょくちょくTwitterにアップする落書きも面白いです。すんなり行かない人生だからこそ。 #1巻応援朝子のムジカ!! 和田フミエ兎来栄寿中年女性主人公の名作がまたひとつ。 40歳にして4,5年の結婚生活に終止符を打って東京から何もない地元に戻ってくるも、新しい職はなかなか見付からず自身の調子や周囲の人間模様などさまざまなところで加齢の影響を感じずにはいられない主人公の朝子。昔すごく好きで楽しく吹いていたトロンボーンも、今では全然吹けなくなってしまっていました。 高校生までずっと委員長を続けてきて、部活も勉強も仕事もとにかく真面目にやり抜いてきた朝子。自分の存在を軽んじられても思わず作り笑いで濁してしまったり、無思慮な言葉に傷つけられる朝子に共感を覚える方も多いでしょう(田舎の悪い部分のリアルさも巧み)。 そんな朝子が「それでも本当に好きなもの」を支えに前に歩んでいく姿には、ポジティブなエネルギーを貰えます。人生の選択で迷った際は心が踊る方にすべきだし、本当に大切にすべきは自分の「好き」という気持ちであるなど大事なことを物語で示してくれます。 朝子に厳しく当たる青年の過去のエピソードに起因する関係性や、朝子との立ち位置のコントラストも秀逸です。すんなりと生きていない人だからこそ、誰かを勇気付けられることもあるんですよね。 令和3年のデータによると男の平均寿命は 81.47 年、女の平均寿命は87.57年。つまり、40歳というのは平均してまだまだ人生の半分にも満たないわけで、ここからまだまだ長い旅路が続いていくわけです。 丁度10月は『あした死ぬには、』の最終巻も出ましたが、この年代が主役の面白い作品はこれからますます需要が増していくと思いますし、これからの時代にますます価値を放つ一作だと思います。実写化にも向いていそうですね。仄暗い世界の言語化と、奇異な縁の美しさ回顧 冬虫カイコ作品集 冬虫カイコ兎来栄寿冬虫カイコさん初の商業作品集。女性同士の関係性を主軸とした話が中心となっており、仄暗さがあるのが特徴となっています。 私は冬虫カイコさんの鋭利な眼差しによる世界の切り取り方が好きです。 例えば、webでも大いにバズったこの短編集の1作目「帰郷」の冒頭。従妹の葬儀のため数年ぶりに帰ってきた故郷でタクシーの運転手に行き先を告げただけで悼句を返された時に出る 「半径数キロメートルの円の中で すべてが進行し すべてが共有される だだっ広いくせに狭苦しい社会」 という息苦しい田舎の閉塞感への端的な表現。 こうした良さが随所に見られます。多くの人が抱いたことがあるであろう何とも形容しがたいモヤッとした想いの見事な表出など、マンガによる抽象概念の言語化に非常に長けている方だと感じます。 「きずあとに花 第2話 ふたりの色目」も6万RT・20万いいね以上されたお話ですが、個人的にも特に好きです。「かわいい」という言葉にトラウマのある年配の古文教師と、何かにつけて「かわいい」を連呼するギャルの物語です。 描き下ろしの「刺青」もそうですが、普通に生きていれば交わらない者同士が偶然の縁で美しく結びつく瞬間が謳うように描かれており、沁みます。 劣等感や嫉妬など負の感情に苛まれる主人公たちは、他の物語であればそんな感情とは無縁の主人公に隠れた脇役だったかもしれません。そうした陰の存在に寄り添い、こうして巧みに物語化する冬虫カイコさんの手腕。 そして、そんな感情も清濁合わせていつか懐かしく回顧する日が来るのかもしれない、と本を閉じてタイトルを見返した時に思います。 良さに嘆息しながら今後の作品も楽しみに待ちたいです。青い海とかわいい犬に囲まれた再起の物語キミがくれる彩の海。 波野ココロ兎来栄寿小さな離島で毎日海を眺めながら絵を描き、愛犬と穏やかに暮らす生活。でもそこにはしっかりスマホもPCもあるという適度な文明化。これ、ひとつの理想形では? 私は引退した後は大量のマンガと共に山奥に隠棲したいと考えていますが、こういう風に描かれると海辺も良いよなあと思わずにはいられませんでした。 そんな羨ましい暮らしをしている青年・大崎穂高ですが、しかしそれは都会の生活で負った心の傷を治療するためのもの。楽園のような島の生活ですが、その裏に暗い影を感じさせます。 そして、穂高が住む島に漂着するのが嵐の日に波に流されてしまった海洋生物研究者志望の七倉海都(ななくらかいと)。そこから、彼らによる斬時の共同生活が始まっていきます。 波野ココロさんの絵が美しく、キャラクターも背景も非常に魅力的です。特筆すべきは、穂高と一緒に暮らす愛犬のビケット。フランス語で「かわいい」の名を冠するビケちゃんが最初から最後までたくさん愛らしく描かれており、筆者の犬愛が伝わってくるようでした。 人間関係や芸術は綺麗事だけでは済まず辛い部分も多いですが、それを乗り越えて再生していくひとりの人間の美しい物語として面白く読ませてもらいました。 BLとしての側面ももちろんあるものの若干薄めなので、そちらを求める方は物足りなさを感じるかもしれない一方で、普段あまりBLを読まない方にもお薦めしやすい作品です。きっと仏像に会いにいきたくなるマンガ仏ガール 柚ちえこ兎来栄寿1コマ目が誕生釈迦仏、2コマ目が軍荼利明王のポーズの真似をする主人公から始まるマンガもなかなかないでしょう。 この作品は、「仏像変態」と呼ばれるほど仏像に偏愛を寄せる美術部顧問の江西先生と、その教え子である城上(しろかみ)さんが主人公の物語です。 江西先生の推しと押しの強さによって、城上さんはさまざまな仏像巡りに付き合わされていきます。 京都・奈良を中心とした寺社仏閣、平等院や永観堂禅林寺などが精緻に描かれ、思わず二重の意味での聖地巡礼をしたくなるほどです(六波羅蜜寺の空也上人像のエピソードでは『空也上人がいた』などもフラッシュバックしつつ……)。 とにかく江西先生のキャラが濃く、 「才能のある後輩やなんで売れてるかわからない作家を見ると気が狂いそうになるわ」 「みんなも早くお酒飲める歳になるといいわねえ 飲んでる間は嫌なこと忘れられるわよ〜」 と、闇の深さ・人間的な弱さを生々しく感じさせます。 一方で、 「私たちは結果が出ない時不安になっちゃうけど… 人間いくつになってもアップデート可能なのよ!」 「人生の時間を使って何かやってるだけで偉いわよ」 といった言葉で教え子を優しく導いていく側面もあり、仏像を通して開いた悟りの境地を感じさせてくれながら読み手である現代人にも寄り添ってくれる内容となっています。 作中でも語られる通り仏像を見ている瞬間に私たちは仏像を通して自分の願いや悩みを見つめ直していて、そうした瞬間を人生の中に持つことは大事であると思います。この作品を読む時間もそれに近しく、間接的にそうした効用も生まれるかもしれません。独占配信のもったいなさとマンガ版の変わらぬ素晴らしさTIGER & BUNNY 2 THE COMIC 桂正和 上田宏 吉田恵里香 BNPictures 西田征史 T&B2 PARTNERS兎来栄寿2011年に放映され、熱狂的なファンを多数生み出した大人気作品『TIGER & BUNNY』。 当時は私もロックバイソンとコラボした牛角に足を運んだことを懐かしく思います。放映前からユニゾンファンだったのでオリオンをなぞるで更に人気が広まってくれたのも嬉しかったですし、藍坊主さんのED曲・星のすみかがメロディも歌詞も本当に大好きでした。 「僕が消え、遠い未来で、化石になったら、人は僕に何を見るだろう 分析して、名を付けて、解読をしても、愛した人は僕しか知らない」 とかもう最高ですよね。 2014年公開の『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』から8年が経った2022年、遂に待望の『TIGER & BUNNY2』が放映されました。新キャラクターは敵も含め非常に魅力的で、全話見終えたときの満足感は初代と同等でした(ところどころの若干作画の不安定さは2022年になると気にはなりましたが)。 ただ、勿体ないのは「Netflix限定」であること。そのせいか、あれだけ覇権級のコンテンツとして君臨していたにも関わらず私の周囲でも話題にしている人が驚くほど少ないです。また、pixivでも「TIGER&BUNNY」「タイバニ」といったタグが付けられた作品はそれぞれ14万件・1万件以上ありますが、「TIGER&BUNNY2」「タイバニ2」のタグでは170件・75件と驚くほど少ないです。1のタグに吸収されているとしても、零細ジャンルのような数字に愕然としました(私はもっと白黒が見たい、見られると思っていた)。 『ダンス・ダンス・ダンスール』や『サマータイムレンダ』、『風都探偵』などもそうですが今年は独占配信であるが故にブレイクしきらない作品が多く、実に勿体なく感じます。良い作品なだけに切実にもっと多くの人に観てもらえたらと思うばかりで、この文章もささやかな応援の意味を込めて綴っています。 そこで、この上田宏さんによるコミック版です。10年前にも素晴らしいタイバニマンガを描かれていた上田さんですが、そのクオリティは健在。 物語は、アニメでは描かれていない部分を描いており相互で補完し合うものとなっていますが、それぞれ単体でも楽しめるように作られています。コミック版の『TIGER&BUNNY2』にも、真っ直ぐな熱い血潮が流れています。 キャラクターもアクションも非常に魅力的な作画ですが、驚くべきは作画もほぼ一人で行ったとか。このクオリティを、独力で……。頭が下がる思いです。 かつてタイバニが好きだった方、興味はある方、知らないけれど熱くて面白いマンガが読みたい方にもオススメです。 世界を終わらせないためにスカートを捲る腕撃のパンツァー 牛乳のみお兎来栄寿「20XX年 世界は異世界のメスガキに支配された」から始まる叛逆の物語。流石は『女子小学生はじめました P!』の牛乳のみおさん、ブレません。また三十路男が美少女になるお話です。 お股から魔素が出る彼女たちに対抗できるのは「スカートめくり人類最強」と謳われた主人公だけ、という清々しいほど頭の悪い作品。 そんな主人公に対抗するべく敵(メスガキ)もパンツと一体となったコルセットを装備してきたり、技名が「五等分の俺」だったり、読めば読むほど混沌を極めていきます。 こんな設定でありながら、ちょっと良い話になるのも良い混乱。 描き下ろしスピンオフの「この学校では同級生のパンツを3つ集めた者だけが進級できる」という設定も天才的であると言わざるを得ません。 こういったバカマンガからしか接種できない栄養素が欲しくなった貴方に。 « First ‹ Prev … 79 80 81 82 83 84 85 86 87 … Next › Last » もっとみる
兎来栄寿1年以上前漫画版は定期的に読み返したくなりますね。 哲学的で深いテーマに真正面から挑んで書き切っていて読むのにもカロリーは要りますが、比類なき名作だと思います。 いつか漫画版全部、映像化して欲しいなぁと昔は思ってました。 そして、ナウシカは可愛いですね(大事)。風の谷のナウシカナウシカが可愛い3わかる後悔の先へ歩み始める彼らの物語マイ・リグレット 砂糖野しおん兎来栄寿皆さんは人生において「何であんなことを言ってしまったんだろう」「あのとき、もしも違う行動を取っていれば」といった強い後悔はあるでしょうか。 私は大いにあります。何なら時々、色々と思い返して苦鳴を上げてしまうタイプです。人間には折角「忘却」という便利な機能が付いているのに、忘れられないことばかりです。 ただ、人生とはそうした後悔の連続で作られるもの。後悔があるからこそ、未来へ向けて推進する力が湧くし成長もできるという面もあります。 この作品は、そんな個々人の過去の苦い後悔を想起させてくるような内容です。 スリ・恐喝・ギャンブルなどを日常茶飯事とする不良少年の主人公は、無料でご飯を食べさせてくれる老人が営む店を知りそこに通うようになります。 その老人には、非常に頭脳明晰でありながら他者との関わり合いが上手くできずに引きこもりになってしまった孫がいました。 不良の主人公と、元・優等生の老人の孫。まったくタイプの違うふたりであるが故に、そこに物語が生まれていきます。そして、彼らの行動原理となるのは、まさにタイトル通りそれぞれの「後悔」です。 後悔は前述の通り、人生における通過儀礼のような側面もありますがそれでも相応の痛みは伴うもの。そんなところに 「お前もあの子らも みんな何かが足りてないんだよ でも それでも生きていかなきゃだろ?」 という、人生の先達である老人の言葉が非常に沁みます。 最初はインモラルな主人公に感情移入しにくいかもしれませんが、1冊を読み終える頃にはそれも変わっているかもしれません。マンガは愛と魂ッッッ!!!!! #1巻応援ゲモノが通す 堀北カモメ兎来栄寿「シシファック」の堀北カモメさんが初の連載を始める。 それは、2022年のマンガ界において明らかに大きなトピックのひとつでした。 「シシファック」をご存知ない方は、検索またはマンバのリンクを辿って読んでみてください。 野生の獣のような剥き出しの荒々しさは、技術云々を超えたところにある圧倒的な熱量を体内を駆け巡る血液に与えてくれ、興奮を呼び覚ましてくれます。 この『ゲモノが通す』も、「シシファック」の持つ類稀なる熱量を見事に引き継いでいます。その上で、秀でた現代的なキャラクターたちの魅力、抜群なセリフのセンス、エンターテインメント性たっぷりの設定やストーリー展開など更なる進化を遂げた境地を見せてくれます。 作者の実体験からくる「補修職人」のディティールも素晴らしく、あまり知らない、しかし誰しもの身近に存在する世界を見せてくれる仕事マンガとしての魅力も携わっています。 それでも、やはり一番の魅力はこの作品に込められた魂の超常的な熱量。『ゲモノが通す』という怪作が放つ咆哮を、言葉では伝えきれない原石というにはあまりに巨大な聳え立つ巌の魅力を、その身で体感してみてください。 明らかに人を選ぶ作品ですが、『忍者と極道』などが好きな方には特にお薦めです。 #マンバ読書会兎来栄寿1年以上前『2022年完結巻これも良かった編 #マンバ読書会』リスト作成をしました兎来栄寿1年以上前『2022年完結作品 #マンバ読書会 』リスト作成をしましたJK×アコギの青春……に留まらない物語 #1巻応援ドミナント 五十嵐純兎来栄寿good!アフタヌーンやハルタに読み切りを掲載していた五十嵐純さんの初商業連載作品です。 何と言ってもまず絵が良いですね。透明感のある表紙のカラー絵も良いですが、フリーハンド多めで描き込まれた線が生み出す人物や背景が特に魅力的に感じられます。 内部生が多くいる高校で新生活のスタートを上手く決められず、孤立してしまった外部生の少女が主人公。彼女が彷徨った末に辿り着いた謎の屋敷の謎の青年からギターを教わっていくところから物語がスタートします。 全くの未経験者がギターを始めるにあたって、持ち方や指の使い方など基本の基本から学んでいく様子がかなり本格的で、これを読んでギターを弾いてみたいと思う方もいるかもしれません。 ギターを始めたことでクラスの中でも友達ができていき、「ああ、ギターを題材にした青春ストーリーなのかな」と思っていたら……何やら違う気配が漂ってきます。個人的にはそこに非常に惹かれる作品です。色々な意味で目が離せません。 説明しようとするとネタバレになるので、とにかく読んでみてくださいと言う他ないのですが……。タイトルの「ドミナント」は音楽用語であり、不安定性を暗示させる言葉でもありますが、それに加えて本来の言葉の意味合いも強いタイトルなのかなと思います。 幕間のオマケマンガや、筆者がちょくちょくTwitterにアップする落書きも面白いです。すんなり行かない人生だからこそ。 #1巻応援朝子のムジカ!! 和田フミエ兎来栄寿中年女性主人公の名作がまたひとつ。 40歳にして4,5年の結婚生活に終止符を打って東京から何もない地元に戻ってくるも、新しい職はなかなか見付からず自身の調子や周囲の人間模様などさまざまなところで加齢の影響を感じずにはいられない主人公の朝子。昔すごく好きで楽しく吹いていたトロンボーンも、今では全然吹けなくなってしまっていました。 高校生までずっと委員長を続けてきて、部活も勉強も仕事もとにかく真面目にやり抜いてきた朝子。自分の存在を軽んじられても思わず作り笑いで濁してしまったり、無思慮な言葉に傷つけられる朝子に共感を覚える方も多いでしょう(田舎の悪い部分のリアルさも巧み)。 そんな朝子が「それでも本当に好きなもの」を支えに前に歩んでいく姿には、ポジティブなエネルギーを貰えます。人生の選択で迷った際は心が踊る方にすべきだし、本当に大切にすべきは自分の「好き」という気持ちであるなど大事なことを物語で示してくれます。 朝子に厳しく当たる青年の過去のエピソードに起因する関係性や、朝子との立ち位置のコントラストも秀逸です。すんなりと生きていない人だからこそ、誰かを勇気付けられることもあるんですよね。 令和3年のデータによると男の平均寿命は 81.47 年、女の平均寿命は87.57年。つまり、40歳というのは平均してまだまだ人生の半分にも満たないわけで、ここからまだまだ長い旅路が続いていくわけです。 丁度10月は『あした死ぬには、』の最終巻も出ましたが、この年代が主役の面白い作品はこれからますます需要が増していくと思いますし、これからの時代にますます価値を放つ一作だと思います。実写化にも向いていそうですね。仄暗い世界の言語化と、奇異な縁の美しさ回顧 冬虫カイコ作品集 冬虫カイコ兎来栄寿冬虫カイコさん初の商業作品集。女性同士の関係性を主軸とした話が中心となっており、仄暗さがあるのが特徴となっています。 私は冬虫カイコさんの鋭利な眼差しによる世界の切り取り方が好きです。 例えば、webでも大いにバズったこの短編集の1作目「帰郷」の冒頭。従妹の葬儀のため数年ぶりに帰ってきた故郷でタクシーの運転手に行き先を告げただけで悼句を返された時に出る 「半径数キロメートルの円の中で すべてが進行し すべてが共有される だだっ広いくせに狭苦しい社会」 という息苦しい田舎の閉塞感への端的な表現。 こうした良さが随所に見られます。多くの人が抱いたことがあるであろう何とも形容しがたいモヤッとした想いの見事な表出など、マンガによる抽象概念の言語化に非常に長けている方だと感じます。 「きずあとに花 第2話 ふたりの色目」も6万RT・20万いいね以上されたお話ですが、個人的にも特に好きです。「かわいい」という言葉にトラウマのある年配の古文教師と、何かにつけて「かわいい」を連呼するギャルの物語です。 描き下ろしの「刺青」もそうですが、普通に生きていれば交わらない者同士が偶然の縁で美しく結びつく瞬間が謳うように描かれており、沁みます。 劣等感や嫉妬など負の感情に苛まれる主人公たちは、他の物語であればそんな感情とは無縁の主人公に隠れた脇役だったかもしれません。そうした陰の存在に寄り添い、こうして巧みに物語化する冬虫カイコさんの手腕。 そして、そんな感情も清濁合わせていつか懐かしく回顧する日が来るのかもしれない、と本を閉じてタイトルを見返した時に思います。 良さに嘆息しながら今後の作品も楽しみに待ちたいです。青い海とかわいい犬に囲まれた再起の物語キミがくれる彩の海。 波野ココロ兎来栄寿小さな離島で毎日海を眺めながら絵を描き、愛犬と穏やかに暮らす生活。でもそこにはしっかりスマホもPCもあるという適度な文明化。これ、ひとつの理想形では? 私は引退した後は大量のマンガと共に山奥に隠棲したいと考えていますが、こういう風に描かれると海辺も良いよなあと思わずにはいられませんでした。 そんな羨ましい暮らしをしている青年・大崎穂高ですが、しかしそれは都会の生活で負った心の傷を治療するためのもの。楽園のような島の生活ですが、その裏に暗い影を感じさせます。 そして、穂高が住む島に漂着するのが嵐の日に波に流されてしまった海洋生物研究者志望の七倉海都(ななくらかいと)。そこから、彼らによる斬時の共同生活が始まっていきます。 波野ココロさんの絵が美しく、キャラクターも背景も非常に魅力的です。特筆すべきは、穂高と一緒に暮らす愛犬のビケット。フランス語で「かわいい」の名を冠するビケちゃんが最初から最後までたくさん愛らしく描かれており、筆者の犬愛が伝わってくるようでした。 人間関係や芸術は綺麗事だけでは済まず辛い部分も多いですが、それを乗り越えて再生していくひとりの人間の美しい物語として面白く読ませてもらいました。 BLとしての側面ももちろんあるものの若干薄めなので、そちらを求める方は物足りなさを感じるかもしれない一方で、普段あまりBLを読まない方にもお薦めしやすい作品です。きっと仏像に会いにいきたくなるマンガ仏ガール 柚ちえこ兎来栄寿1コマ目が誕生釈迦仏、2コマ目が軍荼利明王のポーズの真似をする主人公から始まるマンガもなかなかないでしょう。 この作品は、「仏像変態」と呼ばれるほど仏像に偏愛を寄せる美術部顧問の江西先生と、その教え子である城上(しろかみ)さんが主人公の物語です。 江西先生の推しと押しの強さによって、城上さんはさまざまな仏像巡りに付き合わされていきます。 京都・奈良を中心とした寺社仏閣、平等院や永観堂禅林寺などが精緻に描かれ、思わず二重の意味での聖地巡礼をしたくなるほどです(六波羅蜜寺の空也上人像のエピソードでは『空也上人がいた』などもフラッシュバックしつつ……)。 とにかく江西先生のキャラが濃く、 「才能のある後輩やなんで売れてるかわからない作家を見ると気が狂いそうになるわ」 「みんなも早くお酒飲める歳になるといいわねえ 飲んでる間は嫌なこと忘れられるわよ〜」 と、闇の深さ・人間的な弱さを生々しく感じさせます。 一方で、 「私たちは結果が出ない時不安になっちゃうけど… 人間いくつになってもアップデート可能なのよ!」 「人生の時間を使って何かやってるだけで偉いわよ」 といった言葉で教え子を優しく導いていく側面もあり、仏像を通して開いた悟りの境地を感じさせてくれながら読み手である現代人にも寄り添ってくれる内容となっています。 作中でも語られる通り仏像を見ている瞬間に私たちは仏像を通して自分の願いや悩みを見つめ直していて、そうした瞬間を人生の中に持つことは大事であると思います。この作品を読む時間もそれに近しく、間接的にそうした効用も生まれるかもしれません。独占配信のもったいなさとマンガ版の変わらぬ素晴らしさTIGER & BUNNY 2 THE COMIC 桂正和 上田宏 吉田恵里香 BNPictures 西田征史 T&B2 PARTNERS兎来栄寿2011年に放映され、熱狂的なファンを多数生み出した大人気作品『TIGER & BUNNY』。 当時は私もロックバイソンとコラボした牛角に足を運んだことを懐かしく思います。放映前からユニゾンファンだったのでオリオンをなぞるで更に人気が広まってくれたのも嬉しかったですし、藍坊主さんのED曲・星のすみかがメロディも歌詞も本当に大好きでした。 「僕が消え、遠い未来で、化石になったら、人は僕に何を見るだろう 分析して、名を付けて、解読をしても、愛した人は僕しか知らない」 とかもう最高ですよね。 2014年公開の『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』から8年が経った2022年、遂に待望の『TIGER & BUNNY2』が放映されました。新キャラクターは敵も含め非常に魅力的で、全話見終えたときの満足感は初代と同等でした(ところどころの若干作画の不安定さは2022年になると気にはなりましたが)。 ただ、勿体ないのは「Netflix限定」であること。そのせいか、あれだけ覇権級のコンテンツとして君臨していたにも関わらず私の周囲でも話題にしている人が驚くほど少ないです。また、pixivでも「TIGER&BUNNY」「タイバニ」といったタグが付けられた作品はそれぞれ14万件・1万件以上ありますが、「TIGER&BUNNY2」「タイバニ2」のタグでは170件・75件と驚くほど少ないです。1のタグに吸収されているとしても、零細ジャンルのような数字に愕然としました(私はもっと白黒が見たい、見られると思っていた)。 『ダンス・ダンス・ダンスール』や『サマータイムレンダ』、『風都探偵』などもそうですが今年は独占配信であるが故にブレイクしきらない作品が多く、実に勿体なく感じます。良い作品なだけに切実にもっと多くの人に観てもらえたらと思うばかりで、この文章もささやかな応援の意味を込めて綴っています。 そこで、この上田宏さんによるコミック版です。10年前にも素晴らしいタイバニマンガを描かれていた上田さんですが、そのクオリティは健在。 物語は、アニメでは描かれていない部分を描いており相互で補完し合うものとなっていますが、それぞれ単体でも楽しめるように作られています。コミック版の『TIGER&BUNNY2』にも、真っ直ぐな熱い血潮が流れています。 キャラクターもアクションも非常に魅力的な作画ですが、驚くべきは作画もほぼ一人で行ったとか。このクオリティを、独力で……。頭が下がる思いです。 かつてタイバニが好きだった方、興味はある方、知らないけれど熱くて面白いマンガが読みたい方にもオススメです。 世界を終わらせないためにスカートを捲る腕撃のパンツァー 牛乳のみお兎来栄寿「20XX年 世界は異世界のメスガキに支配された」から始まる叛逆の物語。流石は『女子小学生はじめました P!』の牛乳のみおさん、ブレません。また三十路男が美少女になるお話です。 お股から魔素が出る彼女たちに対抗できるのは「スカートめくり人類最強」と謳われた主人公だけ、という清々しいほど頭の悪い作品。 そんな主人公に対抗するべく敵(メスガキ)もパンツと一体となったコルセットを装備してきたり、技名が「五等分の俺」だったり、読めば読むほど混沌を極めていきます。 こんな設定でありながら、ちょっと良い話になるのも良い混乱。 描き下ろしスピンオフの「この学校では同級生のパンツを3つ集めた者だけが進級できる」という設定も天才的であると言わざるを得ません。 こういったバカマンガからしか接種できない栄養素が欲しくなった貴方に。
兎来栄寿1年以上前漫画版は定期的に読み返したくなりますね。 哲学的で深いテーマに真正面から挑んで書き切っていて読むのにもカロリーは要りますが、比類なき名作だと思います。 いつか漫画版全部、映像化して欲しいなぁと昔は思ってました。 そして、ナウシカは可愛いですね(大事)。風の谷のナウシカナウシカが可愛い3わかる