こんな漫画は初めて見た。
ネタバレになるが、主人公がことごとく死ぬ。主要人物が死ぬという演出は劇的なので、最近の漫画では多用され、安易な死がインフレしていた。うんざりしていた。
物語の中での必然性のない死は、読者へ死という概念を間違った形で伝えるのではないか。罪深いとも言える。
ただ、この漫画の中での死は、世界を変えようとするとき、人は命をかけ、しかしその小さな命は世界に対しては無力で、そのメッセージを伝達していき次の可能性へと繋いでいくことで、不可能を可能にしていく、という現実、つまり死の意味が描かれていると思う。
現在の社会でも、たくさんの研究者や哲学者、芸術家が、小さな命で抗い、伝え、世界をより良くするために変えようとしている。
それらの、人類の涙ぐましい努力と名もなき亡骸たちへの鎮魂歌とも読みとれる。
素晴らしい作品である。