ゆゆゆ
ゆゆゆ
1年以上前
子供の体からドクドクお札を生み出すシーンがTwitterで紹介されていて、怖いもの見たさで読んだのが始まり。 女の子のように見えるけど主人公のルークは男。 最愛の姉を助けようとしていたら、偽札をドクドク生み出す能力を手に入れる。 ストーリーはぶっとんだ人とぶっとんだ人が、ぶっとんだことをして、ぶっとんでいるお話になる。 お金とお金儲けが好きな人たちが、いっぱいいる。 ルークがお金をドクドク生み出していても、いなくても、ぶっとんだキャラクターたちによる頭脳戦はとてもおもしろい。 さて、このマンガ。 さりげなく経済の難しい話も入れてくる。 タイトル然り、第一話の人力で偽コインを作って村人の生活を助けていた話然り、前フリはあるのだが、いかんせんお金を生み出すシーンの衝撃にすべてを持っていかれてしまっていた。 偽札(ルーク)を許してはならない理由、ルークを利用しようとする悪い人たちの解説とも言える、経済の話がされている。 なので、貨幣の制度について勉強するには、良い漫画になると思う。 ただ、「漫画読んで遊んでるんじゃないやい!勉強してんだ!!」と言っても、男の子がすごい顔になりながらお金をドゥクドゥク生み出す衝撃画像を見られた場合、信じてもらえるかはわからないが。 今ならジャンプ+で無料で全話読めるので、興味を持った方はぜひとも一読を。
toyoneko
toyoneko
1年以上前
最終回間近のハイパーインフレーションですが、 最新話(55話)があまりにも良すぎてもう我慢できないので ネタバレ全開で感想を書きます 未読の方はまず全話読もう! 2月17日まではジャンププラスで全話無料で読めるよ! さて、55話の良さはいろいろあるんですが、 とにかく正々堂々鮮やかに勝利条件が書き換わって ルークとレジャットの立ち位置が反転したという展開があまりにも見事だったので、 その点について書きます もともと、ハイパーインフレーションというのは、 「ルークの生み出す贋札をどう活用するか?」という漫画でした つまり、全く本物と見分けがつかないほど精巧でありながら、 番号が全て同じという致命的な弱点を持った贋札を どのように活用するか?というお話です 当初は、見せ金に使ったり、 物理的に紙の束として使ったりしましたが、 その真価が明かされたのは12話でした 大量に作った贋札を全て同時に「帝国に巣くう魑魅魍魎」どもに卸売りして 大儲けするというやり方が示されたわけです しかしこの方法には、「世界経済 壊れちゃうッ!」という欠点がありました 大量の贋札が見つかってしまうと、通貨の価値そのものが失墜し、 インフレーションが起き、世界的な大恐慌が起きる可能性がありました レジャットはこれを防ぐため、流通前に贋札の番号を公表すべく、 贋札の番号を知ろうと動き出します まぁ厳密にはルーク自身は本当に贋札を売りたいわけではなくて、 大量の贋札を売る準備を整えたうえで、 政府と「商談」しようとしていたのですが… しかしいずれにしても、ここで、 「絶対に贋札の番号を知られたくないルーク」VS 「絶対に贋札の番号を知りたいレジャット」という構図が成立したわけです ただ、最終的にはこの勝負にはレジャットが勝ちました レジャットは贋札の番号を遂に突き止め、 ルークは敗北しました(49話) だけどここからルークの大逆転が始まります 再起したルークは、番号だけを変えた大量の贋札(真・ハイパーノート)の生産に成功し、 これをもって政府との「商談」に挑みます そしてここからが55話 まず驚いたのは、ルークは既に、贋札を売却してしまっていたという点です 読者としては、ルークは贋札を売りたいわけではなく、 脅しの道具として商談しに来たものだと思っていたのに、 もう売ってしまっているという点で度肝を抜かれます それじゃあ交渉にならないじゃないか 次に驚いたのは、ルークが贋札を売却した結果、帝国経済が回復したという点です これまでさんざん、 「世界経済 壊れちゃうッ!」とか 「世界経済をォォ ぶっ壊ァァ~す!!」とか言ってたので、 贋札を売却すれば世の中メチャクチャになると思うじゃないですか でも、実際には景気が回復した もともと、「大量の贋札が見つかってしまうと、通貨の価値そのものが失墜し、 (悪性の)インフレーションが起きる」ことが懸念されていました でも、真・ハイパーノートは、もはや真札と見分けがつかず、 贋札だと見破られることすらなかったので、 単純に貨幣流通量が増えて、 その結果、景気が回復してしまったということですね 説明されればそのとおりなのですが、これも非常に驚いた点でした そして最後に何より驚いたのが、ルークの商談の内容が、 「要求を実現できなければ贋札の判別方法を公表する」というものだったこと!! これまでずーっと、 レジャットは贋札の番号を知ろうとしていました これは、その番号をあらかじめ公表することで、贋札の流通を防ぐためでした つまり、贋札の判別方法を公表することこそが、レジャットの目的でした 逆に、ルークにとっては、判別方法が公表されてしまっては、 贋札が使えなくなってしまうので、それだけは絶対に避けたいはずでした ところが、 ルークが真・ハイパーノートを既に流通させてしまっていて、 しかも、それが真札と見分けがつかないがため、 景気が回復してしまっているという状況下では、 贋札の判別方法の公表は、 かえって、経済に大混乱をもたらしてしまう いつの間にか、勝利条件そのものが書き換わっていて、 ルークが「贋札の判別方法を公表すること」を脅しとして使うことになるという、 この立場の逆転の見事さ、これこそが、55話の最大の驚き、興奮でした さらに素晴らしいのは、作者の展開の上手さです 実は、55話で語られた内容というのは、 もともと、正々堂々、作中で全て言及されていました 贋札がばらまかれることで世界経済が壊れちゃう仕組は13話で説明されていましたし、 大量の貨幣が流通することで景気が回復するということも36話で言及されてました なお、金本位制の話も、23話や36話で触れられてました つまり、「偽札だとわからないほど精巧な偽札が大量に流通すれば経済は回復するし、 その場合、偽札の判別方法を公表することが脅しとして機能するようになる」という論理展開については、 全て材料が与えられていたうえ、 ごく常識的な推論として、本来、予想可能だったのです でも、予測できなかった!(…予測していた人っているんですかね) これはおそらくハイパーインフレーションという漫画の構造自体に秘密があって、 この漫画は、頭脳バトルが多いんですが、 その頭脳バトルの内容をかなりわかりやすく説明してくれますし、、 結構頻繁に「勝利条件を整理しよう」みたいなモノローグが入るんですよね そうすると読者として、「ははぁよくわからんけどとにかく 今の勝利条件はそうなってんのか」で読み進めることができるわけです ところが、今回は、何の説明もなく、 気づいたら勝利条件が書き換わっていた!! そうすると何となく読み進めていた読者としては、 それはもう新鮮に驚くことになるわけで、 しかも前述のとおり、言われてみればごく常識的な論理展開でもあるわけで、 いやぁすっかりやられたなあという気持ちでいっぱいになるわけですよ! 上質なミステリのような見事などんでん返しで、本当に良い読書体験でした 終わるのは寂しいですが、残りの展開にも大いに期待です!!
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
程野力丸さんは、読み切りの「毒で探して三千里」も尖ったセンスを感じさせてくれていました。そして、ジャンプルーキーで金賞を獲ったものをリメイクしたこの連載版『宇宙の卵』も、その独特のエッジを更に研ぎ澄まして送り出してきています。 最初の1ページから、主人公・ルイの祖父による ”世の中はな… 「事象の連続」に過ぎん” ”…遠い未来からこの世を見るとな… ”戦争”も”飢饉”も”虐殺”もただの"事象” 出来事でしかないんじゃよ” と、非常に俯瞰的かつ示唆的なセリフから始まり、ちょっと普通ではない雰囲気が溢れ出します。それは、個人的にかなり好みな雰囲気でもあります。 そして、1話目にして世界は劇的な変化を迎えてしまいます。世界人口の2割が死滅した後、「人を数秒見つめるだけで殺す能力」を世界中のあらゆる人間が持つようになってしまうのです。当然、秩序は崩壊し世界中が滅茶苦茶になるわけですが、そんな世界でルイが自責を感じながら祖父の教えを胸に、学習をして世界の事象を変えていこうとする物語です。 かなり破天荒な設定でその気になれば重箱の隅をつつくような指摘はいくらでもできそうですが、さまざまな状況に対する仮定を立てて楽しむことができる、想像力の凝らされた設定は魅力です。また、一見すると荒唐無稽な殺人が能力の行使によって行われますが、そのメカニズムを検証しながら突き詰めて真相に迫っていくところも面白いです。宇宙の卵とは一体何なのか? それによってもたらされる事象にはどのような法則があるのか? といったさまざまな謎に対して、段々核心へと迫っていくところは引きが強いです。 圧倒的な貧困に喘ぎ、差別され、迫害され、教育すらまともに受けられなかった持たざる者であるルイが、学ぶことを始めて少しずつ考える力を伸ばし成長していく姿も王道的な気持ちよさがあります。参考文献からも、実際の世界にある様態を問題意識を持ちながらリアルに描いていることが伝わってきます。ただ、強いテーマ性を込められながらもしっかりとマンガとしてのエンターテインメント性もあり、そのバランスが秀逸です。 上下巻で綺麗にまとめられているのも素晴らしいです。とりあえず上巻だけ、と買ったら続きが気になって仕方ないと思いますので、2冊同時に買ってしまうことをお薦めします。 程野力丸さんには今後も独自の路線を驀進して欲しいです。
ゆゆゆ
ゆゆゆ
1年以上前
2巻まで無料で読めるとのことで、ものすごく久々に読み直した。 当時付き合っていた人が、この漫画を読むと、ものすごく優しい気持ちになれるんだと言っていた。 相手の発言と、漫画のタイトルと作者と表紙と。 内容を予測できないまま読んで、想定していなかった内容に衝撃を受けたのを覚えている。 不器用な男女の恋愛マンガであるけど、戦争マンガ。 そして兵器。 改めて読み直してみても、モノローグが時々過去形になるのがとても苦しい。 すべてはもう終わったことなんだと思えて、その先を知りたいような知りたくないような、複雑な気持ちに支配される。 ほんのわずかなモノローグなのに。 恋愛以外の要素が大きすぎて、「最終兵器彼女」は読んでいてつらい。 優しい気持ちになるどころか、つらさに飲み込まれて抜け出せない。 あの頃は思わなかったけど、ときどき作中で描かれる戦時下の通常にも、しんどさを感じる。 戦争でメディアが絶たれ、一般庶民には何が起きているのかわからない情況であっても、日常生活は続けていかなければいけないところが、やけにリアル。 無料分の2巻分だけでも、怒涛の展開と二人に幸せになってほしさで、つらさがあふれるので、ぜひ体感してみてほしい。