あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前
再び宗教2世の声を集めた書が出る事を祈って、1巻応援とします。 宗教2世という言い方は最近知りましたが、思えば昔から、そういう子は身近な存在でした。クラスメイトの穏やかな男の子は運動会に出なかった。優しいお姉さんが亡くなった家は一家で信仰を始め、その家のお兄さんは家族と色々あったらしい。毎週のように我が家の前を通る、複数の親子集団……。 そういう方の心の内は、子供ながらに聞いてはいけないもの、と思っていたのですが、この本によってその一端が知れます。彼らが持つ、私と変わらないような愛情や嗜好を知ると、宗教2世の方達が抱える葛藤は、私にも切実に伝わって来るのです。 親への愛着、教義への疑問、自由への憧れ、そして何より辛いのが「信仰を捨てたら親の愛を失う」こと。引き裂かれる思いに同調してしまう……。 そしてそこに、幼い頃から教えられた「教義」が、重みを持って様々に絡みます。 複雑に揺れる心の内を伺えたことで、宗教2世の方達が「よくわからない」存在ではなくなり、さらに慮ることが出来るようになります。この話を始めるに当たって、ただ机上の空論を振りかざして感情的になるのではなく、実在する人に「寄り添う」ための、基本の書になるのではないでしょうか。
まみこ
まみこ
1年以上前
映画『この世界の片隅に』いや、どうにもこうにも大傑作ですよ。 私も映画館で3回観ましたしね。 ただ、あれが大ヒットしてしまうのも、ちょっと居心地悪いんですよ。 欠食児童も、傷痍軍人も、片端の乞食も、被差別部落民も、強制連行された朝鮮人労働者も居ない、そんな戦中の呉なんてウソだし、ぬるいまやかしだろ?って思うんです。 ここら辺、他の人と、広島との地理的/心理的距離感の差があるのは認めます。 私は近過ぎるんです。 で、戦時中の広島を描いた作品って、他にないのかな?って思って調べても、全然無いんです。 しょうがないですね、どうしたって(所謂)「ヒロシマ」と言う性(さが)を帯びてしまうので、よっぽどの覚悟がないとダメなのです。 やっと本題なのですが、「五色の舟」は、太平洋戦争末期の広島を舞台にしたお話です。 ジャンルは、人によって捉え方は色々でしょうけど、私は(所謂)「怪談」だと思ってます。 怪談と言うのは、妖怪や幽霊を反射として、人間の業や愚かさを、面白おかしく/残酷に/切なく/美しく描くものなのです。 はい、読者は(所謂)「神の視点」を持っているので、昭和20年の夏、広島に住む、”特別な家族”が、どういう結末を迎えるかは、読んでいるうちに薄々気付くわけですけどね。 そう、この作品は、妖怪「件」を通して、近年の最大の愚行である、太平洋戦争の愚かさを、私たちに教えてくれ、その上で、私たちは、最後の結末の、その美しさと切なさに呆然とするのです。 だからこそ、色々な台詞が、重く刺さるのです。 「立派な建物だろう 産業奨励館ていうんだよ」 「あのきれいな灯り… また見たいわね 早く戦争が終わったら……」 「みんなが 僕を見て 足を止めるのは 僕が 特別な子供だからだ」 「特別な子供が 特別なお父さんのために 走っているからだ!」 「みんなも! ほかのみんなも幸せに!」 幸せを願って実現した世界では、”特別な家族”は緩く解けていくのですが、その因果の是非は、皆さん読んで確かめて下さい。 この、切なく、残酷で、柔らかく、優しくて、美しいラストを読めただけでも、私は幸せです。 (原作者、津原泰水が2022年10月2日に亡くなったことを受けて、2017年に書いた文章を思い出して書き直しました)