会社と私生活-オンとオフ-

会社員の真の姿×2 #1巻応援

会社と私生活-オンとオフ- 金沢真之介
兎来栄寿
兎来栄寿

『クノイチノイチ!』の金沢真之介さんによる新作です。 オンの時には同じ会社で働く社会人でありながら、 オフだとコテコテのロリィタ男子になる甘田奏太郎(あまたそうたろう)と オフだとゴリゴリのパンク女子になる阪久明(はんくあきら)。 そのふたりがお互いに秘密にしているオフの姿で出逢い、互いの正体には気付かず知り合っていく物語です。 「変身」と「ギャップ」は古来から少女マンガの花であり、時代を問わず人類の大好物であるもの。みんな大好きでしょう、こんなの。見た目は激強なふたりが、お互いに遠慮がちに距離を縮めていく初々しさがたまりません。そんな中で、誰にも言えない自分の本当の在り方を優しく肯定してもらえる瞬間など、心の中の赤ちゃんが「てーてー!」と泣き叫びます。 普段は物腰柔らかで優しいイケメンの奏太郎がロリィタ武装時して美少女になったときのかわいさや、普段は地味な経理のメガネ女子で無愛想な明がバッチバチにキメたときのカッコよさ。それらが、金沢真之介さんの絵力で強く押し出されてきます。 読切の「いっぱい出して♥淫魔のピンチ」なども含めてこれまでは結構エロの方に振ることも多かった金沢さんですが、エロなしでもシンプルにキャラのかわいさだけで十分蔵が立ちそうです。 奏太郎と明、ふたりの関係性の展開やそれぞれの奥底にあるものが気になります。

オタクも恋も連鎖する

生けとし生きる推しを推す者に幸あれ #1巻応援

オタクも恋も連鎖する あまいろちゆ
兎来栄寿
兎来栄寿

オタクは、好きですよね。推しの過剰供給を突然に受け幸福と歓喜に満ち満ちて、慄き震え、悶えのたうちまわり、涙を流し、語彙力を失い、奇行に走り、人の形も失い、生と死の境を彷徨い、やがて天へと還るオタクの姿を見るのが。 そんな尊死し続けるオタクたちの姿を摂取できる、読んでいてとても楽しく幸せな作品がこちら、『死がふたりを分かつとも』の天色ちゆさんの新作です。 学校一のイケメンである河合くんと、美少女である栫さんのカップリングを至上の推しとし、日々供給される栄養素によって幸せになり続ける音成くんが主人公の物語。面白いのは、音成くん自身もまた超絶美形であり、同担のクラスメイトである遠巻さんから実はリア恋の対象になっていること。そう、タイトル通り関係性が連鎖しているのです。 イケメンなのに名前が「河合(かわいい)」、美少女なのに「栫(かっこいい)」なのにも理由があり、ふたりの見せる様々なギャップは音成くんや遠巻さんでなくとも拝みたくなります。天色ちゆさんの絵力によるところも大きいですが、メインキャラのヴィジュがとにかくいいのがいい。 ″立てばムービー 座ればスチル 歩く姿は劇場版″ ″テトリスじゃねぇんだよカップリングは…!!″ ″母校が聖地″ などなど、パワフルな言の霊が溢れているのも良きです。 「天下泰平」と書いて「推しカプの平和」 と読む。ンっン〜、名ルビだなこれは。 昭和の少女マンガのようになってるモブたちや、宗教画になるシーン、BL好きで弟の創作を褒めてくれる3つ上の姉、察しの良い友人・旗谷くん、各回のノリノリの煽り文、音成くんより遠巻さんの方が身長が5cm高いところ、かわいいヒロイン顔して盗撮してる遠巻さんなども好きです。 そして、1巻最後の引き。今後もますます楽しみです。

僕の部屋のユウ子さん

この幽霊がかわいい2023 #1巻応援

僕の部屋のユウ子さん 武川展子
兎来栄寿
兎来栄寿

幽霊との恋愛を描いた作品は切ない名作が多いと相場が決まっています。おキヌちゃんから幽奈さんまで、幽霊ヒロインというのも時代時代に現れては人気を博してきている歴史があります。 今年の幽霊ヒロインで1位をぶっちぎりそうなのが、この『僕の部屋のユウ子さん』のユウ子さんです。 幽霊を怖いと思ったことがない青年・カンナが、ユウ子の起こす心霊現象を恐れることなく自然体で同居して行くコメディとなっています。 どうやらJKの幽霊らしいユウ子さんは、段々とカンナへの想いを露わにしていき、同時にカンナもユウ子のことを意識しだしてラブがコメっていきます。 やきもち焼きであるユウ子の嫉妬心が剥き出しになるシーンから、甲斐甲斐しく助けてくれる場面まで、少しずつ進んでいく関係性に拍手喝采です。 作者である武川展子さんのアナログ作画も良い味を出しています。大友克洋さんの系譜を感じさせる80〜90年代の懐かしさもありながら、全体を通して読みやすいです。 そして、とにかくユウ子さんが絶対的にかわいいです。本作の魅力の究極はそこに尽きるでしょう。 かわいい幽霊ヒロインをお探しの方や、少し変わったラブコメを読みたい方にお薦めです。