伊賀の影丸
子供の頃に読みたかった!!
伊賀の影丸 横山光輝
酒チャビン
酒チャビン
忍者!おん密!!特殊技能!江戸時代!!城!将軍家!!半蔵!!旧国名!!忍び文字(暗号)!わたしの子供の頃の好きな要素がいっぱいすぎて、多分小学生の頃に読んでいたら、わくわく夢中でどハマりしていたと思います。 しかもさすが横山先生だけあって無駄のないシンプルな作風で読みやすさも抜群。全15巻の超大作ですが、不思議と読み疲れなどはありません。 三重マンガランキング2位もうなずけます。 当時はかなり画期的な作品だったようなのですが、この作品が凄すぎてフォロワーが多く生まれ、多くの作品からベンチマークの扱いを受けたことによって、今見ると少し普通というか、王道すぎてもう一捻り欲しい気がしてしまいます。なので、名作であることは重々承知しつつも、今の子供たちにあえてこれを薦めるかというと、少し微妙な気もします。 あと、私の大好きな男塾に通じる要素も結構出てきて、それも見応えがありました。宮下先生に影響を与えてるのかもしれません。男塾は関係ないですが、途中、影丸の一人称が「影丸」になったのも面白かったです。 ちなみに個人的な一番のお気に入りシーンは、敵を攻撃する用に手懐けているふくろうが、敵が繰り出したネズミを捕まえるのに夢中になってしまって敵を攻撃しなくなる場面です。ふくろうの顔も可愛く描かれており、忍者という暗い宿命を負った者が主人公の作品世界で、ほんわりとした気分にさせてくれます。 あとはおまけコンテンツとして「ムササビ」という作品が収録されてます(影丸の話ではないです)。これは、天正伊賀の乱で信長に滅亡に追い込まれた忍者の生き残りが、本能寺の変の裏側で糸を引いていたという魅惑の歴史ifストーリーで、こちらも戦国時代ファンには見逃せない出来でした。
バビル2世
チャンピオン初期を支えた孤高の超能力少年
バビル2世 横山光輝
兎来栄寿
兎来栄寿
横山光輝さんの数多の作品の中でも、『鉄人28号』、「魔法使いサリー』、『三国志』などと並び代表作として有名なのが『バビル2世』です。 週刊少年チャンピオンが創刊されたのは1968年。『バビル2世』は1971〜1973年まで連載され、チャンピオンの初期を支えました。そして、数年後にチャンピオンは200万部を突破し黄金期を迎えます。 遥か昔、地球に不時着したバビルの子孫である浩一がその力を受け継ぎ、世界征服を目論む超能力者・ヨミの目論見を防ぐべく闘いを繰り広げる物語です。 ユリゲラーが初来日して超能力の大ブームが巻き起こったのが1974年ですが、その3年前から超能力ブームの礎を築き上げたのがこの作品。テレパシーやサイコキネシスという単語を本作で覚えた少年は非常に多いでしょう。同時期に萩尾望都さんらによる少女マンガSFの台頭があり、『精霊狩り』などエスパーを題材にした作品が出されたことも、ブームを後押ししていました。 『超人ロック』然り、物語において超能力者やエスパーというのは異端で孤独な存在とされることが多いです。多分に漏れず浩一も世間には知られないまま孤独な闘いを続ける少年として、暗い時代のマインドを反映しているかのように描かれました。71年の『仮面ライダー』や72年の『デビルマン』など、純粋な熱血タイプではない陰を背負った主人公の物語が多く出始めた時代とぴったり重なります。 なお、『ジョジョの奇妙な冒険』第三部主人公の空条承太郎も、『バビル2世』の砂漠+学ランというヴィジュアルイメージに大きく影響を受けていると荒木飛呂彦さんが語っていました。私自身はその記述を見てから興味を持ち、読みました。バトルに単純な力比べだけではなく頭脳戦的な要素が盛り込まれていたのも、人気を博した要因であり後の作品への影響を感じられるところです。ジョジョ好きには一つのルーツとしてぜひ読んでみて欲しい作品です。 余談ですが、アニメ版で主人公の浩一を演じたのは当時はまだ新人だった神谷明さん。オーディションでは既に売れっ子だった野沢雅子さんと最後まで争ったという逸話があります。
魔法使いサリー
元祖・夢と空想の魔法少女マンガ
魔法使いサリー 横山光輝
たか
たか
たまたま漫画喫茶に完全版があったので読みました! 絵のデフォルメがかわいくて、キャラクターはコミカル。 サリーちゃんが人間界の風習を学んだり、パパを懐柔したり、カブをとっちめたり、ママに甘えたり…そういう一挙一動がただただ楽しい。 サリーちゃんのパパも魔術師ジョーも、キスで娘への愛情表現をするところが欧米風でとても素敵。なおパパは魔界の帝王なのにママには頭が上がらないという設定で、好きでもない人間界でお餅つきまでしちゃう、優しい…! 自分がサリーを読んで気になったのが、家族の描写です。 サリーとカブは人間で二人暮らし。よしこは両親共働きで、トンチンカンの面倒を見て家事をしている。同級生の小野さんは、お兄さんとお母さんの3人ぐらし。チェリーはアル中のパパに愛想を尽かして、お母さんが出ていってしまった。 16話の中に、多種多様で愛情深い家族が描写されていたところが印象に残りました。 横山先生自身は、「少女漫画はほとんどメロドラマばかりで、少年漫画のような『夢と空想』の漫画が少ない」ということでサリーを描いたと折返しに書いてありました。 やはり物語の土台として「家族」の描写がリアルだったからこそ、『夢と空想』がいっそう魅力的なものになったのではないかと思います。 現代まで続く少女向け漫画のエッセンスを感じることができる名作です!