蜘蛛ですが、なにか?

ガンバレ蜘蛛ちゃん!

蜘蛛ですが、なにか? かかし朝浩 輝竜司 馬場翁
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

女子高生が、気づいたらダンジョン内の最弱モンスターである蜘蛛に転生していて弱肉強食の世界で何度も死にかけながら強くなってサバイブしていく話。 生まれた時から家族が共食いしてるハードモードでスタート。 一難去ってまた一難すぎる。 異世界転生ジャンルはすべての障害を難なく順調にクリアしてストレス無く読めるものが多いが、この作品は一安心したらやばい死ぬ・・!の繰り返しなので、それがいい。 ある能力特化型のスーパー雑魚キャラが、工夫で毎回キワキワで生き延びるの見てるの楽しくない? 糸と毒(あと素早さ)だけで、絶体絶命切り抜けるのいいよね! ていうか、ちゃんと絶体絶命になるのいいよね!と思うのはこのジャンルがみんなチートすぎてそうならないからだろう。 そういう展開は少年漫画にあてはめればわりとベタなのだけれども。 そして着実に実力をつけていく蜘蛛ちゃん。 そういえばジョジョのストーンオーシャン編も主人公徐倫の能力が糸で、まじかよって絶望した記憶ある。 一見弱そうな能力ほど応用が効いて使い勝手があったりする。 5部ブチャラティのスティッキーフィンガーズというジッパーの能力然り。 ゲーム的世界観なので、ピロンッとレベルも上がるしスキルもあって、強くなれば技や能力を獲得するので、目に見えて強力になっていくのが楽しい。 同時に周囲のレベルが高いところにどんどん突き進んでしまうので依然常に危機には変わりない。 常に危機には変わりないが、獲得していくスキルの中に妙なものが混じっていて何か不穏なことが裏でゆっくり進行しているのがとてもナイス。 生きていくうえでの食事が描かれているのもよくて、これがあるのと無いのとじゃキャラクターの説得力が全く変わってくるし、目の前に死ぬほどの危機がゴロゴロ転がっているのに「地上に出て美味しいご飯が食べたい」っていう欲求があって頑張れてるのが女子高生的でかわいい。 ついつい応援してしまう。 ガンバレ蜘蛛ちゃん!!

理想のヒモ生活

僕はヒモになりたい

理想のヒモ生活 渡辺恒彦 日月ネコ 文倉十
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

準備万端で行く異世界は快適だった。 ブラック企業で働く主人公が異世界へ転移させられるというところまではベタな流れで、そこから元の世界に戻るかこの世界で暮らしていくか考える時間を元の世界で考えてしっかり準備できる期間を設けられるという。 異世界で暮らすなら美人な女王と結婚でヒモ生活待ったなしなので即決。 元の世界に戻り、発電機やら電化製品やら生活費需品を詰め込んで異世界へ。 そこからめちゃくちゃ快適な異世界生活が始まった、と思いきや、王族としての生活は意外とやることがあって政治的にも重要なポジションにいたため、ただのだらだらヒモ生活とはいかない。 現代の快適さと、王侯貴族による権謀術数の渦巻く政治、そして普通の現代人かと思ったら特殊な力(チート)まであった主人公の話が思ったより良くて読み進めてしまった。 奥さんである女王様もバリバリにセクシーで賢くていい。 やはり主人公が社会人として働いていたことがみそで、これが高校生では上手くいかないだろう。 こういう生活が送れるのであれば異世界へ行くのも悪くないな、というか最高。 大量の漫画と映画を持ち込んで浸りたい。

異世界迷宮でハーレムを

設定を掘り出していく過程が楽しい

異世界迷宮でハーレムを 氷樹一世 蘇我捨恥 四季童子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

異世界転生とかそういうジャンルをあんまり読んでこなかったので、意を決して売れてそうなあたりからいくつか読んでみて、その中で良かったなと思ったのがこの作品。 同ジャンルでわりと雑な漫画描写が多いなか、すごく丁寧に描かれているのでそれだけで評価が高い。 原作はどうか知らないが読んだのが3巻までなのでまだハーレム展開になっていないのと、主人公がバカみたいに強すぎてイケイケで無双するパターンはあまり好みではないので、そうではないのがいい。 ゲーム的世界観に転移し、主人公だけがゲーム画面のコマンドのようなものが見えて、各パラメータにステータス振りをいくらでもし直せるということで試行錯誤していじくってダンジョンに挑んでいくのが面白い。 持てる能力で何ができるか、のような設定を細かく試行錯誤していくのが好きなので僕は楽しかった。 丁寧に描いているのでテンポ感はいまいち良くなくて、どういう話になっていくのかはピンとこない部分はある。 ストーリーが進んでいく気持ちよさが好きな人には向いていないと思う。 あと、絵のクオリティが素晴らしくて、ヒロインの女の子がめちゃくちゃかわいい。 エロい展開にもなるが、女の子があほみたいに主人公にメロメロでべたべたしてくるわけではないので、他人を受け入れるという行程を経て行う情事で互いの緊張感が伝わってきてとてもよかった。 ゲームの世界観に来てしまったということで非現実的なことや倫理的にどうなの、ということも、その世界での常識なら受け入れるという柔軟な姿勢は、郷に入っては郷に従えスタイルで致し方ないのかなと思う。 許可された殺人や奴隷制がそうなのだけど、積極的に受け入れ楽しんでいる。 そういう状況になった場合、自分はどうなんだろう、と悩んでしまう。 現実でのスタイルを貫くか、移動先の風習に従うか。 そこの葛藤を描かないための手段として上手く言い訳が効いているなと思ったのが、転移後すぐに盗賊出現、VRのゲームかと思って退治(殺害)、のちにゲームではないと知る。 要は殺人を犯したと知るのは事後なのだ。 殺人は最初のハードルこそおそろしく高いが、一度やってしまったのだから、一人殺すのも十人殺すのも大差はない、という描き方、もしくは、ゲームっぽいのでどこか現実として捉え切れていない部分があるのか。 そうなると、勝手な話だが一度瀕死のダメージを負って命の危険を目の当たりにしてほしくなってしまう。 遊びじゃないんだと。 ただ、読んでる感じ、ゲームのごとく順を追ってぬるぬる強くなっているのでそんなことにはならなそうだ。 ハーレムになっていく過程でまだ読みたいと思えるかどうかはきっとコミカライズ担当の漫画家の手腕なんだろうなと思うとそこが楽しみ。

マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合

なんやかや長々書いたがぶっちゃけ表紙の女の子が可愛いから買った

マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合 佐伯淳一 地雷原 UGUME
mampuku
mampuku

 近所のツタヤで推されてたので手に取ってみた。ゲーム中に異世界へ飛ばされる話。流行りか。FPSの装備(銃とか)でファンタジー異世界に紛れ込んでしまい、魔力がないので他の冒険者たちにバカにされるが銃があるので結局無双できてしまう。女の子にちやほやもされる。  この手の作品に対して設定のオリジナリティのなさを残念がることは、現実の馬が空を飛べないことを嘆くぐらい意味のないことで、見るべき見どころは他にある。  作画の人が意外とベテランで、奥行きを感じる多彩な構図、昔のガンガンみたいなクールな空気感、キャラクターの息遣いが感じられるような仕草や日常芝居が素晴らしい。話の方も、モンハンよろしく斃した敵をナイフでさばいて魔石や毛皮などを文字通り剥ぎ取って見せる美少女ヒロインに主人公が面食らったりなどコミカルな描写で世界観を教えてくれるので、淡々とゲームのチュートリアルみたいな説明されるよりよほど楽しく読めた。  続きが気になって仕方がないというタイプの漫画ではないが、気持ちよく入り浸れるのでそういう意味で続きが読みたくなる。