外科医の佐久間は、胃を悪くした建築士の順也が気になっていた。警戒を露わにする彼が、まるでハリネズミのようで可哀想だったのだ。恋人に裏切られたと自嘲する順也のいじらしい素顔を知り、ますますの庇護欲が湧き上がってきた。そんな時、ついに順也が倒れてしまい、その痛々しい姿に佐久間は堪らなくなる。自分の腕の中で、仔猫のように撫でて甘やかして、大事にしたくて……。
その全寮制の執事養成学校では、薬物が蔓延し人身売買が行われているという。新人警察官の悠の任務は、潜入している捜査員に渡す解毒薬を学校へ持ち込むという、簡単なものだった。しかし悠は学校から脱出できず、執事候補生として薬を打たれてしまう。候補生達に屈辱的な仕打ちをしては愉しむ主人達。反発した悠は学長に躾けと称して嬲られ、恍惚の中で専属を誓わされて……。
夏休み直前、要の住む小さな町にやって来た優吾。無愛想な彼が胸中に抱える行き場のない悲しみや憤りに、誰にも言えない初恋を抱く要は共感を覚える。優吾の傍は居心地が良かった。けれど彼は、要が長いこと片想いする隣家の「兄ちゃん」の再婚相手の連れ子だった。要の想いを知った優吾に詰られ、嬲るように押し倒される。抵抗する要だったが、やがて自暴自棄になり……。
吸血鬼の王に捧げられる花嫁となるはずだった、ヴァンピールのシグルド。しかし宿命に抗い、男として生まれ祓魔師となった。教会の犬として死地に送られ諦観の中で戦っていたある日、ついに吸血鬼の王であるグラーフと出会う。甘美なくちづけで“力”を分け与えられ助けられるも、屈辱だった。シグルドはグラーフを滅しようと追う。そのためだけに生き続けて──!
花人の花凛は、愛されるとその身に花を咲かせる。皇子・慧英の寵姫となるが、彼は父皇帝によって双子の弟とそれぞれの花人に花を咲かせることを競わされ、勝った方は王位を、負けた方は死を賜ることになっていた。苦悩する慧英に花凛は一途に寄り添う。だが、ふたりが想いを通わせ花凛が蕾を付けた頃、残酷な事実を知らされる。花を咲かせた花人は、やがて枯れ消えるのだと──!
全寮制男子校に転入した青葉は、思わぬハプニングで絶大な人気を誇る生徒会長・尊に抱き上げられ、嫉みを一身に受けることに。降りかかる嫌がらせを強気で撃退していく青葉だったが、ある日、先輩に部屋へ連れ込まれ、襲われかける。怯えた青葉は、咄嗟に生徒会役員たちが住む特別寮に逃げ込んだ。ところがそこで尊の秘密の素顔を知ってしまい、口止めのため準役員に指名されて!?
憑いた怪異を引き剥がす呼児の周と、それを封じる戻児の西門。かつて周は双子の妹が、西門は恋人が対だった。それぞれの対を亡くし、仮の対となったふたり。周は西門へ恋心を抱き、隣にいるために一生懸命だった。けれど彼は、亡き恋人を忘れられないという。そんな時に赴いた遠縁の結婚式で遭った怪異。解決へと奔走する中で西門は過去と、そして己の気持ちと向き合い──。
幌置が働くフードコンサルティング会社に、三股で刃傷沙汰になったという祥崎が雇われる。彼は人と一緒でないと食事ができないらしい。最初は反感を持っていたものの、かつてパティシエを志望していた幌置は、自分が作った料理を幸せそうな表情で食べる祥崎にほだされかける。けれど──「先輩の、おいしいです」お礼にセックスすると言って強引な愛撫を仕掛けられて……。
復讐に燃える化け狐の秋野は、怪我で蹲っていた所を建設会社の若社長・北斗に拾われた。仇とライバルだという彼を利用し復讐を遂げようとするが、北斗のおおらか過ぎる言動に振り回される。どんなに高飛車な態度で我儘をしても、「最高に可愛い」と撫で回してきて、動揺のあまり耳と尻尾が出てしまう始末。その上、世話をさせてやっている北斗の温もりが心地良くなってきて……。
便利屋『兄弟屋』の裏メニュー・別れさせ屋。尚は、双子の弟に代わってその依頼を受けることに。ところが、ターゲットは男!経験乏しく、隠居モードで過ごす尚には荷が重い。だが依頼者の新堂のために、依頼を達成しようと決意する。最初こそは強面で強引な新堂に怯えていたが、彼は自分に自信のない尚を認めてくれたのだから。手管を学び、男に抱かれる“練習”をして──!?
トップモデルの美山は、母に顧みられず育ったため自身の美貌を商品としか思えない。世間の評価とは裏腹に空っぽな自分──過去の恋人の裏切りで、その思いは一際強くなった。愛されることを諦めた方が楽で、毒舌は鎧なのだ。けれど、新鋭デザイナーの久保田は、そんな美山をおおらかに受け止めてくれる。いつしか彼の優しさが染み入って、心の奥底で眠る感情を目覚めさせ……。
祖父が遺した邸を訪れた教師の智孝。クローゼットを開けると、そこには可愛い少年・卯太が蹲っていた。彼は座敷童子だと言う。さらに突如現れた美貌の男・桂は、桂男だと言う。なにやら邸とそこに住む者には特殊な役割があり、智孝に継いでほしいらしい。けれど──「俺の花婿さんになって」「私の花嫁にしてやる」と、智孝との婚礼を望むふたりが、あの手この手で迫ってきて!?