若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春

ゲーム好き30代にはビシビシ刺さる

若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春 田中圭一
六文銭
六文銭

マンガにしろゲームにしろ当たり前だけど人が創っているんですよね。 それを感じさせてくれる1冊でした。 しかも、FF7、ポケモン赤緑、バーチャファイター、プレステ、逆転裁判など自分の時代にドンズバだった作品の裏話が目白押しで、読んでいて純粋にわくわくしました。 こうして、あのヒット作はつくられていたんだという背景、特に当たり前ですが一筋縄でいかないことに対して、粘り強く(時に何年、何十年もかけて)解決していったのかは並々ならぬ情熱を感じて、勇気づけられます。 どうも外(消費者の観点)からみていると、突然出てきて、すんなりヒットしているように見えてしまいますが、そんなことは全然ないんですよね。 色んな障壁がありながらも、どうしてもやりたいこと・叶えたいことがあるから、アイデアをだし少しでも前進させる執念が、今日のヒットにつながったのだと痛感しました。 また、多くのクリエイターの方がその過程で「挫折」を経験していることも意外でした。 メンバーが集まらない、能力不足でディレクターをおろされる、メーカーに拒否られる、企画を全駄目出しされる、就職に失敗したからゲームメーカーに・・・などなど。 こうした挫折を経験しながらも、腐らず、むしろそれを糧にしている姿は勇気づけられました。 良いも悪いも、全部が人生なんです。全部つながってます。 ヒット作の裏側を知るのもそうですが、そうしたものを生み出せた人間のマインド的なものも垣間見える良い作品でした。

16bitセンセーション

美少女ゲーム、三つの視点 #1巻応援

16bitセンセーション アクアプラス 若木民喜 みつみ美里 甘露樹
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

ゲームメーカーでグラフィッカーとなる女性の視点から、1990年代以降の所謂「美少女ゲーム」の隆興を追うこの作品……と聞くと、「美少女ゲーム詳しくないしな……」と後ずさりする方もいるかもしれません。でも大丈夫!私も詳しくないけど、凄く楽しめました。 視点としては三つ。 ①1990年代の時代背景と美少女ゲーム大流行のリンク ②実在の会社名が出たり出せなかったりの可笑しさ ③美少女絵の進化と描き続ける心得 ■□□□ ①パソコンの普及と共に成長する「エロゲー」から始まるこのジャンル。地下鉄サリン等暗い事件、エロの規制を経て「エロゲー」はエロを抜いた「美少女ゲーム」へ変貌。そこで求められた物は、二人の女性グラフィッカーを駆り立てる。 基本OSのヒットにより、拡大する市場で膨らむ物語に、目が離せない! □■□□ ②この作品、実在のゲームタイトルやメーカー、その他名前がバンバン出てきます。しかしそれらを知らなくても面白いのが「名前を出せない」者の存在。伏字すらNGの某基本OSは苦笑いしかないのですが、場合によっては空白の横に「権利者不明により削除」と書いてあったり……背景の複雑さが垣間見えて楽しい。 □□■□ ③ 美少女ゲームに求められた美少女絵とは何だったのか……それは現在の漫画・イラストレーションにも波及する大きな潮流となります。 そしてこの作品、インタビューまで面白い!アリスソフトで初期から製作に携わってこられたイラストレーターのMIN-NARAKENさんのお話は、美少女絵に命を吹き込むこと、それを20年、30年続けていく為の心得を教えてくれます。 イラストレーターだけでなく漫画家も必見! □□□■ 歴史の波長が噛み合って、大きなうねりが生まれる。そのうねりの本質を知り、世界の末端からメインストリームへ飛び込んで行く物語は、ドキドキしますよね?そんな面白さが、今後紡がれそうな予感。今はまだ、貧乏臭いけど……期待!

うつヌケ

ムーピーのような

うつヌケ 田中圭一
影絵が趣味
影絵が趣味

手塚治虫キャラを使ったパロディギャグ漫画で世に出た田中圭一が手塚治虫文化賞を受賞してしまったという皮肉はひとまず置いておいて、それどころか、この『うつヌケ』という漫画の主題である鬱という病気のこともひとまず置いておきたいと思います。 というのは、この漫画が単なる鬱病のひとの処方箋となるべく手に取ってもらいたい本という以上に、もっと普遍的に感動的なストーリー漫画であるからだと思うからです。ストーリー漫画というのは、手塚治虫いらい数々の漫画家によって描かれ、無数の大人子供を熱中させてきた、あのストーリー漫画に他なりません。 この漫画は単なる病気への処置を促す書物という以上に、もっと肯定的で出鱈目なパワーに満ち溢れた感動的なストーリー漫画であると思うのです。田中圭一のストーリー漫画としての資質は前作の漫画家2世をインタビューする『ペンと箸』のときからすでにあらわれていたと思います、あの連載に涙したひとは少なくないのではないでしょうか。そして今作、あの忌々しい鬱という病気が、手塚治虫の『火の鳥』にでてくるムーピーを彷彿とさせるキャラとして描かれている。しかも、それぞれの短編の主人公が鬱を抜けるとき、あの丸っこいキャラとして描かれた鬱なるものを抱いたり突いたりして愛ででやるのです。そのときどきに、鬱でもないじぶんもつい目頭が熱くなってしまうのです。