ザシス

ザシスの意味とは

ザシス 森田まさのり
六文銭
六文銭

「ろくでなしBLUES」から「べしゃり暮らし」まで、一通り読んでいる作家さんだけに本作も当然手に取りました。 1話読んで、サスペンスであること、その世界観にひきこまれ これは完結してからイッキに読もう と思い、完結を楽しみにしてましたが(変な話ではありますが)まさか3巻でおわってしまうとは。 一気読みした最初の感想としては、ギャク色の強い作風の作家さんなのに、この手のストーリーもイケるのかと唸った。 誰が犯人なのかはもちろん、主要な登場人物の誰もが、実は後ろ暗い過去をもっているびっくり展開は、良い意味で緊張感があって、最後どう転ぶのか気になり読んでてあっという間だった。 ミステリでありがちな、くどい説明とかもなく、絵だけで魅せてくるのも読みやすかったし、不気味なタイトルが結局何なのか気になりながら最後につながるのも良かった。 総じて、面白かったという月並の感想なんだけど、3巻でキレイにまとまっている作品だと思います。 この手の作品で、個人的に重要だと思っている、読者に結論を委ねる部分もしっかりあって、そういう意味でも読後感は良かったてす。 3巻完結なので、イッキに読んでザシスの意味を噛み締めて欲しい。

とりま民宿やどり的な!

ギャルがついに女将に

とりま民宿やどり的な! 安藤優
六文銭
六文銭

ギャル漫画を追い続けている私ですが、ついに女将になったと聞いてすっとんできました。 読んだ率直な感想、うーむ良いギャルという感じ。 主人公は1人暮らしのマンションが火事になり、友人の叔母が経営する民宿に泊まることになる。その女将が上述のギャル。 圧倒的なコミュ力の高さで主人公の懐に入ってきて・・・と、ここまではよくあるギャル漫画の展開なのですが、このギャル、実は元ギャルなだけで、妙齢(30代)の女性。 ここがポイント。 どちらかというと姉や母親に近い存在で、ギャル特有の謎の包容力で主人公を癒やしていきます。 もちろん恋愛っぽい流れもあるのですが、年の差もあってか簡単にはいかず、時に友人、時に良き相談相手(主人公は家庭環境や大学生活がうまくいってない)っぽい存在で、それがハートフルな展開。 ただのラブコメにはない家族愛的な側面がみえてきて、これが何とも良いギャルという感想につながりました。 また、ギャルもに過去に何かあったような含みがあり、今後明らかになるかと思うと、それも楽しみです。 職業的に、医者だったり(「ギャル医者 あやっぺ」)カフェ店員だったり(「喫茶店にギャルがいる」)、そして今回は女将と、あらゆるところに、進出してくるギャル。 留まることをしらないギャルの新たな地平を感じました。

空をまとって

女体の美の追究 #1巻応援

空をまとって 古味慎也
兎来栄寿
兎来栄寿

女体を最上に美しいものであると思う高校三年生の主人公が、理想のヌード画を描こうとする物語。 かつて桂正和さんの下でアシスタントをされていた古味慎也さんが描く内容として、これ以上ない強い納得感があります。かつて『I”s<アイズ>』や『電影少女』などで描かれた柔らかい女体の美しさや布地の質感に魅了された人は数多いと思いますが、そのDNAが確かに受け継がれていることは1話だけでも読めば言葉でなく心で伝わってきます。 もとよりデッサン力が高く女の子のかわいさに定評のあった古味慎也さんですが、「人生を変えるほどの魔的な裸婦画」という本作のコアの部分にその画力がふんだんに生かされていて説得力を生んでいます。こんなものに幼くして出逢ってしまったら、魅了されてしまったら、それはもう呪いでしかありません。しかし、その呪いが人生を駆動させる純粋で強力なエネルギーの源ともなっていきます。 「美しい、最高のヌードを描きたい」 というシンプルで強固な動機が根元にあることは、物語に自然に乗っていける要因となっています。 そんな彼を狂わせた「魔女」も非常に魅力的で、彼女との関係性も見所です。その他の脇役にもキャラが立っている人物が複数いて楽しめます。豪快に応援してくれるお母さん、とても好き。 1巻の範囲で出てくるエピソードだと、ある女の子の絵を完成させるシーンや「自分の手」をどちらが面白く描けるかという勝負が好きです。私自身も昔、学校で図画工作や美術の先生に習った気がしますが、小さなキャンバスに切り取られた部分の外に広がる無限性を感じられる絵画の面白さや素晴らしさが詰まっています。答えのない世界で見つけなければならない答え。果たして主人公は、そこへ辿り着くことができるのか。 ヌードのことを「空をまとう」と表現するタイトルもまた趣深くて好きです。最近の美術系作品の中でも、また違った切り口で存在感を放つ一作で、注目です。