情熱大陸への執拗な情熱

やはり大陸はでかかった、という話

情熱大陸への執拗な情熱 宮川サトシ 宮川さとし
nyae
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母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。を読んでからこれを読むと「元気そうでよかった」という、読む上でとくに必要のない感情が生まれてしまいました。 それはさておき、この漫画はひとりの(当時)マイナー漫画家が、情熱大陸に強く憧れ、いつか上陸(出演)するときのための準備にいそしむ様子を描いたドキュメンタリー漫画です。 準備というのも、ひとり胸に秘めてというレベルのものではなく、度々家族をゾッとさせるような行き過ぎたものもあり、それが非常に笑えます。彼は本当に「本気」なんだなというのは痛いほど伝わるんですが、大陸のデカさに気付くのに少し時間がかかってしまった。 そしてそんな彼をいたずらに振り回すような要素も多すぎた。 地元の同級生に上陸を先越されたり、上陸済の綾野剛とバイトで一緒だったことがあとから判明したり(遅ッ)、情熱大陸の公式Twitterに漫画に関してコメントされたり… しかし私自身もこんなふうに書いてますが、この漫画が連載されている時には「こんなこと描いてるけど、なんだかんだ話題になってるし、そのうち上陸するでしょ」なんて思っていました。要は私も大陸のデカさを全くわかってなかったんです。改めて読んで、やっぱでっかいなァ…と再認識したところです。

修羅の門

最強が決まるまでの興奮

修羅の門 川原正敏
名無し

最強の男は誰か? 最強の格闘技は何か? 格闘技をする者がなりたいと思い、 見る者が見たいと思う、 「世界最強」 だが、現役格闘家は別として、 果たして、マニアが見たいのは本当に 最強の男、格闘技が決まる瞬間だろうか。 成績とか結果とか結論を知る瞬間だろうか。 そうでは無いと思う。 その結論に至るまでの過程が重要なのだ。 それが決まるまでの経過を、ドラマを見たいのだ。 極端に言えば、最強の戦士・格闘技が決定して、 勝者の手がレフリーに掴み挙げられる瞬間より、 最強候補がリングにあがって対峙してゴングがなる瞬間、 試合が決着するまでにいたる攻防、 それらを見て興奮して味わいたいのだ。 「修羅の門」はそれが判っている。 だから、神武館のオープントーナメントや ボクシングの統一戦、ブラジルでのバーリトゥード、 それらの開催に至るまでの過程や、 各試合が始まるまでのストーリーも入念に描いているし、 その話がとても面白い。 そしてそれゆえに本番の試合がまた盛り上がる。 「最強」を決定するのに必要なのは 虚飾を排除したリアルな展開かもしれないが、 それをしすぎて単なるデータの抽出提示の過程に なってしまったのでは 「世界最強」という男のロマンが無味で色あせてしまう。 だから主人公の陸奥九十九は 無謀な連戦もしたりする。 互いに万全な体調で戦いましょう、 公正明大にどちらが強いか確認しましょう、 とか必ずしもそうではない。 だから神武館のトーナメント戦でも キックボクシング、シュートボクシング、プロレス、古武道、 それぞれの最強戦士とあえて戦う立場を自ら選ぶ。 そして大会主催者も相手の選手もそれを了承する。 その流れはリアリティに徹するならありえない流れだが、 格闘リアリティと格闘ロマンの両方を損なわず増幅させてくれた。 このシーンが描かれたとき、 「あ、この漫画、絶対に面白くなる」 と思った。