最終兵器彼女

不器用な男女の恋愛話+α

最終兵器彼女 高橋しん
ゆゆゆ
ゆゆゆ

2巻まで無料で読めるとのことで、ものすごく久々に読み直した。 当時付き合っていた人が、この漫画を読むと、ものすごく優しい気持ちになれるんだと言っていた。 相手の発言と、漫画のタイトルと作者と表紙と。 内容を予測できないまま読んで、想定していなかった内容に衝撃を受けたのを覚えている。 不器用な男女の恋愛マンガであるけど、戦争マンガ。 そして兵器。 改めて読み直してみても、モノローグが時々過去形になるのがとても苦しい。 すべてはもう終わったことなんだと思えて、その先を知りたいような知りたくないような、複雑な気持ちに支配される。 ほんのわずかなモノローグなのに。 恋愛以外の要素が大きすぎて、「最終兵器彼女」は読んでいてつらい。 優しい気持ちになるどころか、つらさに飲み込まれて抜け出せない。 あの頃は思わなかったけど、ときどき作中で描かれる戦時下の通常にも、しんどさを感じる。 戦争でメディアが絶たれ、一般庶民には何が起きているのかわからない情況であっても、日常生活は続けていかなければいけないところが、やけにリアル。 無料分の2巻分だけでも、怒涛の展開と二人に幸せになってほしさで、つらさがあふれるので、ぜひ体感してみてほしい。

宇宙の卵

すべての人がインスタント殺人能力を持った世界 #完結応援

宇宙の卵 程野力丸
兎来栄寿
兎来栄寿

程野力丸さんは、読み切りの「毒で探して三千里」も尖ったセンスを感じさせてくれていました。そして、ジャンプルーキーで金賞を獲ったものをリメイクしたこの連載版『宇宙の卵』も、その独特のエッジを更に研ぎ澄まして送り出してきています。 最初の1ページから、主人公・ルイの祖父による ”世の中はな… 「事象の連続」に過ぎん” ”…遠い未来からこの世を見るとな… ”戦争”も”飢饉”も”虐殺”もただの"事象” 出来事でしかないんじゃよ” と、非常に俯瞰的かつ示唆的なセリフから始まり、ちょっと普通ではない雰囲気が溢れ出します。それは、個人的にかなり好みな雰囲気でもあります。 そして、1話目にして世界は劇的な変化を迎えてしまいます。世界人口の2割が死滅した後、「人を数秒見つめるだけで殺す能力」を世界中のあらゆる人間が持つようになってしまうのです。当然、秩序は崩壊し世界中が滅茶苦茶になるわけですが、そんな世界でルイが自責を感じながら祖父の教えを胸に、学習をして世界の事象を変えていこうとする物語です。 かなり破天荒な設定でその気になれば重箱の隅をつつくような指摘はいくらでもできそうですが、さまざまな状況に対する仮定を立てて楽しむことができる、想像力の凝らされた設定は魅力です。また、一見すると荒唐無稽な殺人が能力の行使によって行われますが、そのメカニズムを検証しながら突き詰めて真相に迫っていくところも面白いです。宇宙の卵とは一体何なのか? それによってもたらされる事象にはどのような法則があるのか? といったさまざまな謎に対して、段々核心へと迫っていくところは引きが強いです。 圧倒的な貧困に喘ぎ、差別され、迫害され、教育すらまともに受けられなかった持たざる者であるルイが、学ぶことを始めて少しずつ考える力を伸ばし成長していく姿も王道的な気持ちよさがあります。参考文献からも、実際の世界にある様態を問題意識を持ちながらリアルに描いていることが伝わってきます。ただ、強いテーマ性を込められながらもしっかりとマンガとしてのエンターテインメント性もあり、そのバランスが秀逸です。 上下巻で綺麗にまとめられているのも素晴らしいです。とりあえず上巻だけ、と買ったら続きが気になって仕方ないと思いますので、2冊同時に買ってしまうことをお薦めします。 程野力丸さんには今後も独自の路線を驀進して欲しいです。

明日、私は誰かのカノジョ

定期的に心を抉られます

明日、私は誰かのカノジョ をのひなお
あいざっく
あいざっく

現代のニッチな層が抱える闇や悩みにスポットライトを当てる大きなきっかけになったと思います。 私も登場人物に共通する部分が多々あるので、 (整形や歌舞伎町など諸々。。。) 共感というよりは、定期的に心が抉られました。 例えば、萌ちゃんが楓にされていた言動は明らかに営業なので (分かる人には分かる!) 友達と心を痛めながら鑑賞しておりました笑 読む人によって色んな感情で読める、面白い作品だと思います。 「夜王」など歌舞伎町などをテーマにした作品は今までにもよくありましたが、 ゆあてゃなどのキャラクターが可愛くて印象に残りやすい、 パパ活やレンタル彼女など現代で注目され始めているテーマも取り上げている、 SNSが売上を左右するようになり、SNSで有名なホストがで一般人の目にもつくようになってきたタイミングでホス狂を取り扱ったなどのポイントが 明日カノがヒットした大きな理由なのかなと思います。 個人的には、今までのどの話よりも最新シリーズがリアルで共感もできるのかなと思いますが、 皆が求めているのはゆあてゃや萌ちゃんが出てくる辺りの、馴染みのない世界だけどリアルに感じるようなものなのかなとも思います。

神様の介護係

『三体』の劉慈欣さん原作の短編SF #1巻応援

神様の介護係 横山旬 未来事務管理局 Golo 劉慈欣
兎来栄寿
兎来栄寿

『三体』の劉慈欣さんが原作。 『三体』の劉慈欣さんが原作。 『三体』の劉慈欣さんが原作。 最初に『神様の介護係』の存在を知ったとき、驚きのあまり三度見してしまいました。そして、同時にこうも思いました。 そんなの、絶対面白いじゃあないですか……。 皆さんは『三体』は読まれていますでしょうか。今世紀を代表するSF小説で、『火の鳥』を髣髴とさせるほどの超大なスケールの物語。『三体』自体も中国国内ではコミカライズされているようですが、日本でも可能なら『アフタヌーン』辺りで本気のコミカライズをして欲しいですね。 この『神様の介護係』で気になる作画を担当するのは『 午後9時15分の演劇論』の横山旬さん。この組み合わせを考えた方が誰かは分かりませんが、英断だと思いました。劉慈欣さんの原作に対してどんな絵を当てるかと考えると、結構ハード目で青年誌寄りのタッチの方を選ぶのが自然な気がします。しかし、そこであえて少年マンガ系の横山旬さん。これがピッタリとハマっています。 1話を試し読んでいただければ解る通り、開幕からバリバリに独自世界の色を出してきます。濃密な作画と設定によって倍くらいのページを読んでいるような感覚に陥るほど情報量が多いです。それは、松井優征さんも授業で行っていた通りマンガとしては非常に優れている状態です。 横山旬さんの絵は、アクションや表情も気持ちいいんですよね。少年誌的テイストで間口の広いエンターテインメント色を出しながらも、そこは劉慈欣さんの世界ということでセンスオブワンダーを与えてくれます。 1冊完結で、非常にコンパクトですが満足感の高い仕上がりとなっています。SF好きの方は、押さえておいて損はありません。 そんな今夜、漫勉新シーズンが手塚治虫さん回放映なのは因果を感じますね。

ふたりといっぴき、はじめました。

非恋愛的同居(百合…ではない)#1巻応援 #完結応援

ふたりといっぴき、はじめました。 kame
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

猫一匹と暮らすイラストレーター女性が、その猫が大好きな友人と同居を始める、というエッセイ……女性同士、すわ百合!?と騒ぎたくなるのは百合好きの悪いところですが(自戒)、これは百合ではないけれどもとても良いです。 そもそも作者は「一人暮らし寂しいけれど恋愛はしんどい」というところから始まり、「寂しい時にちょっと話してくれたり側にいてくれる」相手を求めて友人に同居をもちかけます。これ、実現すれば理想的ですが、そうはいかないからみんな苦労しているやつですが、この二人は見事その理想的な関係になっていて、こんな現実があっていいの!?と驚きながら幸せな気持ちになれます。 内容としては食4:二人の関係4:猫2くらいの割合。未知の調味料に好奇心が膨らみます。 そしてべったり一緒にいなくても、相手の気配に安心したり、辛い時に話したり、同じ食を共有したりすることで、寂しがりな作者が穏やかに満たされるのを見ていると、恋愛がなくても満たされる可能性に私も救われる気がします。 恋愛じゃなくても満たされる関係……「クワロマンティック」や「ロマンシス」という在り方の可能性を、ここに感じるのは私だけでしょうか? (上下巻同時刊行だったみたいなので1巻応援と完結応援にしました)