死にかけた僕はまだ芸人を辞めていない

笑わせるという仕事の向こうに #1巻応援

死にかけた僕はまだ芸人を辞めていない ナターシャ
兎来栄寿
兎来栄寿

表紙を捲るとカバー袖に書かれている「続けるも辞めるも、どちらも地獄。」という文言が、重くのしかかってきます。 人を笑わせることが仕事である芸人が、裏で抱える笑えない現実。コントトリオ「ニュークレープ」のナターシャさんが、そのリアルを物語に込めて描いています。 芸人というテーマではありますが、人生をどう生きるかという悩みとして捉えればあらゆる人にとって自分ごとになり得る物語です。やりたいことをやるべきなのか、自分が得意で苦にならないことをすべきなのか。そもそも、自分は本当は何が好きで、何をやりたかったのか。 また、自分より面白くて絶対に売れるべきなのに売れてない人もいれば、堅実な道へと進んだ人もいる。自分はどの道を進むべきなのか、進めるのか。そこに本当に道はあるのか、道が無ければ切り拓けるのか。ともすれば見失いがちなことを、本作の主人公・千葉を通して考えさせられます。 舞台の上に立つときのえもいわれぬ緊張感にはゾクッとしますし、逆に何気ない日常シーンの掛け合いに笑い癒されもします。 特に好きなのは、終盤のとあるシーン。主人公が得る気付きは、私たちも同様に見落としていてもっと大事にすべきものかもしれません。 同じくコンビ芸人を描いた『相方が俺を好きすぎる』と同日発売するというシンクロニシティが起きており、そちらのクチコミも書いていますが、併せて読むと面白味が増します。

わたしが誰だかわかりましたか?

イヤミスのような読み心地 #1巻応援

わたしが誰だかわかりましたか? やまもとりえ
野愛
野愛

恋愛、子育て、仕事、友人関係に悩むシングルマザーの等身大の人間ドラマ。プラス、ミステリー要素があるのが面白い。 主人公はアラフォーのシングルマザー・海野サチ。 毎日毎日仕事に追われ、家に帰れば思春期かつ反抗期の息子がいる。女友達もなんだか優しくない。 変わり映えのしない日々を送るサチだったが、会社のパーティーで出会った男性・川上樹と意気投合。 恋の予感に胸を躍らせながら、毎日毎日メールのやりとりをし始める……。 この作品の魅力は、良くも悪くもサチが等身大の人間として描かれているところ。 友人に対しても息子に対しても鈍感で無神経な発言を繰り返すけれど、自分に対する悪意には敏感。 久しぶりの恋に浮かれてしまうのも、自分の弱みを隠そうとするのも、人間としてめちゃくちゃリアル。 人間のちょっと醜い部分が誇張なしでしっかり描かれている上にミステリー要素がプラスされているので、イヤミスを読んでいるかのようなハラハラドキドキ感がある。 レタスクラブ公式サイトで先行配信されているけれど、レタスクラブに縁がない層にも読んでほしい。