数字であそぼ。

「大学への数学」と「大学での数学」は違うと聞く

数字であそぼ。 絹田村子
ゆゆゆ
ゆゆゆ

twitterで以前紹介されているのを見て、気になってた漫画が3巻無料なので手を出しました。 ちなみに登場する先生は、モデルになった先生がいるらしく、京大理学部に通う(った)方々には、「あ、あの先生かな」となるそうです。twitterの紹介を読んだときに知りました。 さて自分が学生だったころ、物理の先生がしばしば使う公式を、方程式から生み出してみせてくれました。 似たような文字を使うのに、さっぱり共通点が見えなかった物理と数学。 漫画「レヴァリアース」のシオンが言っていた、「すべての学問は繋がっている」という言葉が理解できた瞬間でした。 そしてさらに先生が「こんなのは数学の○○先生からしたら、子供の手習いのようなもの。あの人たちは次元が違う」みたいなことを言ったのも覚えています。 物理と数学をつなげる公式をすらすら書いた先生ですら、敵わない次元。 あのころ、ドラマ「古畑任三郎」で、とある公式の証明をめぐる数学者のストーリーを取り扱っていましたが、あのノホホンとした数学教師はそういう次元の方だったんでしょう。 数学をやっていると思ったら、哲学だったりする次元。 本作はそんな次元が違う世界に身を落とすことにした若者たちの物語です。 

アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている―

命を賭した真理の探究物語 #1巻応援

アナトミア―解剖してわかったことだが、人間は必ず死ぬようにできている― 高城玲
兎来栄寿
兎来栄寿

「スペクタクル・ルネサンス人体解剖(アナトミカル)ロマン」と、なかなかすごい公称が銘打たれた作品。 今でこそ社会的地位の高い医者という職業ですが、理髪外科医の主人公・トトを通して往時の身分の低かった医者のありようを読んで学べる物語です。 多くの人は、医療といえばイメージとして科学的なものを想像するかもしれません。しかし、いわゆるEBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医学)のようなものが普及してきたのはつい最近のこと。100年も遡らなくとも、世界ではロボトミー手術が行われそれに対してノーベル医学賞が与えられてきたわけです。 それより更に昔の中世において、宗教的な価値観が非常に強かったころには、とんでもない誤解に基づく治療が罷り通っていました。その実例である「瀉血」と「焼灼」の凄惨な様子は、試し読みできる第1話から描かれます。 宗教的な価値観が非常に強い時代背景の中で、常識を超えて圧倒的な正義のようにされている事柄に対して疑いを持ち果敢に挑んでいく様は『チ。ー地球の運動についてー』を髣髴とさせます。 ″「でも」「もしかして」は「可能性」だ!!″ と、真理を探究していくトトや、彼の協力者となるレオナルド・ダ・ヴィンチの狂気じみた熱量が読んでいて快感です。 高城玲さんはこれまでに何篇か短編も描かれていてそれぞれに魅力的でしたが、連載でも遺憾なくパワーを発揮されていると感じます。本作の続きと共に、短編集の発売も楽しみにしたいです。

201号室のおとなりさん

大学生ヒロインの純情な感情 #1巻応援

201号室のおとなりさん 日向きょう
兎来栄寿
兎来栄寿

『ブラザー・トラップ』の日向きょうさんが送る新作です。巻末には、『ブラザー・トラップ』の撮影現場へ訪れた際のレポートマンガも描かれており、非常に幸せな実写化であったことが伝わってきます。 『201号室のおとなりさん』もまた、良い感じに心を擽られる大学生×社会人のラブコメです。 ヒロインの美和、通称みーすけは ・弟妹が多く裕福ではない家庭を助けるために、大学ではしっかり勉強してちゃんと稼げる仕事に就きたい ・同世代が興味津々のお洒落や恋愛などに全然興味がない ・マイノリティな趣味のマスコットキャラクターが好きで常々珍妙な柄の服を着たりスタンプを送ったりする など、朴訥とした新大学1年生。大学時代、身近にもこういう子いたなぁと懐かしむと共に、性別が違うので事情も違うとはいえ後ろの2つは個人的にも共感を覚えるところです。 しかし、そんな彼女をかき乱す存在が幼馴染でもあり、隣人であり大家代理でもある社外人の千暁(ちあき)。生活力に乏しく、女性関係へのだらしなさを感じさせる再会時の印象が、色々なイベントを経て徐々に覆っていきます。 容姿端麗で外面も良くモテモテである千暁は逆にグイグイ来ない美和のような子の方が落ち着ける(ある意味で「おもしれー女」)というところがポイントとなっており、美和もそのことを徐々に理解しながらも自分としても初めて抱く気持ちの芽生えに翻弄されていく様子が見どころです。大学生になってからの初恋というのも乙なものですね。 美和と奇跡的に趣味が似通って友達になる同期の子や、同じアパートの住人たち、また1巻最後で登場する新キャラの子など脇を固めるサブキャラたちも魅力的で良い群像劇となっていきそうです。 ズボラな面もありつつ頼れてカッコいい男性像を見せながらも、その裏には陰をも感じさせる千暁との関係は周りを巻き込みつつどう展開していくのか。そして、気になるきぐるみあにまる同好会の活動内容とは。 本作も順調に進めばメディア化して人気を博して行きそうな盤石感を覚えます。ピュアで真面目なヒロインのラブコメを読みたい方にお薦めです。