あらすじ逃避行の途中で海辺の街に寄ったアザミとミズキ。そこで二人は、アザミの過去を知る女性・琥紀(くすみ)と出会う。久しぶりの人との邂逅は、否応なく二人の過去の記憶を呼び覚ます。そして、旅の中で二人は縛られていた過去と向き合うことに…… 二人が逃避行の果てに見つけたものとは…?
退行世界や廃墟を描く作品は、美しい光景も楽しみたいですよね。『ゆるさば。』や『終末ツーリング』の様な緻密でリアルな絵も良いですし、『少女終末旅行』のような抽象的な感じも好き。 『グッバイ・ディストピア』の背景絵はちょっと独特。これは建築パース図のタッチ……よく建築の完成予想図に使われる絵柄に近い感じ。 緻密さと余白の並立、直線をフリーハンドで描く有機と無機の中間くらいのテイストは、失われつつある人間の存在感を仄かに表現していて、私はとても好きです。 現代に残る廃墟を訪ねて旅する、大らかな女性とお嬢様風の女性。ゆきずりの二人は共に行動しながらも、決して素性も心の内も素直に明かさない。 しかしそれぞれに問題を抱える二人は、互いのおかげで少しずつ心がほぐれていく。それは廃墟が朽ちてゆくように、ゆっくり進み、世界に馴染む感覚で、読後に安らかな気持ちになりました。