あらすじ

5年後10年後、この夏を私はどんな気持ちで思い返すんだろう。私は自分を好きになりたい。その為には、ここにいちゃいけない。蒼介にも壱也にも言わず、密かに家を離れる決意をした美羽。しかしその事で家族の中に不穏な空気が流れ始める。美羽が家を出たい原因は蒼介なのではないか? 父・大はその疑念を蒼介にぶつける。「お前と美羽のことを話せ、全部」2人の関係を問い詰められた蒼介は、ついにこれまで黙っていた自分の気持ちを告白する。「間違ってても、駄々でも、俺は美羽がいいんだ」手に汗握る展開の第8巻は四十三話~四十八話までと、単行本の為に描き下ろされた『楽描き』、電子単行本版特別収蔵の蔵出しイラスト集を収録。
弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 1巻

「おはよう 早く死んでね お姫様」今日もまた差出人不明の嫌がらせメールで美羽ちゃんの朝は始まる。おそらく西条先輩の痛いファンからだろう。西条先輩は高校生にして人気小説家。美羽ちゃんと西条先輩は、美羽ちゃんの弟の蒼介の紹介で付き合い始めた。だけど蒼介は、西条先輩に美羽ちゃんを紹介した事を後悔しているみたい。美羽ちゃんたち家族がウチの隣に引越してきた三歳の時からずっと蒼介ひとすじの私には、正直美羽ちゃんの存在は邪魔で、彼氏が出来たって聞いた時はホッとした。これで蒼介を自分だけの物に出来ると思ったから。なのに蒼介は相変わらずで、身体を重ねても私の名前は呼んでくれない。蒼介はいつも、誰の事を見てるの… 一話~六話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 2巻

俺が美羽とは血の繋がりの無い姉弟であること、また本当は美羽を好きなことを壱也に話さなければならない。そう思っているのに、うまく切り出すことが出来ないまま時間だけが過ぎていく。一方、百華の親がとうとう離婚した。元気の無い百華を美羽は励まそうとするが、それが余計に百華の気に食わない。「仲良し家族で、蒼介だっていつも側にいる美羽ちゃんに私の気持ちがわかるわけない!!」そんな百華に美羽は自分の家族の話を始める。「ズルい…。美羽ちゃんはズルいよ…!」ついに美羽と蒼介に血の繋がりがないことが壱也と百華の知る所となり、四者四様の想いがますます複雑に絡まり合っていく第2巻。七話~十二話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 3巻

「ふたりは、家族?」西条くんにそう訊かれて、「家族だ」と答えた。聡いこの人は気付いてる。私の気持ちに…。私が、蒼介を弟として見ていないことに…。だけど、「家族だ」と答えた。だってもう、失くしたくない。家族でいたい。そうでなきゃ…私は…。美羽の口から初めて壱也に過去のトラウマが語られ、「家族」に拘る理由が明かされる。それは、蒼介も知らないことだった――…。そして美羽の過去を受け止めた壱也は、自身も今まで隠していた胸の手術痕を明らさまにする。お互いの秘密を見せ合った二人は、ついに一線を越え――…。想いは蒼介に在りながら、西条を受け入れた美羽。切なく心がすれ違う、第3巻。十三話~十八話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 4巻

「あいつと家族になんの?」「なれんの?」俺に訊かれて初めて美羽は、自分が曖昧なまま指輪を受け取っている事を認識したっぽい。「西条くんは私をすごく必要としてくれて……だから力になりたい」そんなの答えになってねぇよ美羽。それは「好きだから側にいたい」というのではないだろ。美羽をめぐり、蒼介と壱也の関係が崩れ始める。激動の第4巻は十九話~二十四話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 5巻

「あの時したこと、やっぱ俺は後悔してないしなかったことにするつもりもない。でも傷つけたことは謝る。7/1 20:00 新海駅、あの時のやり直しをする」こんな手紙、封なんて開けず捨ててしまえばよかったのに。今あたしは、蒼介に続く夜道をひとり歩いている。蒼介に選択を迫られ、動揺する美羽。行けば壱也を裏切り、蒼介とは二度と家族に戻れない。行かなければ、蒼介を永遠に失うことになる――…。迷いながら美羽が出した答えは――…。緊迫の第5巻は二十五話~三十話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 6巻

蒼介とラブホテルに入った事を美羽から聞かされた壱也。心臓を抉り取られるような痛みを感じながら、それでもなお、美羽と別れる決断はできない。それどころか…。「こんなに惨めで苦しい思いをしても、このひとを手離せない」そんな壱也にとって唯一の望みは、美羽が家族という形を壊せない事。無償の愛に満たされた今の家族の温かい円の中が彼女の安心。だから彼女は、絶対に蒼介の手は取れない。「蒼介、もう彼女を待つな」懊悩の第6巻は三十一話~三十六話までを収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 7巻

ここは昔と変わらない。あの日の暗く美しい夏の風景が今も眼前に広がっている。吸い込まれそうな青に立ち竦む。私が萎縮していく。優しかった壱也に蒼介がいる隣の部屋でデートレイプされた美羽は、壱也をそんな風に変えてしまったのは自分だと激しい自責の念に囚われる。このままでは、皆が不幸になる。美羽は、自分が変わらなければ壱也とも蒼介とも向き合えない事を自覚し、幼い頃に自分の不注意で死なせてしまった弟の墓参りに行く決意をした。ずっと避けてきたトラウマを乗り越えて、先に進まなければ…! 物語の転機となる第7巻は三十七話~四十二話までと、単行本にのみ収録の『楽描き』、電子単行本版特別収蔵の蔵出しイラスト集を収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 8巻

5年後10年後、この夏を私はどんな気持ちで思い返すんだろう。私は自分を好きになりたい。その為には、ここにいちゃいけない。蒼介にも壱也にも言わず、密かに家を離れる決意をした美羽。しかしその事で家族の中に不穏な空気が流れ始める。美羽が家を出たい原因は蒼介なのではないか? 父・大はその疑念を蒼介にぶつける。「お前と美羽のことを話せ、全部」2人の関係を問い詰められた蒼介は、ついにこれまで黙っていた自分の気持ちを告白する。「間違ってても、駄々でも、俺は美羽がいいんだ」手に汗握る展開の第8巻は四十三話~四十八話までと、単行本の為に描き下ろされた『楽描き』、電子単行本版特別収蔵の蔵出しイラスト集を収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 9巻

待ち合わせ場所に佇む彼女の横顔があんまり綺麗でゾッとした。久しぶりに会った美羽さんは、何だか急に大人になったみたいだ。美羽から突然の別離を告げられた壱也は、消化できない想いを抱えながらも出立する美羽の見送りに行く。しかしそこに蒼介の姿はなく…。行く先を告げぬまま美羽が家を出てから数ヶ月、季節は変わり、秋。後悔ばかりが降り積り、足をとられて、動けなくなる。初めて離れ離れになった3人の、想いを紡ぐ第9巻は四十九話~五十四話までと、単行本の為に描き下ろされた『楽描き』、電子単行本版特別収蔵の蔵出しイラスト集を収録。

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】

この作品、埋もれさせるわけにはいかない

弟の顔して笑うのはもう、やめる【単行本版】 神寺千寿
sogor25
sogor25

姉の美羽と弟の蒼介は、両親の再婚で家族になった義理の姉弟。美羽には蒼介の紹介で知り合った西条くんというカレシがいて、蒼介は蒼介でお隣に住んでいる百華から好意を寄せられている。遠目から見るとお似合いない2組。ただ1点、蒼介が美羽に対して"異性としての好意"を抱いていることを除いては…。 この作品はいわゆる義理の姉弟の関係を含めた三角関係、四角関係の物語ですが、それだけに留まらない複雑な人間関係とその心情描写がこの作品の特徴です。 美羽は西条のことを彼氏として大事な存在として思っていつつ、蒼介に対しても姉弟以上の感情を抱えているというアンビバレンツな思いを内面に抱えていて、その感情の上にさらに「家族の関係を守りたい」という別の感情が蓋をすることで体裁を保っているという状態。なので蒼介から明らかに姉弟以上の関係を思わせるアプローチを受けても"姉としての振る舞い"に徹しています。一方、蒼介と西条はそれぞれ美羽のことを一途に想っているのですが、蒼介が西条のことを紹介したということからも分かるとおり、元々蒼介と西条は親友同士。そして西条と百華は美羽と蒼介が"義理"の姉弟であることを知らない。という、それぞれが内なる思いを隠したり、蓋をしたり、もしくは堂々と相手に伝えたりしながらどんどん複雑な方向へ進んでいくというのがこの作品です。それを神寺さんの繊細な絵柄とモノローグ多めの心情描写で丁寧に表現しているため、関係性の複雑さに比べてドロドロな感じはあまり受けず、純粋に登場人物に感情移入して読める作品です。 この作品、少女マンガ好きには是非オススメしたい作品なのですが、このクチコミをご覧の方で作品のことをご存じだった方はほとんどいらっしゃらないのでは無いでしょうか。 実はこの作品、松文館という出版社のガールズポップコレクションというティーンズラブレーベルから出版されている作品です。しかも、松文館から紙書籍で発売されている単行本はこの4年間でこの作品のみという状態で、そのため書店でこの作品に出会うことは非常に困難な作品となってしまっています。ティーンズラブのレーベルではありますが過激な描写はほとんどなく、少女マンガを読まれる方であれば広く楽しんでもらえる作品だと思うので、もしこのクチコミを見て興味を持って頂いた方は是非、まずは電子書籍からでも良いのでお買い求め頂ければ幸いです。 ちなみに先日、異例のフルカラー版単行本が電子書籍で発売されました。そちらももしよろしければチェックしてみてください。 5巻まで読了。