あらすじこれは、遠い遠い獣耳の生えた人達が暮らす國のお話。この國では、同性同士の結婚が許されておりました。お互いの気持ちを共有して少しだけ前進したちると千里の結婚生活は、けれど大きな変化もなく穏やかに続いておりました。しかし、そんな風にちると千里が少しずつ関係を深めていく様子を見て、侍女のカヨは焦りを覚えます。「カヨもそろそろきちんと自分の人生を生きなければならないのでは―…?」カヨの新しい友人・鈴も加わり、穏やかな、しかし少しずつ変化していく3巻です♪
獣耳を持つ種族が暮らす、とある国。そこでは女性同士の婚姻が認められていた。財閥の一人娘・春日ちるは16歳にして、幼い頃に決められた許婚・18歳の東雲千里の元に嫁ぐ。幼い頃の温かな記憶を頼りに、互いに寄り添う生活が始まる……。 ♡♡♡♡♡ 描かれる世界は、明治・大正期の日本がモデルのようだ。懐かしい光景の中、天真爛漫なちると物静かな千里の夫婦が暮らす穏やかな日々に癒され、侍女のカヨや千里の幼馴染のハクとのコミカルなやり取りに、明るい気持ちにさせられる。 「許婚」から始まった二人は、「許婚」を超えて互いの存在を求める。二人とも自分に自信は無いながらも、自分の意思で相手を知り、受容しながら愛情を育む物語は美しい。 一方、登場人物の中には、封建的家父長制の価値観の元で、家の都合・親の意図で、生きる道を選ぶ者が出てくる。彼女達はそれに疑問を持たないのだが、ふとしたきっかけで「自分の望む道」について考えることになる。 ちるの侍女・カヨも、女教師の日和も、明るく後押しするちるや、幼くも強い意思を持った生徒の百(千里の妹)に影響され、自分の生き方に初めて自分の意思を持ち、行動する。 彼女達の決意の表情と、希望に満ちた眼差しに「独立した個」の立ち上がる瞬間を見て、心震える。 明るいやり取りの中に綴られる、自分の人生を「愛する者」の為に歩む物語を、ゆっくり追いかけたい、そんな作品だ。