あらすじ水族館飼育員のお仕事は毎日がジェットコースター。分刻みのスケジュールで駆け回り、ままならない生きもの相手に右往左往。だけど愛しくてしょうがない! 水族館が何倍も楽しくなる飼育員奮闘お仕事コミックエッセイ
第一話に「この本は事実に基づいたフィクションです」 と書いてある。 このフレーズを掲げる作品は危険だと思っている。 「ようするにフィクションだよね」 という話になりがちだから。 「手打ち風うどん」「本場風中華」 みたいなやつになりがち、とどまりがち。 それで面白い作品(例としてあげれば梶原一騎先生の作品) になっているならよいけれども、 たいして面白くもない、という作品も多い。 「水族館で働くことになりました」は 事実に基づいたフィクションという描き方を 最適に活用した面白い良作品だと思う。 別の言い方をすれば、 わざわざこのフレーズを書かなくても済ませられた かもしれないが、正直にあえて書いて、 そしてそれが正しかった漫画だと思う。 ノンフィクションには「真実という価値」があるが 真実には過激だったり不快だったりする面が 含まれていることもある。 そこを除外したり脚色すれば、 ノンフィクションという価値は 下がるか無くなってしまう。 水族館の仕事も、真実を忠実に描こうとすれば もっと肉体的にも精神的にもキツイ面を 描かざるを得なくなると思う。 早出・遅番・宿直のつらさ、衛生面や匂い、 怪我や病気や、潜水仕事などでの命の危険。 そして何より命を預かっているという重圧。 だがそれをノンフィクションで忠実に描くことは 水族館側が望むことでは無いと思う。 お客様には、生き物を飼育することが大変だと 知ってもらいたい面もあるだろうと思うが、 知ってしまったら、単純に楽しむことが 出来なくなるかも知れず、それは水族館としては 避けたいことだろう。 そこに配慮して「水族館で・・」は 事実に基づいたフィクションということで 上手く、そして面白くて、良い意味で 水族館側が望んでいる漫画にしていると思う。 その点で、日高トモキチ先生は凄く上手い。 主人公が活き活きと明るく仕事をしている。 大変なんだろうな、と適度には思わせながら。 読んでいるほうとしてはホノボノする感じを受ける。 愛嬌のあるキャラの仕草やセリフで。 そういったいかにも漫画的な手法で。 読んだら水族館は楽しいところだなと感じ、 飼育員さん大変だけれど頑張ってね、と思うようになる、 事実に基づいたフィクションだからこその とても面白いと感じる、お仕事エッセイ漫画だった。