登場人物の「名前」は、キャラクターのイメージ形成の重要要素かもしれないが、例えば関係性の思考実験の様な作品では、その様なイメージは必要ないのかもしれない。 この『倒錯少女症候群』は、まさにその様な作品集である。 登場人物に固有の名前は無い。大抵はA子とB子の物語。キャラのイメージは絵で充分伝わる。名前を思い出す手間が無いと、思い入れは薄まるがかなり読みやすい。 そうして描かれる短編達は、AとBの関係があって、強く求め、踏み込み、反転してゆく非現実的世界が描かれる。 ①『貴女にすべてをささげると私の眼球はそういった。』は、眼球を舐めるというフェチの強さも凄いが、その先の「視覚を分け合う」に至る強い愛着と世界観についての哲学にやられる ②『ショウケースガール』は、家猫と思しき猫と飼い主の関係性と「外の世界」の秘密の話。飼い主らしき人の感情は、動物好きなら分かる? ③『シスタス』は、声の小さな気弱妹がしっかりした姉に依存する関係性。姉は妹の「声」をコントローラーで操作するが……関係性の変化は身体的特徴から。堕ちていく姉が愛らしい……。 ④『ブンレツ・ガール』は、分裂する病気に冒された子と彼女の側にいる親友の話。オリジナルとフェイクの恋と実存を巡る物語はどこまで行っても救いが無く、それでも自己を保つのか……と悲しくなる。 いずれも歪な関係性とグロテスクな愛着に至る時が、至高の瞬間の作品達だ。
あうしぃ@カワイイマンガ
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