あらすじその昔……3人の兄弟がいた。かれらは世界を3つにわけそれぞれのおさめる部分をくじ引きで決めることにした。一番くじを引いた末弟のゼウスは天界の王となり、次兄のポセイドンは二番くじを引き豊穣な海界の王となった。不運な長兄のハデスは三番くじを引いた。かれはやむなく暗い地底の国の王となった……
アニメーターという「絵を動かす人」が漫画を描いたら、紙の上でどのくらい「絵を動かす」ことができるのか、その恐るべき力を見せつけた快作である。 アニメーターが描く漫画と言えば、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』漫画版が有名だと思うが、連載時期がかなり重なるこの『アリオン』は、「絵が動く漫画」として、勝るとも劣らない素晴らしさだと思う。 漫画とアニメの二刀流だった神様・手塚治虫の出世作『新宝島』は、まるで映画のような臨場感溢れるダイナミックな画面構成で、多くの読者に衝撃を与え、現代漫画の始まりを告げたのだから、そうした「動く絵」の魅力は、漫画の本質的な要素だと思うのだけれど、最近の漫画界にはそういうタイプのヒット作が少ないのは残念だ。 安彦良和は以降、漫画家として多くの作品を発表しているが、この第一作ほど「絵が動く」魅力に溢れる作品はないように思う。