あらすじ

新たな気持ちで迎えた日本シリーズ。阪急の打者に打ちこまれ、いずれ自分の速球が通用しなくなると感じた飛雄馬は、右腕をも犠牲にする覚悟で、魔球の開発を決意した。飛雄馬は伴と花形に連れだされたゴルフ場で、魔球のヒントを得る。飛雄馬の新魔球の設計図を見た父・一徹は、「もう一度、野球地獄の不死鳥になろう」と決意。飛雄馬、一徹、伴は、極秘特訓を開始した。
新巨人の星 1巻

完全試合達成とひきかえに左腕を破壊した星飛雄馬が、独り行きさきも告げず去ってから5年。飛雄馬の野球にかけた情熱が再び燃えあがる!巨人軍が、長島監督のもと、球団史上初の最下位の屈辱に悲涙をのんだ年の夏。東京近郊の草野球界に成功率10割の代打を三万円で請け負う助っ人が出現し、話題となっていた。投手として死んだ男・飛雄馬は、打者として登場した!

新巨人の星(2)

長島・巨人の低迷に心を痛めた飛雄馬は、代打者として再起することを決意。かつての盟友・伴宙太の協力で特訓を開始した。伴が招いた名打撃コーチ、ビッグ・サンダーの指導により日増しに上達する飛雄馬。しかし、話を知った一徹は、我が子をみじめな代打者で復帰させたくないと、その野望を阻止しようとする。ある時、飛雄馬は、特訓の最中に本来の利き腕が右であることを知る。

新巨人の星(3)

飛雄馬の巨人復帰に向け、協力する伴は、長島監督に飛雄馬の練習をこっそり見せた。特訓を重ねた打撃よりも、飛雄馬の今はノーコンの右投げに、長島は無限の可能性を感じた。長島は、飛雄馬の復帰に反対を唱える一徹たちに、自分の現役時代の欠番「3」を与えたいと説得、ひとまず打者として復帰させるため、あえて飛雄馬にテスト生待遇でのキャンプ参加を通告する。

新巨人の星(4)

飛雄馬はキャンプでの屈辱的な扱いに耐えながら、ビッグ・サンダー直伝の殺人スライディングを完成。見事、巨人軍復帰を果たした。栄光の背番号「3」を、テスト生あがりの飛雄馬が引き継いだことに、世間は大騒ぎになる。飛雄馬が永久欠番「3」を背負い、死んでもやりぬく道はただ一つ、右投手として再起すること!開幕戦を迎え、飛雄馬は、殺人スライディングで人気を博すが…!?

新巨人の星(5)

阪神の掛布は、ビッグ・サンダー直伝の「スクリュー・スピン・スライディング封じ」で、飛雄馬の殺人スライディングを破った。見せられる唯一の武器が破られた飛雄馬は、オールスター戦の辞退を申し出るが、長島監督は認めなかった。外野手としてオールスター戦に出場した飛雄馬は、外野からの遠投という形で、右投げを披露。「右投手星飛雄馬」の誕生を予感させる肩の強さを見せつけた。

新巨人の星(6)

対阪神戦。飛雄馬はついに右投手としてマウンドへ向かう。プロ野球史上初の奇跡、消え去った左投手が、右投手として復活した!飛雄馬はノーコンながら、王貞治直伝のノーワインドアップ投法をおりまぜ、完封勝利で再起を飾る。そして、巨人がリーグ優勝を果たしたシーズン終了後、下半身の強化に励む飛雄馬に、父・一徹は手作りの「大リーグボール養成ギプス右投手用」を手渡した。

新巨人の星(7)

飛雄馬と対決するため、花形満はヤクルト入りを決意。宿命のライバルの球界復帰に、飛雄馬はさらなる闘志を燃やす。ペナントレースが開幕した。一徹の「大リーグボール養成ギプス右投手用」のおかげで制球力を身につけ、持ち前の剛速球に磨きをかけた飛雄馬は、各球団の打者を次々と打ちとり勝利を重ねていく。そしてついに、かつてのライバル・花形と再び対決する時がやって来た。

新巨人の星(8)

開幕してから四連勝と絶好調の飛雄馬。しかし、もうひとりの宿敵・大洋の左門豊作は、飛雄馬の投球フォームに欠点があることに気付く。左門に連打され、一敗した飛雄馬を、非情にも二軍落ちが待っていた。そこで、飛雄馬は王貞治から、自分の投球フォームの致命的な欠点を指摘される。フォーム改善の特訓に励み、見事一軍に復帰した飛雄馬に、もはや弱点は無かった。

新巨人の星(9)

旧友・牧場の紹介で女優・鷹ノ羽圭子と出会った飛雄馬は、今は亡き初恋の人、日高美奈の面影を、体が不自由な子どもたちのため生きる圭子に見た。次第に圭子にひかれていく飛雄馬だったが、親友の伴もまた、彼女に思いを寄せていることを知る。圭子が好意を寄せていたのは飛雄馬だったが、苦悩の末、飛雄馬は伴との友情を選び、亡き恋人への永遠の愛を誓った。

新巨人の星(10)

新たな気持ちで迎えた日本シリーズ。阪急の打者に打ちこまれ、いずれ自分の速球が通用しなくなると感じた飛雄馬は、右腕をも犠牲にする覚悟で、魔球の開発を決意した。飛雄馬は伴と花形に連れだされたゴルフ場で、魔球のヒントを得る。飛雄馬の新魔球の設計図を見た父・一徹は、「もう一度、野球地獄の不死鳥になろう」と決意。飛雄馬、一徹、伴は、極秘特訓を開始した。

新巨人の星(11)

伴、一徹の協力を得て、飛雄馬はついに蜃気楼の魔球「大リーグボール右一号」が完成させた!ボールが3つに見えるという新しい魔球の登場に球界は騒然。飛雄馬は連勝を重ねる。しかし、蜃気楼の魔球はその原理の秘密を嗅ぎつけられたら最後、その名のごとく儚くかき消える運命…。魔球の打倒に、左門、そして花形が闘志を燃やす。今ここに、魔球をめぐる新たな戦いが始まった!!

新巨人の星

『巨人の星』のエピローグ

新巨人の星 梶原一騎 川崎のぼる
名無し

大リーグボール養成ギブスやちゃぶ台返し、車を運転する小学生など、自分が生まれる随分前の作品だというのに『巨人の星』について知っている自分に驚きます。 昨年には野球からクリケットに換骨奪胎した『スーラジ ザ・ライジングスター』の放送がインドで開始され、『巨人の星』という作品の遺伝子は世界にも広がり続けています。この『巨人の星』ももちろん面白いのですが、それよりも私が好きなのは、星飛雄馬のその後を描いた『新巨人の星』です。  『巨人の星』で描かれていたのは、星一徹の執念によって生まれた星飛雄馬という野球マシーンの誕生と崩壊です。自分の果たせなかった夢を、息子・飛雄馬に叶えさせようとする一徹は、はっきり言って異常です。こどもらしい遊びもできず、ただ野球のために生きる飛雄馬のクライマックスが、父・一徹との対決です。そこで自分の野球人生を犠牲に、ようやく父と野球の呪縛から解き放たれ、関係者の前から姿を消す飛雄馬…というのが『巨人の星』のエピローグ。  星飛雄馬が消えた数年後から『新巨人の星』ははじまります。結論からいえば、飛雄馬は野球以外のものを見つけることができませんでした。盟友・伴宙太と花形満は、星飛雄馬のいなくなったプロ野球に興味を失い、それぞれ親の会社を継ぎ普通の生活に戻りました。あの星一徹でさえも、花形満と娘・明子の結婚を見守った後は、完全な隠居として野球からは離れています。しかし、左腕が破壊された飛雄馬だけが、まだ“巨人の星”になるという妄執から離れられずにいるのです。いまだ、燃える目の星飛雄馬を目撃した星一徹はひとりごちます。「時代は移り いや終わり わしは老い果てた… もはや戦ってやれんついていけぬ!な なぜやつは…!?」。造物主である一徹の手を離れ、暴走をはじめた飛雄馬の行動は、普通の生活に戻ったはずの伴宙太、花形満、そして星一徹の心にも火を付けてしまいます。  一度失ったはずの夢を追い始めた漢たちの、頼もしくもどこか物悲しい姿を是非読んで欲しいですね。