私的漫画世界|浦沢直樹|MASTERキートン
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マスター・キートンは原作・勝鹿北星(菅伸吉),作画・浦沢直樹の作品となっています。しかし,実際の制作場面における勝鹿氏の関与は低く,連載当時の担当編集者であった長崎尚志氏と浦沢氏が主にストーリーを考え出していたようです。
そのため、浦沢氏が「作家としてクレジットが載るのはおかしいから,名前をもう少し小さくして欲しい」と申し入れ,同時に印税比率についても話し合い,今後の増刷分に関しては勝鹿氏のクレジットを小さく印刷することで両者が合意した経緯があります。
ところが,勝鹿氏とは古くから親交のあった雁屋哲氏(美味しんぼの原作者として有名です)が「勝鹿北星の名前が小さくなることは断じて許せない」と小学館に強く抗議しました。小学館としても「美味しんぼ」の原作者である雁屋氏の意向を無視できず,増刷に踏み切れないという事情があるようです。
勝鹿氏が2004年に亡くなると,雁屋氏が代理人のような形で小学館との調整しています。幸いなことに三者の話し合いがまとまったのか,2011年に「MASTERキートン 完全版」が発刊され,そこでは「脚本」として5巻までは勝鹿と長崎が,6巻以降は勝鹿と浦沢が連名でクレジットされています。
この一連の騒動はネット上でもたくさん取り上げられており,菅伸吉氏は「きむらはじめ」,「ラデック鯨井」,「勝鹿北星」,長崎尚志氏は「東周斎雅楽」「江戸川啓視」というペンネームを使っているという記事があり,ほとんど知られていないマンガ原作者の姿が少し見えてきました。