あらすじ

着々と進めてきた作戦をついに決行に移した市来崎。橿原を「人のこない体育館裏」に呼び出し、自らが橿原を殺すために学校に潜入していたこと、これまでの全ての言葉が嘘であることを告げ、どん底に叩き落とす。橿原は絶望死してしまうのか?そして、新宮さんとの関係は修復できるのか――!?
この復讐にギャルはいらない 1巻

温もりを知らずに生きてきた孤独な殺し屋・橿原ノゾミ。自らを育てた“ファミリー”を裏切り、地味な高校生として日々を送っていたが、クラスのギャル・新宮さんを不良から助けたことがきっかけで、なぜかぐいぐい距離を詰められることに。慣れないギャルとの交流に、彼女が自分を狙う刺客なのではないかと疑い始めた橿原は…?陰キャ殺し屋×陽キャギャルの疑心暗鬼ラブコメ!!

この復讐にギャルはいらない 2巻

元殺し屋・橿原を絶望死させようとする刺客・市来崎から「セックスしたい」と言われ、赤子のように震えてしまう橿原。しかしある出来事から市来崎は男だと勘違いし余裕を取り戻す。自分が女であることを思い知らせようとする市来崎の取る手段とは!?一方、新宮さんとも映画館デートをすることになった橿原は、彼女が暗闇を利用して自分を殺そうとしているのではと疑いを深めて…?

この復讐にギャルはいらない 3巻

着々と進めてきた作戦をついに決行に移した市来崎。橿原を「人のこない体育館裏」に呼び出し、自らが橿原を殺すために学校に潜入していたこと、これまでの全ての言葉が嘘であることを告げ、どん底に叩き落とす。橿原は絶望死してしまうのか?そして、新宮さんとの関係は修復できるのか――!?

この復讐にギャルはいらない 4巻

アベンジャーズの活動を通じ、これまで以上に距離を詰める橿原と新宮さん。ついには調査のために泊まりがけで東京旅行することになり…?しかし、真実に近づいたことで橿原は誰を信用して良いのか分からなくなってしまう。果たして、二人の復讐の行方は――!?陰キャ殺し屋×陽キャギャルの疑心暗鬼ラブコメ、完結です!

この復讐にギャルはいらない

梵字やクトゥルフや中島みゆきに詳しいオタクに優しいギャル #1巻応援

この復讐にギャルはいらない まの瀬
兎来栄寿
兎来栄寿

端的に言って、大好きです。 『顔がこの世に向いてない。』のまの瀬さんによる、2年ぶりの新刊。 こちらの単行本に帯を書いている桜井のりおさんが、先日『僕ヤバ』にて2023年始まって早々に今年の全ラブコメにおける最大級の衝撃では? というクラスのものを繰り出してきてしまったので大変に大変なんですが、少なくとも今年発売される「オタクに優しいギャル系ラブコメ」の中では飛び抜けて好きかもしれません。 メインストーリーとしては、幼い頃に両親を殺されて殺し屋として育てられた少年が、とある切っ掛けからクラスメイトのギャルと急接近するも彼女はもしかしたらファミリーが裏切り者の自分を殺すための刺客かもしれない、という警戒心を抱きながらも進展していくラブコメです。 ……なんですが、そこかしこの言動にマシンガンジャブからの千手観音かというくらい小ネタ・小ボケを盛り込んできて、独特の雰囲気を醸し出しています。 『名探偵コナン』、『ドラゴンボール』、『クレヨンしんちゃん』など国民的なマンガのネタはもとより、部屋番号が237なのを見て「不吉だな…」となるシーン(ROOM237)であったり、「M-1優勝コンビ」にまつわる天丼ツッコミであったり、合唱コンクールの課題曲がDA PUMPのif…(初出は2022年M-1よりずっと前)であるなど縦横無尽です。 個人的に特に好きなのは、レオポンと諏訪ちゃんの二人のJKによるJKらしからぬ応酬の数々。 「諏訪ちゃんのノート独特でさ  なんかほぼヴォイニッチ手稿」 と語られる名状しがたいノート。 背中に指で文字を書いて当てるゲームでの 「何て書いたか分かった?」 「キリーク(千手観音や阿弥陀如来を意味する梵字) 「正解!」 というSASUKEの新しいファイナルステージより高そうな難易度をあっさりクリアしていく様。 「織りなす布作戦(オペレーションウィービングクロース)!」 と題して 「縦の移動はあなた!」 「横の移動はあーし!」 と、ギャル言葉も忘れずにクレーンゲームを攻略していく図。2010年代でも中島みゆきさんの「糸」は度々いろんなCMに使われていたので、JKがギリギリ知っていてもおかしくはないという絶妙な匙加減。でもクトゥルフや梵字は説明がつかないですが、それがいい。 丁度、今日Twitterに投稿されてバズっていた4Pマンガが、本作の雰囲気を掴むのにはうってつけです。 https://twitter.com/manosejiro/status/1619181635429355520?s=46&t=ousazNCobpW3eJ58V_V4vQ JKとは本来縁遠いものを滑らかに語るJK、良いですよね。この小ネタ満載感は、小路啓之さんやTAGROさん、道満晴明さん辺りの作品が好きな方は大好きな雰囲気ではないでしょうか。 しかし、ただネタに走っているだけではなく、本筋のラブコメ部分の破壊力も高いのが本作です。 『顔がこの世に向いてない。』のときよりも絵の魅力が強くなっており、決してずば抜けた画力というわけではないのですがシーンによってヒロインのかわいさと魅力は天元突破。 また、殺し屋として孤独に生きてきて、今後も孤独に生きていくつもりだった主人公が天真爛漫なギャルによって絆されていく構図がいいです。それはまるで、根雪を解かす太陽のようで。主人公がひとりでダイナーに行ったときのエピソードなど、本当に大好き。 不思議な魅力の詰まった作品で、ラブコメ好きの方にはもちろんそうでない方にもお薦めしたいです。