あらすじ山に魅せられた少年はクライミングの聖地へ 実在の世界的クライマー・山野井泰史。高校卒業間もなく、単身渡米した彼は、憧れの地、ヨセミテ国立公園へと向かう。目指すは当時日本人では誰も成しえていなかった エル・キャピタンの単独登攀…… 約1000メートルの巨岩壁を越えられるか!? これは、世界の山々に挑む者たちが 憧憬と畏敬の念を抱いてやまない、実在の日本人クライマーの生き様に迫る 真実の物語である――――
登山家のアカデミー賞と言われるピオレドール賞の、ピオレドール生涯功労賞をアジア人として初めて受賞した登山家・山野井泰史さんの登山人生を描いた作品です。 登山マンガにハズレ無し。 近く、劇場版が放映される『神々の山嶺』を始め、『岳』や『孤高の人』など圧倒的な名作も枚挙に暇がありません。 同じ人間でありながら、極限の環境である山に挑む者たちのドラマにはいつも心が奮え、血が滾ります。 この作品がすごいのは、上記の作品のようなドラマが描かれるのですが、それが山野井さんが実際に経験したものであること。 中学生にして34箇所の打撲と裂傷を負い、親に命の危険があるからと反対されても「自分から登山を取ったら心が死ぬ」として頑として譲らず、「大人の登山クラブで基礎から学ぶ」ということを条件に、日本登攀クラブに入会してそのキャリアを始めていくという出だしです。 登山に命を賭ける人を見て、「なぜそんな危険に進んで身を晒すのか?」と理解できない人も一定数いると思います。しかし、本当に命を賭けても良いほど好きなものがある人にとっては、この気持も理解しやすいのではないでしょうか。 特に、登頂を完了した時に見える至高の景色と共に訪れる達成感は、その気持ちへの共感を掻き立ててくれます。常人の身体能力では無理なことは解っていますが、読むと自分でも指懸垂などで体を鍛えて岩壁に挑んでみたい、こんな景色を見てみたいという気持ちにさせられるくらい、読んでいて熱く掻き立ててくれる作品です。