あらすじあらゆるものから隔絶された存在である、人魚の汐莉。何者とも分かり合えない虚無感に苛まれる彼女を、唯一受け入れてくれたのが幼き日の比名子だった。生きる希望に満ちた彼女の輝きを失わないため、祈りを込め、汐莉はその血を分け与えた。それが比名子の、絶望そのものになるとも知らずに。
海辺に暮らす女子高生と、彼女を喰べたい人魚が出会う物語。グロそうな内容にも関わらず、流麗な絵が心地良い。 水面が煌き、纏わり付く水泡が美しい光景の中で、主人公は生きる気力が無い。それ故に人魚に食べられると分かっても、それを受け入れている。無力感と水の浮遊感が絶妙にリンクして、厭世的な気分を共有出来る。 そんな彼女を「喰べ頃」まで守るという人魚は、同じ高校の生徒となる。活きの良い状態にしたい人魚に健康を気遣われ、主人公は元気になるのか?そして食べられる時、まだ死を受け入れられるのか? この無気力な浮遊感に癒されながら、様々な謎が明かされる時を待ちたい。 (愛媛県伊予がモデルとの事ですが、同じ愛媛の『熱帯魚は雪に焦がれる』の様な美しい海辺の光景が見られます)