あらすじ死刑制度の問題点を描ききった『モリのアサガオ』で、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した郷田マモラが次に選んだテーマは、いよいよ今年2009年からスタートする≪裁判員制度≫。フリーターの相羽圭一が裁判員に選出され、4日間に及ぶ審理の果てに出した判決は?「漫画アクション」連載時、どんでん返しにつぐどんでん返しが大きな話題を読んだ本作は、気になる裁判員制度のことが詳細にわかるだけでなく、ミステリーとしても極上の作品になっています!
裁判員制度導入が話題になったころ、それを題材に扱っていたために興味をもった作品です。まずは、まだ制度としてスタートする前に漫画でシミュレーションするという試みに、相当下調べをしたのだろうなと感心。そして読み進めて感嘆したのが、決して多いとはいえないページ数で、よくこれだけ多くの登場人物の人間模様を入れ込んだものだ、ということ。簡単な絵にも関わらず、性格がにじみ出てくる人物描写が巧いですね。人任せの男や苦悩する弁護士、悪辣な隣人、揺れまくる主人公と強い意志を持ったヒロイン…、市民が参加する裁判の裏側で絡み合う人々の様々な思惑がよくわかる密度の濃い内容です。作中に登場する地獄図の説明コラムを見て著者が伊勢出身ということに気付いたのですが、この地獄図もイメージとして世界観によくマッチしていると思います。