あらすじ

イヤでまたらないJ支店への転勤だったが、そこで過ごした4年間が、矢口(高橋)の将来を大きく左右することになる。ある時、同僚が持っていたマンガ雑誌をむさぼるように読むうち、銀行員としての日々に追われる中で忘れかけていたかつての“夢”を再認識した矢口は、一作品を完成させ投稿するのだが、結果は「ボツ」…原稿は返却されてしまった。その後、夏休みを利用して上京した矢口が向かったのは、原稿をボツにした雑誌「ガロ」の出版社だった。そしてそこで矢口は、漫画家の水木しげると会えることになり…!?矢口高雄本人が描く自伝的エッセイ漫画、いよいよ完結です!!
9で割れ!!―昭和銀行田園支店 1巻

昭和33年4月、高校を卒業して昭和銀行に入行した矢口(高橋)は、銀行は閉店した後こそが戦場であることに衝撃を受ける。伝票の集計結果と現金残高が一致しなければ、一致するまでやり直すのはもちろんのこと、現金の過不足ともなれば、一円単位で原因を究明するのは当然であった。そして、同僚の当直中に起こった悲劇や、テレビ時代の到来を機に始まったテレビ積立てなど、矢口高雄本人が、高校卒業後から30歳でマンガ家としてデビューするまでの12年間の銀行員生活をふり返りながら描く、自伝的エッセイ漫画!

9で割れ!!―昭和銀行田園支店 2巻

行員数が支店長を含めて8名という小さなN支店に配属された矢口(高橋)は、様々な経験を経て、銀行員としての力量を着実に上げていった。そんなある日、矢口の母が、無理な農業仕事がたってか末期的な股関節炎で入院してしまう。医者に、ことによると片足の切断もあり得ると宣告された矢口は、不安をまぎらわすために釣りに出かけるが…。

9で割れ!!―昭和銀行田園支店 3巻

人口3万余のY市にある支店に転勤となった矢口(高橋)は、24歳になる寸前、2歳下の女性と若くして結婚した。銀行員としての仕事の合間をぬって、釣りや当時夢中になっていた油絵など、多忙ながらも充実した日々を送っていた。そして今年も鮎の解禁日が近付いてくる!矢口は、今年は鮎の「友釣り」をマスターすると息巻くのだが…!?

9で割れ!!―昭和銀行田園支店 4巻

イヤでまたらないJ支店への転勤だったが、そこで過ごした4年間が、矢口(高橋)の将来を大きく左右することになる。ある時、同僚が持っていたマンガ雑誌をむさぼるように読むうち、銀行員としての日々に追われる中で忘れかけていたかつての“夢”を再認識した矢口は、一作品を完成させ投稿するのだが、結果は「ボツ」…原稿は返却されてしまった。その後、夏休みを利用して上京した矢口が向かったのは、原稿をボツにした雑誌「ガロ」の出版社だった。そしてそこで矢口は、漫画家の水木しげると会えることになり…!?矢口高雄本人が描く自伝的エッセイ漫画、いよいよ完結です!!

9で割れ!!―昭和銀行田園支店

銀行員だった矢口高雄先生が漫画家になるまでの12年間

9で割れ!!―昭和銀行田園支店 矢口高雄
かしこ
かしこ

釣りキチ三平の矢口高雄先生は漫画家になる前に銀行員をしていたとは聞いたことありましたが、その当時を詳細に描いた自伝漫画があったとは…!!すこぶる面白かったです。 1巻。まず恩師から推されて銀行員になるって矢口先生はむちゃくちゃ優秀な学生だったんだろうな〜!と思いました。下宿しながら働いていた新人時代は銀行とはなんぞやのエピソードが中心ですが、この頃は何もかも手作業で大変ですね。宿直していた行員が殺された話はいきなりサスペンスが始まったかと思うくらい描写が怖かった…! 2巻。当時でも24歳での結婚は早かったらしいですね。早婚だった理由が「味噌が嫌いだから」というのはジョークだと思いますが、どうして味噌嫌いになったかの話が印象的でした。こういうちょっとしたエピソードでも秋田県の風土を感じます。この頃にハマった鮎釣りもその後に描かれる作品に欠かせない経験ですね。 3巻。徐々に子供の頃の夢だった漫画家になることを再び意識し始めます。転勤先の同僚女性が都会的な人で刺激を受けたのと、彼女の実家が本屋でガロを読ませてもらったことが、矢口先生の人生を変えていきます。こんなに白土三平をリスペクトしていたとは知りませんでした。 4巻。ガロに持ち込みをして水木しげるや池上遼一に会ったエピソードがとても貴重でした。憧れの白土先生ではなかったけど水木先生に会えて褒めてもらえたことも一つの転機になっている気がします。上司に漫画を描いていることを咎められたことがきっかけで本腰を入れて夢を追うことにしたとありましたが、デビューして真っ先に届いたのがその上司からのファンレターだったのは泣けますね。しかし何より銀行を辞めて漫画家を目指すことを承諾した奥さんが偉い!!当時の矢口先生は30歳でお子さんが2人いますからね。自分が奥さんだったら反対してしまいそう…。 こうして見ると30歳まで地元にいたことが矢口先生の作家性に繋がっているので、遅咲きのデビューではあったけど回り道ではなかったんじゃないかと思いました。希望していた本店勤務ができなかったけどその反動で趣味を充実させたし、人生って何がどうなるか分からないという面白みを教えてくれる素晴らしい作品でした。