あらすじラジオがつなぐ秘密の逃避行・第4巻、福島篇終局。逃亡者・瀬良不二夫は、伊丹洋子がかつて住み込んでいた風俗嬢の下宿先「娼婦の館」に身を隠す。不二夫は、そこで出会ったスミレが世話をする、無精者の弟・ジローに付き纏うヤクザとの関係を更生させるため、姉を妊娠させたと「嘘」をつく――。一方、警察は殺人犯逮捕のある手がかりを掴むことに。ひとつの虚言が招く最悪の展開。逃亡の行方は!?
殺人を犯したネットラジオの配信者フジオとそのファンの女の子ヨーコが出会い、ふたりで配信をしながら捜査から逃げるというバディロードムービー的な筋書きです。 フジオは孤独な男です。 芸人として成功できず、ネットラジオで承認欲求を満たし、自身の価値をギリギリのところで認めています。彼を評価し、孤独の境界に踏み止まらせているのは顔の見えないリスナーたちだけなのです。 ヨーコが彼のラジオで救われていたのも、フジオと同様に、自分が孤独だと感じていたからです。 互いの孤独を癒やすように共に居ることを選択するふたりの姿は、痛々しくもとても尊いものに感じられます。 皮肉なことにフジオは彼のリスナーたちと出会うことで、さまざまな出来ごとに見舞われ、時には追い詰められ、時には助けられ、運命に翻弄され、のっぴきならない状態に陥っていきます。 優れた物語は「次はどうなるんだろう」という気持ちがずっと持続するものだと思います。自分は一気に読んでしまいました。 フジオの罪の真相と、ヨーコとの孤独な旅路がどこに行き着くのか、ぜひとも見届けてほしいです。