女囚5046号、九条マリア(くじょう・まりあ)。殺人罪で20年の刑を受け、T刑務所に服役中の身ながら、月に一度、彼女は塀の外へ出る。法で裁けぬ者を始末するヒットウーマンとなって。そして、仕事を終えると塀の中へと戻ってくる。あたかもブーメランのように。伊沢広は、K県警南町署捜査課刑事部長にして、自分の立場を利用し、犯罪の参考人及び容疑者の女性に付け入り覚醒剤等により肉体関係を持つ。そのことにより死亡した女性は10人を下らない。K県警捜査室の内偵により、ほぼ事実と認められるが、伊沢自身、これまでに総監賞を10数回受けており、確たる証拠もなしに処分することもままならない。法で裁けぬ悪を滅ぼす、荊冠(けいかん)の聖母に外出許可が下る――!!
業田厳山は、その傲慢な態度で人気のあった霊能者だったが、超能力を否定した文化人が次々に事故死する事件が相次ぎ、それを自らの呪いであると発言したためテレビなどへの出演が減り、やがて世間から忘れ去られた。しかし、その業田が小さな道場を開き、悩みを持つ人達の口コミによって除霊を行っているという。聖水と称した幻覚剤入りの飲み物を与え、患者がトランス状態時に陥っている際に財産の内容を聞き出し、その後、財産に見合った祈祷料を請求。財産を失い10人以上の自殺者が出ていることから、九条マリアに3泊4日の外出許可が与えられる。同じ頃、マリアの息子・雅雄は、マリアに会えないことから登校拒否になっていた。登校拒否になったのは悪霊のためではないか、との助言を受けた雅雄を預かる伯父は、業田の元を訪れ……。女囚5046号・九条マリア、法で裁けぬ者を処刑するため塀の外へ、そして再び塀の中へ。あたかもブーメランのように。