『姉の友人』で一躍名を馳せたばったんさんの名作『かけおちガール』が、この度めでたく紙の書籍として発売されました。元々は電子雑誌となった『ハツキス』に掲載されていた作品で電子でしか読めなかったのですが、この機会に紙派の方にも読んでみて欲しい逸品です。 この作品に留まりませんが、ばったんさんの作品に登場するキャラクターは現実の人生で出会う人々のようなリアルさ・肉感があり、その営みに胸を刺されます。 本作では女子校時代に付き合っていたももとみどりを主軸に物語が描かれるのですが、自分の想いをあっさりと無碍にしたみどりに対する愛憎、そしてももからは見えなかったみどりが秘める真実など、現実に起こり得る当事者にしか解らない感情の発露や蓄積が極めて巧みに描かれます。 他者から見ると苛立つほど幸せに見えても、実は誰よりも暗い孤独の澱に沈んでいた……そんなことはままあるのが世界の現実です。 女性と女性という関係性といえばそうですし、女性が描く女性ならではのセンシティブなシーンも描かれるのですが、それ以上に人間と人間による深遠で切実なドラマには男女問わず没入してしまうことでしょう。 結局、絶望をもたらすのも希望を与えてくれるのも、人間なんですよね。嗚呼。
兎来栄寿
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