あらすじ月明かりが照らす深夜に「食の冒険」へとおもむく朔良(さくら)。父が残した一冊の手帖を携え、さまざまな店を巡る彼女が出会うお酒と食事の奥深い世界。そして、初めて知る父の面影――。原案は『阿修羅ガール』、『好き好き大好き超愛してる。』、『NECK』といった唯一無二の世界観で、読者を魅了する小説家の舞城王太郎。漫画は繊細なタッチに定評があり、グルメ漫画を中心に、作品を発表してきた奥西チエが担当。『孤独のグルメ』完結から4年。『週刊SPA!』が新たにおくる本格グルメ漫画!
素敵なお酒の飲み方を教えてくれる作品。 日常を洗い流すように飲み干すだけがお酒じゃなくて、誰かと楽しく騒がしく飲むだけがお酒じゃなくて、大切な宝物をそっと撫でるような静かなお酒がここにはありました。 朔良が深夜に1人で父の手帳に記された店を巡るのは、決して悲しさや寂しさ故のものではなく、父のことをもっと知りたいという気持ちからくるものなのかなと思いました。 故人と話すことは叶わないけれど、歩んできた道を振り返ることで見えるものがあるんだなと感じました。 亡くなった父の遺した手帳を辿るという、ある意味では後ろに進むような行為が朔良の血となり肉となる。 この物語の構造が何よりも素晴らしいなと思いました。 死者へ祈りを捧げられるのも、美味しいお酒と料理を楽しめるのも、生きているからこそできること。 今日のような寒い夜に、誰かを想いながら読みたくなる作品でした。