あらすじ担当からサイン会の話を持ちかけられるも、過去の苦い経験からあまり乗り気でない炎尾燃。だが、かつてネットオークションで自分のサインに10万円出したファンがいたことを思い出し、そんなファンに報いるべくこの話を了解する。しかし、当日集まったファンはごくわずかで…!?
自伝や実録漫画といわれると、はなから眉に唾をつけて読みます。どうせ嘘や誇張がいっぱい混ざってるんでしょ、だまされないぞ、という感じで。しかしこれが島本和彦の手によるものだと…。明らかに自分をモデルにした実録風漫画なのに「どこがホントのことなんだ?」と思ってしまう。逆説の美学を感じてしまいます。この「吼えペン」シリーズでは嘘キャラの立たせ方も秀逸で、もじった名前を付けて「え、あの人ってこんな人なの?」と思わせる、という仕掛けで押しまくってくる。例えば富士鷹ジュビロなんて、明らかにあの有名漫画家がモデル。で、フツーならそんな人のわけがないのに、まるで風貌どおりの極悪ピエロなんだといわんばかりの描写。うまいやり方もあったものです。で、3巻の最後にはその富士鷹と主人公の炎尾燃の合作漫画も収録されていて、これが真面目なんだかパロディーなんだか…。いやいや漫画家稼業がこんなハズはないぞ、なんて最後には思えなくなってしまいますよ、ホント。