「楽園」からの5冊目のpanpanya作品集。表題シリーズ全8本はじめ「いんちき日記術」「比較鳩学入門」「学習こたつ」「宿題のメカニズム」等、著者ならではの描写が輝く21篇。日記も併収。
作者のいつもの感じで架空の食べ物だと思ってたら、実録ルポで驚いた。虚構に実在感を与えるのが上手い人だが、表題作ではそれが逆転しているのが楽しい。
panpanyaさんの作品が面白いという情報はマンバで得ていたものの、どんな作風でどんな作品を描いているのは正直知らなかった。 なのである話として途中まで読んでた。デアゴスティーニで建てた家、絶妙にありそう。 緻密に描き込まれた背景とエッセイ漫画的な語り口が、明らかにない話を絶妙にある話にまで落とし込んでくる。 脳に直接作用して記憶を書き換えられてるような気持ちになった。かん水で鳩でっかくなるし関東ローム層の焼き芋美味しそうだし。原理としては合ってそうな気がする。騙されてる気もする。 グヤバノも架空のフルーツだろうにリアリティが凄いなと思ったらこれは実在するのか…。虚構に驚き真実に驚き、どっちみち凄い。
まずはじめに、panpanyaさんの作品を読んだことがないという方。この段落で一旦回れ右して、取り急ぎ今作ではなく、著者のページから過去作を手に取って見てください。個人的には「足摺り水族館」もしくは「蟹に誘われて」が入り口としては良いのでは無いかと思います。 panpanyaさんの作品は、一度見たら忘れられない圧倒的な書き込み量とその書き込みによって生み出される現実とも非現実とも付かない摩訶不思議な世界観が最大の魅力です。過去5冊の単行本ではその世界観を余すところなく展開していましたが、今作ではそこから1歩踏み出した感じがあります。 表題作「グヤバノ・ホリデー」は未知の果物"グヤバノ"との出会いから、それを追い求めてフィリピンまで赴き実食に至るまでのドキュメンタリー風の作品です。 この物語を読んだ時、非実在の存在を描きながら現実・非現実の境目が曖昧になるpanpanyaさんらしい作品なのかと思っていましたが、"グヤバノ"という単語を調べてみて、それが実在する果物と分かった瞬間、物語の見え方が大きく異なってきます。 この物語は、グヤバノを追い求めて海外まで行くという点を除けば、ほぼ全て現実に存在する物が描かれています。これまでのpanpanya作品では実在物と非実在物を織り交ぜて世界の境目が曖昧な作品を描いていましたが、今作では描かれているものは全て実在する、でも世界観は非現実的ないつものpanpanya世界。これは、panpanyaさんが自身の作家性をもって現実を飲み込もうとしている、私達はその過程に立ち会っている。そう思うのは考え過ぎでしょうか。いずれにせよ、panpanyaさんは過去作を含めて線で追っていくべき作家で、そして現在における到達点がこの「グヤバノ・ホリデー」ではないかと思います。
作者のいつもの感じで架空の食べ物だと思ってたら、実録ルポで驚いた。虚構に実在感を与えるのが上手い人だが、表題作ではそれが逆転しているのが楽しい。