あらすじ

札幌で雪枝とはぐれてしまった北。すすきののニュークラブで働く、いかつい見た目の女の子・マリアに拾われ、雪枝が見つかるまで家に身を寄せることに。容姿と裏腹にお人好しのマリアに元カノの面影を重ねてしまう。男女2人、一つ屋根の下。何も起こらない、わけもなく‥‥。
雪女と蟹を食う 1巻

金も行き場もない男・北は、自殺を図るが、どうしてもあと一歩が踏み出せずにいた。ある日、テレビのグルメ番組を観て、「人生最後の日は北海道で蟹を食べたい」と思い立ち、強盗を決意する。高級住宅に押し入り、人妻に金を要求するが、彼女の行動は、全く予期せぬものだった――。

雪女と蟹を食う 2巻

蟹を食べるため、車で北上する中、北は次第に雪枝に惹かれていく。恋慕と失意を抱きながら、福島へと辿り着く――。郡山の名産グルメや会津の観光名所と、福島の地を満喫しながらも、二人は次なる目的地を探すことに。しかし、雪枝の携帯にかかった一通の着信が、大きな波乱を巻き起こす‥‥!!

雪女と蟹を食う(3)

山形・銀山温泉を次なる目標に、体調を崩した雪枝を乗せて、車は走り出す。辿り着いた旅館で、労わる北の思惑とは裏腹に時と場所を問わず、キスもエッチなことも絶えず迫られ、試される理性‥‥! はたして、誘惑に打ち勝つことは出来るのか‥‥!? そして、雪枝の旅の本当の理由が、ついに明かされる。

雪女と蟹を食う(4)

雪枝が、“死ぬため”に蟹を食べる旅へとついて来たことを知った北は、出会った頃のように、彼女の真意が分からなくなっていた‥‥。二人は北海道へと向かうフェリーに乗り込むが、深夜の船上で、雪枝は姿を消してしまう‥‥! 新章、北海道編、開幕ーー。

雪女と蟹を食う(5)

札幌で雪枝とはぐれてしまった北。すすきののニュークラブで働く、いかつい見た目の女の子・マリアに拾われ、雪枝が見つかるまで家に身を寄せることに。容姿と裏腹にお人好しのマリアに元カノの面影を重ねてしまう。男女2人、一つ屋根の下。何も起こらない、わけもなく‥‥。

雪女と蟹を食う(6)

火事から救ったお礼にマリアは北に、一夜限りの“ニューマリア”を開業する。まっすぐに想いを告げる彼女に対し、北は自身の過去と犯した罪を打ち明けることを決意する。しかしマリアもまた、“人殺し”という大罪を抱えていた――!

雪女と蟹を食う(7)

札幌から旭川を北上し、ついに旅の最終地点である稚内に足を踏み入れる。命を断とうとする雪枝に反し、北はともに生きる道はないかと模索する。しかし、北の願いは届かず、旅と人生の終わりを意味する「蟹」を食べる時を迎えてしまう――!

雪女と蟹を食う(8)

雪枝の最後の願いを叶えるために、二人は宿を抜け出し、夜の海へと車を走らせる。彼女から明かされた旅の本当の目的は、旦那・雪淵一騎を日本一の小説家にするために、自身の命を犠牲にすることだった――! 命を断とうと、海へと歩み入っていく雪枝。北は後を追うが波にのまれ、彼女を救えぬまま、意識を手放してしまう‥‥。

雪女と蟹を食う 9巻

去年の夏の旅から半年後、北海道で籍を入れた二人は幸せに暮らしていた。ただ一つ、陽平には心残りがあった。それは痴漢の冤罪を信じてくれず、自分を置いて消えてしまった家族のこと。幼い頃の記憶を頼りに、家族を捜すため、そして新婚旅行の行き先として向かったのは沖縄!?

雪女と蟹を食う

三十路美女に転がされる楽しさと絶望のスパイスがいいバランス

雪女と蟹を食う Gino0808
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

例えば『からかい上手の高木さん』のアダルト版のような良さがある。 色気のあるタッチ、夏の暑さを感じさせる温度感、どこか涼し気な美女、手玉に取られてしまうちょっとダメな男性。 なんでだろう、吸い付くように読んでしまう。 余裕と少しの陰がある三十路美女にダメな自分の欲求を見透かされて気持ちよくコロコロ転がされたい男性諸君は読むべし。 主人公(男)が人生めちゃくちゃになって自殺する前に蟹食べたくなったけど金無くてセレブ妻脅したら逆にマウント取られてなぜか一緒に蟹食べに車で北海道に向かうちょっとエッチで闇が垣間見えるロードムービー的なお話。 女性が描いてそうで実は男性が描いてるのかなと思ったら、ちゃんと女性が描いているという部分になんでだか妙に興奮してしまう。 ここで出てくる美女は意識的にか、なんでも許してくれちゃう「嘘のような」母性を見せてくれるし、男性のすべてを見透かし幼稚な欲求さえも叶えてくれるミューズを演じてくれてるので、非常に性的に消費しやすい。 だからこそ、達観したような全く見えてこない本心の部分にやきもきしてしまうし、何が目的か分からないミステリアスさにもんもんとさせられるが、それも気づけば目の前の性欲にかき消されてしまう巧妙さもある。 この女の前だと男はみんな、なんだかよく分からないけど事態は進んでるし気持ちいいからいっか、みたいに思考をスポイルされてアホな感じになってしまう。 この美女は凄まじく出来た女なのだ。 果たしてこれは、上手く行ってない旦那への憂さ晴らしなのか、自分だけを見てくれる純情青年の新鮮さ、嬉しさから振り回しているのか、今後の展開で描かれていくかと思うと楽しみだ。 「幻想ですよ、三十路の女に貞操観念なんて・・」 序盤で事後に出るこのセリフのすごいのは、金の為に強盗した男が人妻と半ば無理矢理にセックスした罪悪感を(じゃあいいか、と)軽減させる謎の効果があることと、ここまで肝が座ってるこの女はなんだか普通じゃないぞ、思わせてくれてワクワクすることだ。 このあたりから毒のようにじわりじわりと効いてきて気づいたらいいように気持ちよくマウント取られて自分では舵を切れなくなってしまっている。 死ぬための旅だと忘れて読んでいてエッチなシーンでドキドキしながら感情移入していると、たまに旅の終わりの死に向き合ったときにとんでもなく気持ちが落ちるので、その感情の落差で頭がクラクラする。 しかしエッチなシーンではどうしても感情移入せざるを得ないので、引き込んで一緒に落とすというすごく上手な作り方だなーと思った。 この手法ってホラー映画でよくある、序盤で若い男女がエッチなことしてると殺人鬼に殺されるみたいなベタなあれと同じ効果なのかもしれない。 それにしても、こんだけ肉体的にも精神的にも良くしてもらったらそこらの男は簡単にコロっと好きになっちゃうわけで、でも相手には世間的に成功している立派な旦那がいるのに比べて自分は北海道にゴールして蟹食ったら自殺するわけで、そして好きになった美女は旦那のもとに帰ってしまうということを考えると、死んでも死にきれないというか、なんて残酷なんだ、と。 もう、恋と性と愛と性と嫉妬と絶望と憧憬と性がぐちゃぐちゃに混ざっていて混乱しまくりの楽しさがあります。