夢なし先生の進路指導

夢みた後の現実を描く

夢なし先生の進路指導 笠原真樹
六文銭
六文銭

これ高校の教科書にして欲しいと強く思ったくらい衝撃的でかつ素晴らしかったです。 作者が『群青戦記』の人とわかって『リビドーズ』に続き、作風の幅広さにびっくりした。 内容は進路指導で夢を追うことの現実を伝える主人公、通称夢なし先生。 彼と彼の教え子1人を中心に、その教え子が自身の希望する進路を選んだ先で起きる苦悩や葛藤を描いた内容。 教え子1人ずつエピソード的に紹介するオムニバス形式な感じ。 夢を追うことのリスク。 夢がかなう人の確率や他者事例を頭では理解しているつもりでも、どこか 「自分は絶対そうならない」 と思い込んで突き進み、結局自分もその他大勢だったり 周囲の期待や意見との折衷によって、結果捻じ曲げられた夢だったことに気づかず、本当に自分が大事にしていたもの何か?を見失ったり。 その手の、夢を追ったことで得た代償をリアリティたっぷりに描いてくれます。 大きな夢をもて、夢を諦めるな、なんて安易に言えなくなります。 本作の素晴らしい点は、仮に失敗したとしても夢なし先生の指導によって、きちんとその後の未来(現実)を描いていること。 夢見て失敗した後の悲惨さだけではなく、何度でもやり直せるという力強いメッセージを感じます。 夢がある人もない人も、本当に多くの、特に色んな可能性に溢れた若者に届いてほしい作品だと思います。

リビドーズ

性と愛と

リビドーズ 笠原真樹
六文銭
六文銭

広告で大きなイチ◯ツみたいなのがまわってきて、矢も盾もたまらず読んでしまった作品。 全7巻読んで、当初想定していた以上に壮大なテーマだったなというのが率直な感想。 作者が『群青戦記』の人だと読んでから気づき、妙に納得した。 さてその内容ですが、 「リビド」と呼ばれる謎のウィルス?みたいなものに感染すると、異性に性的興奮を覚えると自身の欲望をコントロールできずに襲いかかり、粘膜経由から相手にも感染させる。 特に男性の場合は、体が膨張し(要はアレのように)、肉体的にも強靭な感じになる。 主人公もひょんなことで、バイトによくくる風俗嬢から感染してしまうが、他のリビド感染者と異なり、自我が一定保てて、肉体的にも常に変化しているわけではなく、ある程度制御がきく状態。 幼馴染で長年の思い人であった初瀬が、リビド感染者に襲われそうになったところ、リビド感染によって手にした力で助けることから物語は進む。 主人公と同じようにリビドの能力はあるが自我が保てている人も現れ、その能力を使って革命を起こそうとする集団が現れたりします。 彼らから勧誘的に主人公の力を求めてきたり、ないしは上述のように特別な肉体であるから「リビド」の抗体をつくるため、人類存亡のために国家に狙われたりする。 このあたりはパニックホラー系やディストピア系な物語では醍醐味ですよね。 主人公は、初瀬さんへの思いを武器に闘うわけですが・・・ この思いというのが、ただの性的なものなのか愛なのか?そんなことを終始考えている。 性的興奮しなければ強くなれず、強くなければ守れない。 本人を前に欲情などしていいのか、など葛藤しているわけです。 彼女への思いはピュアゆえに、苦悩も大きい。 読み進めていくうちに、自分自身 性は汚いもので、愛は綺麗なものと思い込んでいたけど、そもそも性と愛は切っても切れないものではないのか? とか、色々考えてしまいました。 ただ、そんな小難しい話よりも、登場人物は良い味だしているし(初瀬さんは天然で可愛いし、クセのあるキャラたちは皆信念があって愛着もてる。AV監督の人とか)パニックホラー的な、パンデミックな状況下のバトル漫画として十分面白いので、この手のジャンルが好きな人にはオススメできる作品だと思います。 裏にありそうな、性と愛とかいう壮大なテーマはスパイス的に楽しんでいただければと。

夢なし先生の進路指導

「夢を諦めさせる」新しい教師像

夢なし先生の進路指導 笠原真樹
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

めちゃくちゃ面白いですねー! これは令和の新しい教師像とも言えるんじゃないでしょうか。 学校の先生といえば、「夢を持て」とか「諦めるな」とか「夢の力を信じろ」とか力強く生徒の背中を押すような熱い言葉をかけるのが一般的なイメージがあります。 でも、このマンガは一味違って、夢を見る残酷さ、そのリスクを先生が徹底的に調べ上げて、夢を否定してるとも取れるような手厳しいことを言ってくるんですね。 挙句の果てには「夢にはくれぐれも気をつけてください」、「夢は人を殺しかねない」と生徒に言う。 そして、この先生が何故こういう指導方法なのかというと、実は元キャリアコンサルタントなんですね。 だから生徒にとっては厳しいかもしれないけど、敢えて良い部分だけじゃなくて客観的な事実としての夢の危険性を伝えてたってことが分かるんです。 夢を追いかけるリスクを聞いても夢に突き進む生徒たちですが、一時的に望んだ仕事をできるようになっても仕事によっては数年後に心身ともにボロボロになってたりする。 そんなときにそっと会いに来て前向きに諦めることを教えてくれて、新しい道を一緒に探す手助けをする。 夢を諦める手助けをする教師って聞かないので新しいし、面倒見よくていいですよね! 「ビッコミ」でも読めますね! https://bigcomics.jp/series/a9c40aa96eed5/

リビドーズ

ヤンジャンの新連載でいま一番楽しみ

リビドーズ 笠原真樹
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

絵に見覚えあると思ったら「群青戦記」の人か! この新連載は、ちょっと面白そうな設定。 「その病気」に感染した状態で男の性器が興奮状態になってしまったら発症・変異してしまい、全身が勃起時のように血管が浮き出て膨張し近くにいる異性に襲い掛かるというおそろしい症状だ。 その病気は少しずつ社会に蔓延しつつある。 バイト先のコンビニに店長、常連客の風俗嬢、クラスメイト・・。 そして、主人公。 主人公は奇跡的に感染をコントロールできるのか、どうか。 今後の展開としてはゾンビ的なパンデミックパニックものの方向へ進むとは思うんだけど、主人公はある事情から性的なことに嫌悪感も抱いている。 もしかしたら、そこが鍵になってくるのかもしれない。 主人公は病気の力を利用し好きなあの子の救世主になることができるのか・・! この病気を抱えたまま、ヒロインとイイ感じになってもセックスはもちろん、キスすらできないジレンマと戦うことになるだろう。 感染が拡大し社会が崩壊したあと、グループに分かれ生活し始めた時に主人公は感染しながらも自我を保つ異質な存在として迫害されるのか、英雄視されるのか。 感染したと誰にも言えないときに、きっとあの親友が助けになるんだろう。 陸上をやっていた経験も生きるかもしれない。 どういう方向に展開していくのか楽しみでならない! 誰しもが内に抱えている性という怪物を本当に怪物として描くこの作品。 序盤で、日常の理不尽さ、どうしようもなさを丁寧に、リアルに描写することで巻き起こる異常事態がより際立って見えてくる。 ここ最近のヤングジャンプの新連載攻勢の中では一番期待している。