移民問題に揺れる欧州 ドイツに衝撃を与えた社会派コミック モザンビークからやってきた若者たちは、 欧州で何を見、何を感じたのか? 3人のストーリーが描く、移民問題の本質。 推薦 多和田葉子さん(作家) 「わたしはこれまで少なからず東ドイツなど社会主義圏を舞台にした物語を読んできた。 アフリカ文学やアメリカ黒人文学を読んで近しさを感じることも少なからずあった。 移民文学については、もう読み飽きたと思うことさえあった。 ところがこのグラフィックノベルはこれまで知らなかった入り口から、私の中にすっと入ってきた。 登場人物ひとりひとりにちゃんと体重があって、顔も身体も美化されていないのに目をひきつける。 社会主義の歴史は個人的な記憶のディテールでできているんだなと思う。 いつまでも同じページに留まりたくなるような愛おしい線の描く人間や事物。 誇張のない、シンプルで驚きに満ちたアイデアが至るところに満ちていて、ページをめくるのが楽しかった。」 ●内容紹介● ジョゼ・アントニオ・ムガンデ バジリオ・フェルナンド・マトラ アナベラ・ムバンゼ・ライ ●著者紹介● ビルギット・ヴァイエ 1969年ミュンヘン生まれ。ウガンダとケニアで育つ。コンスタンツとハンブルクで文学と歴史のマギスター(旧修士号)を取得後、2009年にハンブルグ大学応用科学科デザイン学部卒業。本作でマックス&モーリッツ賞最優秀ドイツ語コミック賞、ならびにベルトルト・ライビンガー財団出版助成を獲得。未邦訳の作品に、Ich weiß (2008)やIm Himmel ist Jahrmarkt (2013)などがある。 ●訳者紹介● 山口侑紀 一橋大学社会学部在学中にハイデルベルク大学哲学部に派遣留学。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了。
1980年代、内戦の続くモザンビークから東ドイツへ渡った3人の若者たちが主人公。 東ドイツで青春時代を過ごした経験がそれぞれの「故郷」との関係を変えることになる。 党に理想を抱く真面目なジョゼ 未来がないことを理解し遊びを大切にするバジリオ 残された家族のために働くアナベラ 本文によると、この3人は作者がインタビューを行った実在のドイツ移民たちを「結晶」したものなのだそう。 彼らの東ドイツ生活は、先進社会主義国の雰囲気・先のない単純労働・移民差別で窮屈なんだけれど、決してそれだけではなかったというのがとても印象的だった。 女の子と遊んだり、恋人に出会ったり、勉強を頑張ったり、映画・小説・ファッションを楽しんだりしっかり青春もしていた。 (東ドイツで出会った絵本や映画、アイスクリームのラベルなどが、フォトコラージュのように描かれるページがとても素敵) 鬱屈した遠い異国の地で、彼らなりに日々に楽しみを見出し生きている姿は読んでいてとても眩しい。 だからこそ、移民であるために訪れた残酷な青春の終わりには強い喪失感を覚えた。 それぞれが迎えたその後の人生は、日本でずっと暮らしている自分の想像も及ばない深い怒りと悲しみに満ちていて、彼らの感じた激しい想いが、ページにぶつけられたインクの色と形とリンクして訴えかけてくるのが壮絶。 故郷を離れたことがある人も、ない人も。 この本は故郷とは何かを見つめ直すきっかけになる本だと思います。
1980年代、内戦の続くモザンビークから東ドイツへ渡った3人の若者たちが主人公。 東ドイツで青春時代を過ごした経験がそれぞれの「故郷」との関係を変えることになる。 党に理想を抱く真面目なジョゼ 未来がないことを理解し遊びを大切にするバジリオ 残された家族のために働くアナベラ 本文によると、この3人は作者がインタビューを行った実在のドイツ移民たちを「結晶」したものなのだそう。 彼らの東ドイツ生活は、先進社会主義国の雰囲気・先のない単純労働・移民差別で窮屈なんだけれど、決してそれだけではなかったというのがとても印象的だった。 女の子と遊んだり、恋人に出会ったり、勉強を頑張ったり、映画・小説・ファッションを楽しんだりしっかり青春もしていた。 (東ドイツで出会った絵本や映画、アイスクリームのラベルなどが、フォトコラージュのように描かれるページがとても素敵) 鬱屈した遠い異国の地で、彼らなりに日々に楽しみを見出し生きている姿は読んでいてとても眩しい。 だからこそ、移民であるために訪れた残酷な青春の終わりには強い喪失感を覚えた。 それぞれが迎えたその後の人生は、日本でずっと暮らしている自分の想像も及ばない深い怒りと悲しみに満ちていて、彼らの感じた激しい想いが、ページにぶつけられたインクの色と形とリンクして訴えかけてくるのが壮絶。 故郷を離れたことがある人も、ない人も。 この本は故郷とは何かを見つめ直すきっかけになる本だと思います。