L.A.猫物語 the walking cat
となりの猫さん #1巻応援
L.A.猫物語 the walking cat noho
兎来栄寿
兎来栄寿
アニメ化も話題となっている『となりの妖怪さん』のnohoさんが『ねこぱんち』誌上で2018年から不定期連載されていた猫マンガが遂に1冊の本になりました。 1950年代のロサンゼルスのダウンタウンを舞台に、1匹の大きな猫を通してさまざまな人間模様を描いていく作品です。 「ブラシくん」「パンケーキちゃん」「ニッパー」「ウィリアム」「ヒッチコック」など、街の人々からは思い思いの名前で呼ばれている猫。『耳をすませば』などでも「ムーン」と呼ばれている猫が他の人には「おたま」「ムタ」などと別の名前で呼ばれるシーンがありましたが、動物が色んな人からたくさんの名前で呼ばれるのはあるあるですね。「あだ名が多いのは人気者の証拠」という話は人間にもありますが、呼び名が多いのは愛されている証拠でもありましょう。 本書の中では「探偵事務所のヒッチコック」と認識されているお話の占める割合が多いので便宜上ヒッチコックと呼びますが、猫ならではの気まぐれさでケーブルカーの中でも警察署でも教会でもどこへでも自由気ままに闊歩するヒッチコックは行く先々でたくさんの人々に出逢い、可愛がられます。 『となりの妖怪さん』でも見せるnohoさんならではの何とも言えない穏やかで優しい空気感の良さは本作でもたっぷり味わえます。その上、何せ主役が「猫」ですのでヒーリング効果は抜群です。 後半は少しサスペンス混じりのお話もあり緩急はありますが、全体を通して暖かさが沁みる物語たちです。 基本的な画力が高い上に、猫に対する解像度も高くある程度のリアルさを持った上でとてもかわいいという絶妙なバランスです。 猫好きの方はぜひ読んでみてください。
となりの妖怪さん
妖怪達の「自分探し」の物語
となりの妖怪さん noho
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
道を歩けば天狗と挨拶、友達の家では飼い猫が猫又に!クラスにも先生にも妖怪がいっぱい! ……この作品世界では、妖怪と人は価値観を共有し、一つの社会を構成する。新たな妖怪を受容する法整備もなされ、さらに人と妖怪が交わり、家族を成す事もある。 一方、しばし起こる、不可解で危険な災厄には、力のある者が対処し、その者を皆でサポートする。 日常から非常時まで、人も妖怪も隔てなく助け合い、笑い合う優しい世界線は「怪異物」作品の常識をあっさりと越えてくる。 妖怪達の産まれ方は様々。神に魂を吹き込まれたり、人の言霊が集まったり、彷徨う虚無が意識を持ったり……。 いつの間にか産まれた妖怪達は、存在理由に悩む。自分が何故生まれ、どう生きたいか、というところまで掘り下げて、大小様々な「自分探し」の物語が語られる。 人間だって、大体何となく、産まれてくる。自分探しに思い当たる人なら、妖怪達の悩み方に、思わず己を重ねてしまうだろう。 そして、迷いを経て辿り着く、妖怪達一人ひとりの晴れやかな決着を、周囲の人や妖怪と共に祝福する気持ちになれるのだ。 静岡県遠州地域の自然・風物と、妖怪の怖くない造形の、素朴なイラストレーションは、児童書の挿絵のような温かさ。ごく当たり前に互いに関わり、想いを寄せる妖怪達と人間達の優しい物語を、じんわりと味わいたい。