見川鯛山のプロフィール

見川 鯛山(みかわ たいざん、1916年11月22日 - 2005年8月5日)は、日本の医師、作家。本名は見川 泰山。栃木県安蘇郡植野村(現・佐野市)出身。

本日は休診
受け継がれるもの
本日は休診 石川サブロウ 見川鯛山
野愛
野愛
『本日も休診』が素晴らしかったのでこちらも読んでみました。 那須高原で小さな診療所を営む見川センセが主人公…といっても、今度は息子の見川鯛岳センセが主人公です。お父さんよりは腕に自信がありそうですが、しょっちゅう休診にしちゃうところやお人好しなところはお父さん譲りのようです。 那須の大自然のもと、図太く生と性を謳歌する人々の描写には相変わらず胸を打たれます。 しかし、変わらないものだけではないのが『本日は休診』の魅力です。 これは見川鯛山センセ亡き後の物語なのです。 今作の主人公である鯛岳センセも、お父さんと同じように愛され頼りにされています。それでも、父親のように信頼されているわけではないと思案するのです。それもそのはず、お父さんを訪ねて来る人や昔から知る人に囲まれて診療所を営んでいるのですから。 しかし、鯛岳センセはお父さんの名残りに甘えず鯛岳センセとして人々と向き合っています。 命と命がバトンを繋いで新たな生を紡いでいくのだ、というのが『本日は休診』のテーマなのかなと感じました。馬の出産に立ち会うことになったのも、鯛岳センセだったからだと思います。 変わらないようでいて、変わりゆく新しい時代を感じさせるような作品でした。
本日も休診
人間賛歌
本日も休診 石川サブロウ 見川鯛山
野愛
野愛
那須の田舎町で生きる人々の日常を、小さな診療所を営む見川センセの視点で描いた短編集。 郷愁を誘う美しい大自然と、とぼけた表情の人間味あふれる人物描写から心温まる作品かと思って読んでみたところ、良い意味で裏切られました。 あくまでも那須の田舎町の中だけで、見川センセの見える範囲で物語が展開していきます。短い物語の中、登場人物は見川センセと一瞬心を通わせても、町から去ってしまえばその後のことは誰も知らないのです。 人は自分の見える範囲のことしかわからない。少しだけ思いを馳せて、後は忘れてしまうしかない。 その無力さとやるせなさを嘲笑うことも慈しむこともせず、粛々と移ろう那須の四季の鮮やかさ。 ただ漠然と、生きるってこういうだよなあという感想を抱きました。 美しい四季に目もくれず、メランコリーに浸ることもなく、性を貪りその日を暮らすこと。その強さ、尊さに心が震えます。 泣くほど悲しいとか感動するとかそういうお話がある訳ではないのです。艶っぽいお話も多いですし、ちょっと笑えるような場面もあります。 この作品に描かれているのは間違いなく生身の人間です。素手転の、丸腰の人生です。 読んだら間違いなく、生きること死ぬことに思いを馳せるはずです。
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