同人活動というのは創作の楽しさという光の面と、人間関係の煩わしさという闇の面があると思っていて、 このアンソロの中だと、つつい(筒井いつき)先生の「さよなら私の星」という収録作がその闇の面を見事に描いていたなあと思いました。 他人を観察して、他人の喜ばれる感想を言い、必死に界隈でのコミュニケーションに奔走するミシシッピ(HN)……こういう同人女めちゃくちゃいそ〜!!!!そして最後は自分の本は読んでもらえず関係が途切れるところまで最高。 絵はかなり粗かったけど視点が独特で、だからこそつつい先生はプロでやられているんだなと思いました。 ヨルモ(高瀬わか)先生の作品は構成が見事。絵も可愛いし短いページ数ながらしっかり満足させられる完成度の高い作品でした。 散田島子先生は読切のダークな作風ではなく、最近の日常系というかポップな作風でした。 アンソロってあまり買わないんですが、色んな作家の同テーマの短編が読めるのはいいですね。
百合思考の人たちの事を指す名詞って何かあるんでしょうか、普通に「百合好き」でいいのかな… 本作は一迅社の代表的百合専門誌、「コミック百合姫」作家陣によるアンソロ。 「マッチングアプリ百合アンソロジー」も素敵でしたがこちらもどうしてなかなか。 ただし同人あるあるがありまくりなので「コミケって美味しいの」系の人には少し解りづらいやもしれません。 惜しむらくは、どうしても最初の3本ぐらいが強すぎて後半との実力差を感じがち(失礼に聞こえたらすみません)なのが一迅社のアンソロ…という… あ、でも好みの問題なので個人の感想です! 私はミノちゃんが好き。
終末世界は「二人」の関係を強化する。 多くの人が死に絶えたり、滅亡が身近にあったりすれば、どうしても隣の人が大切になる。人は一人でも生きていけるが、会話をする相手がいて初めて心が動く。二人という最小単位から「物語」が生まれる。 描かれるのは、死の影が濃い終末世界。何故人は生きて、ただ意味もなく死んでいくのか……そんな思考に陥りやすい状況だが、様々に生きる女性二人の物語達はとても自由だ。それは「百合」という枠組が「生殖」や「社会秩序」という枷から自由だからかもしれない。 「百合」は困難と絶望の終末世界を自由にする。 ●『introduction』(しろし先生)…地上採掘団に加わりながら本を求めて外に出たい女性と、彼女を見つめる女性。 ●『海は何色』(結川カズノ先生)…外の世界の海を夢見る管理官は無気力な女給の秘密に触れる。 ●『SPUTNIK』(吐兎モノロブ先生)…遺伝子操作で生み出された新人類の二人はロストテクノロジーを求めて荒野を駆ける。 ●『Touch me if you can』(田口囁一先生)…一人生き残った少女と都市管理AIと、発見してしまったセクサロイドのボディ。 ●『卵の殻を破らねば』(岡ぱや先生)…学園都市に暮らす優秀な二人は、優秀すぎた故にある真実を見てしまう。 ●『チュウ虎シャングリラ』(くわばらたもつ先生)…汚染が広がる世界で敵対する二つのグループ。代表二人の決闘に皆沸き立つが……。 ●『トワイライトにおやすみ』(tsuke先生)…永い時を生き、信仰を集める聖女は、自分に好意を寄せる少女にあるお願いをする。
『2DK、Gペン、目覚まし時計。』の大沢やよい先生が描かれているカバーイラストで、既に作業中のだらしなさやむさ苦しさとそこに咲く百合のニュアンスにむせるのです。 続く伊月クロ先生の巻頭イラストはストーリー性が強く、そこに込められた複数の物語を読み解こうと懸命になるともう何分経ってんだよ。 ●『私を推してよ日菜子さん!』くもすずめ先生の絵いいなぁ。男装コスの女子とメガネ絵師女子の力関係が意外そうでしっくり来る。前日にコピー本作るのはそんなに良くあるのか?作り方のリアリティよ。 ●『ウェルダンは待てない』よく聞くアフター焼肉。一瞬本当に百合?って思うけどコロッと騙された。ヨルモ先生お話上手い。『神絵師JKとOL腐女子』的なファンと先生の関係好きな方に。 ●『逆カプ地雷』ゆあま先生の、コメディタッチな同人作家同士百合。解釈違いで喧嘩するオタカップルってありそうで無かった?(かずまこを先生の『楽園まで、あと…』とか)心の底で通じ合うソウルメイトな二人は尊い。 ●『フソクフリ』めざし先生、絵は可愛いのに人物造形がエグい。目立ちたがりでかまってちゃんでウザい同人作家像は作家でなくても心に痛い。本当にダメな人にこそ、救いは欲しいですよねぇ。 ●『隣サークル主が元カノだったのですが…』好き合っていたのに別れた二人は同人作家同士として再開。二人の微妙に愛着が残っている描写、明るく描いているのにキュッと心を掴まれて、雨水汐先生の絵のタッチと相まって優しく心に残る一品。 ●『お嬢様、同人デビューです!』同人界隈にお嬢様をぶつけてきて、最後まで違和感ありまくりでそれが面白い!お嬢様は金銭感覚以外はすごく真っ当で愛せる存在……散田島子先生の発想力強い。 ●『さよなら私の星』ここで百合界のエグさ担当つつい先生。同人界隈で人付き合いをソツなくこなす人が、才能と無邪気さを併せ持った人と出会って自分の本質を突きつけられる、その抉り方がやはりエグくて堪らない。 ●『すきだから』最後は桐山はるか先生の美麗で愛らしい絵で綴られる、オタカップルの日常。〇〇に出てくるご飯再現!とか素敵すぎる。積み重ねと、変わらないもの。二人でいることが羨ましくなる。 ……とまぁ各作品の感想も長くなる程、どれ一つとして同じものは無いし、様々な物を感じられる充実した一冊でした。
ここ数年、百合姫から何冊も百合アンソロジーが出版されましたが、この「アイドル百合」アンソロ、強度が段違いだと感じました。 アイドルですので顔も衣装も力入りまくり。見目麗しき女の子達の物語は、漫画にピッタリ! 芸能人ならではの、ステージへの思いや高い意識、仲間との意思疎通やすれ違い。またファンとの交流やそこを越えていく想い……コメディもありつつ、最終的に心高鳴る物語のオンパレード。 これこそハズレ無しのアンソロです! ♡♡♡♡♡ ●ポニーテールと青い空(坂城先生)/背中を追い続けたメンバーが、卒業する。 ●キミイロスターチス(ウミノモクズ先生)/新人アイドルとマネージャーは、幼馴染。 ●貴方のとなり(嶋水エケ先生)/コンビ売りの二人。でも私はあんた嫌い。 ●出席番号1番(柚原もけ先生)/滅多に登校しないクラスメートがアイドルだと知った。 ●手のひらのしるし(山田あこ先生)/新人アイドル、憧れのアイドルに告白!? ●アイドル“失格”(KOUGI先生)/いつも客席にいるあの子がいない… ●My Flower…(黄井ぴかち先生)/愛想いっぱい×毒舌系アイドルユニットの関係。 ●百合営業って呼ばないで!(辻柚那先生)/メンバー皆んなと仲良しアイドルに、ファンの愛ある「百合営業」コール! ●遠くて近いものたち(くもすずめ先生)/元アイドル、トップアイドルの幼馴染と同棲中。 ●Yovr York(きぃやん先生)お人好しアイドルに絡む捻くれアイドル。 ●となりのぶきっちょ(上林眞先生)/うまくいかないアイドルは同居もうまくいかない。
①お酒アンソロながら全て「宅飲み」である点に注目。2020年5月刊行故の配慮? ② 全ての作品で「お酒を飲む→心情を吐露する」という行為に焦点を当てている。 ③ アルコールに乗せて吐露した切なさの分だけ、熱い百合にクラクラする〜! --お暇なら読んでね-- ●あまほろり(葵季むつみ先生)/初めての酒は4歳上の先輩と宅飲み。酒の力で告白だ! ●お酒の味より甘いもの(樫風先生)/モデルの彼女は酒の苦手な私に酒を教えようとする。飲ませ方! ●今夜はアルコールパワー頼りで(もずくず先生)/バイトの先輩後輩で歓迎会宅飲み。後輩はコミュ障を克服したい! ●オフ宅(のやま先生)/初めて会うネトゲの相方と宅飲み。情けなさも吐露し合えば、新たな関係がそこに。 ●酔って、糸燃る。(タツノコッソ先生)/ちょっと差のついてしまった幼馴染みとの宅飲み。思わず思いを漏らしてしまう。 ●再愛(くうねりん先生)/高校卒業以来7年ぶりの再会。宅飲みで寝てしまった相手に襲うぞーと言いながら毛布をかけるが… ●三人寄れば文殊の知恵(焼肉定食先生)/高校時代の三人組で宅飲みしてたら、朝起きると全員裸に。一体何が?
①アルコールが登場するアンソロジーはシチュエーションが意外と多様。 ② 大人ならではの長年募らせた恋・頑なに拗れた心をアルコールで動かす! ③酒でタガが外れる感じが分かる〜と思いながらも、エモい恋の物語が羨ましい。 --お暇なら読んでね-- ……と言いつつ梅酒の話のほんわかさが好き。 ●頂けない人(2C=がろあ先生)/バーでいつも違う女を落とす女と、それを見ているバーテンの女。 ●今夜はほろ酔いで(よしのかや先生)/昔馴染みと三人で宅飲み。一人帰って好きだった人と二人きり。 ●同窓会はから騒ぎ!?(後藤悠希先生)/同窓会で彼女と仲直りしたい…からの何故か彼女と飲み勝負。賭けるのは? ●浮気(もちオーレ先生)/酷い彼女に家に束縛される女はパート先の先輩に飲みに誘われる。優しい先輩に… ●貴方にスキを与えたら(ちこれ先生)/10年近い片思いに今日こそケリを。私は酒に弱い女…のふり。 ●たすけて!お酒初心者です!(樫風先生)/コンビニバイトの先輩に、お酒を教わりたい大学生。初心者向けの酒は進む。 ●お酒のチカラは偉大です(雪尾ユキ先生)/小さい頃からずーっと一緒の幼馴染みと、20歳で初めてのお酒を一緒に。 ●エンジェルキス・イン・ザ・ダーク(よぬりめ先生)/大学生、見知らぬ泥酔女を介抱する。そんなになるまで何で飲んだの? ●五月のこと(三田織先生)/同居する二人は、一緒に梅酒をつくってもう三年。梅酒の飲み頃は一年後。その時… ●ショコラ(今井先生)/高校の時、リキュール入りのチョコを食べた。いつか大人の味が分かるかな…そしてその時隣には?
漫画家の先生方がそれぞれに経験した?のであろう、 クソ編集者に作品を改悪された話や、 ダメ編集者に才能や人生を潰されかけたかもしれない話や、 ヘタレ編集者に無理無駄無意味な仕事をさせられた話や、 ド外道編集者に人格まで否定されたりした話や、 それらをあくまでも「フィクション」として ギャグ漫画に仕立てているアンソロジー集。 かつての漫画家漫画といえば、締め切りを守らない漫画家に 編集者が振り回されるとかの漫画が多かった印象がある。 だが今では、ダメ編集者に漫画家のほうが振り回される漫画が 多いような印象もうける。 そして、そっちのほうが漫画界の現実っぽい印象を受けた。 だとしたら漫画界ってなんて腐った世界なんだろう、 と思ってしまう。 だがこうしてこんな漫画が出版されているということは、 漫画家の先生方にしろ編集者の方にしろ、 こういった出来事をネタにして笑い話にするくらいの 度量があることの証明でもあるかな、 とも考えることもできるし、そうであるのなら救われる。 その時にはシャレにならない話だったかもしれないが、 時が過ぎれば笑い話になった、というのなら。 しかし中には、永遠に笑い話になんか出来ねーよ、 という漫画家の先生もいそうで、そう考えると怖い。
『アークナイツ』、久しぶりにハマったソーシャルゲームです。普段アンソロジーコミックなんていうのもあまり買わないのですがこれは読みたかった。なぜなら『アークナイツ』、やってはいるけどよう分かっとらんから…。 これは自分のプレイスタイルがよくないのですが、ゲームの性質上、自分が使っていないキャラのことがイマイチピンとこないわけです。基地でタッチしたときの台詞しか知らなかったり、なんなら誰の台詞なのか未だに分かってないキャラ居る。 そしてこのゲーム、とにかく説明がふんわりしている(個人の感想)ので、アークナイツ世界のことを知ろうと思うとキャラのボイスや設定資料を全部読み解いていく必要があるという…。 そんなわけで結構プレイしてるけど一向に手持ちの情報量が増えてこんな…みたいなことが僕には起きてたのでこのアンソロはありがたかったです。 オペレーターそれぞれのバックグラウンドや関係性、日常の所作が描かれているので「なるほどこういうヤツだったのか!」と得心できるはず。 読んだらどのキャラもかわいいし、ゲームでも育ててみるかという気持ちになるんじゃないでしょうか。とはいえやっぱり贔屓しちゃうメンバーも居たりして…自分の場合はペンギン急便です。推しの魅力を再確認しました。 アークナイツの世界とキャラクターの解像度がグンと上がる副読本だと思います。
某レポ漫画で一躍有名になった「レズ風俗」、そこで働く女の子や客として来る女の子たちの話です。 基本的にほかの百合アンソロジーよりも肌色率高め、女体の触れ合いが大好きな方は絶対買いましょう。男性向けエロ漫画のレズものほどの生々しさはなく、しかしプレイ内容はしっかりと描かれているので非常にえっち、とても良いです。 レズ風俗アンソロジー2冊目(リピーター)(このタイトルつけた人、天才)につながる話もあり、あわせて購入することをおすすめします。 ななつ藤先生「いちばんのひと」※1冊目収録 ナンバーワンのリカコと、傷心を忘れさせてほしくてレズ風俗を利用するアキナの話。1冊目の中では行為をしっかり描いていてと~ってもえっちでした! 二人がベッドの上で激しく快楽を求める様、最高です。 ちなみに2冊目での「にばんめのひと」ではさらにえっちさが増しています あとがきの岩見樹代子先生の「こんなタイトルの本買う人がエロいの求めてない訳ないだろ」、まさにそのとおりです。ありがとうございました。
同人活動というのは創作の楽しさという光の面と、人間関係の煩わしさという闇の面があると思っていて、 このアンソロの中だと、つつい(筒井いつき)先生の「さよなら私の星」という収録作がその闇の面を見事に描いていたなあと思いました。 他人を観察して、他人の喜ばれる感想を言い、必死に界隈でのコミュニケーションに奔走するミシシッピ(HN)……こういう同人女めちゃくちゃいそ〜!!!!そして最後は自分の本は読んでもらえず関係が途切れるところまで最高。 絵はかなり粗かったけど視点が独特で、だからこそつつい先生はプロでやられているんだなと思いました。 ヨルモ(高瀬わか)先生の作品は構成が見事。絵も可愛いし短いページ数ながらしっかり満足させられる完成度の高い作品でした。 散田島子先生は読切のダークな作風ではなく、最近の日常系というかポップな作風でした。 アンソロってあまり買わないんですが、色んな作家の同テーマの短編が読めるのはいいですね。