ノブナガン
偉人の力で怪獣と戦うジュブナイル・ビルドゥングス・SFアクション
ノブナガン 久正人
ANAGUMA
ANAGUMA
主人公のしおちゃんは女子高生。織田信長の偉人遺伝子が宿り「ノブナガン」として宇宙怪獣から世界を救う戦いに巻き込まれていくのですが、JKでミリオタで作戦参謀まで務めるっていうギャップが効いてます。 久正人作品らしくアクションのかっこよさ、偉人の逸話や能力を使った戦闘のギミック、怪獣のディティールや掃討作戦のカタルシスは文句なく最高です。久正人×宇宙怪獣の組み合わせに間違いがあるわけがない…。 『ノブナガン』がとりわけ魅力的だなと思うのは、しおちゃんの成長を描くビルドゥングスロマンでもある点でしょうか。 (甘酸っぱいラブロマンスもあるぞ!) 人付き合いが苦手で「オタク」として孤立しがちな彼女に手を差し伸べる親友にしてヒロイン、浅尾さんとの関係は読んでいるこちらが恥ずかしくなるほどにかわいらしく、そして美しいものです。 しおちゃんは浅尾さんのために銃を取り、やがて仲間と手を取り合うことを学び、最後には全人類のため、愛する人とともに戦います。 ひとりだったしおちゃんの世界が広がっていく、そのキッカケになるのは他ならぬ浅尾さんなのです。 自分はこの作品、かなり正統派のセカイ系マンガなのでは?と読んでいたのですが、壮大なストーリーの中心には必ずしおちゃんと浅尾さんの物語が据えられていたからだろうと思います。 特に終盤、進化侵略体との決戦が近づき戦闘がスケールアップしていくのと対照に、決着へ突っ走るための力強いエンジンとして彼女たちのミクロな関係性が描写されていくのは圧巻の快感があります。 パワフルなストーリーと巨大な感情が全6巻のなかにギッチリ詰め込まれてます。ボリュームたっぷりの一作、ぜひ読んでみてほしいです。
全時空選抜最弱最底辺決定戦
「最弱」を競うために異世界転生!
全時空選抜最弱最底辺決定戦 久正人 KRSG
ANAGUMA
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久正人先生初の原作担当マンガということでドキドキしながら読みましたが…超面白い! 絵のテイストはぜんぜん違うのにちゃんと久マンガ独特のケレン味とリズムが息づいており、新鮮な久正人体験が出来る作品です。 久先生のネームも収録されてるのでKRSG先生の作画と比べられるのも楽しい。 あらゆる世界から最弱キャラクターを集めて時空イチのクソ雑魚を決める戦いに巻き込まれた人間代表ヒトムくんが雑魚トップ(ワースト?)5のメンバーとしてサバイバルしていくお話。 出てくるキャラもギリギリを攻めてて、趣味が悪すぎる『月光条例』みたいな感じですが、「弱いこと」が生む悲哀のドラマの描き方がたまらなく切なく、俺TUEE作品への単純なアンチテーゼに終わらない深みがあります。 みんな雑魚キャラなので基本どうしようもない連中なんですが、彼らがいじらしく生き抜こうとするサマが否応なしに泣けてくる…。 クソ雑魚としての矜持が輝くのをもっと見たい。 弱いからこそ、みっともないからこそ、彼らを愛せずにはいられなくなります。最弱だろうと生きてていいんだよ…!! とりわけ某宇宙戦争から出てきたような戦闘ロボKが自分のショボさに向き合ったときに見せる表情が自分の1巻のピークでした。 この顔が描けるのはすごいよ…。