スネに傷があるような囚人たちが、年に1度の「おせち料理」をかけて自慢の飯バナをする。 そして、一番美味しそうな話をした人が、他の人のおせち料理を1つもらえるという飯バナバトル漫画。 設定がとにかく面白い。 まず、囚人というところ。 本作にも記載あるが、とにかく彼らは食事以外に楽しみがない。 別に、刑務所の料理が特段美味しいわけでもなく、なんなら白米100%ではなく麦が入ったり、貧相なものだったりする。 そんな極限状態で、昔シャバで食べ、塀の中ではなかなか食べれない料理を情感たっぷりに伝える様が、滑稽だったりする。 そして、その語る料理が、ありふれた平凡な料理なのに、心ときめく様が非常に共感できる。 たぶん、地球最後の日に食べたい料理は? と言われて、きっと多くの人が馴染みのあるものを選択すると思うが、それに近しい感じ。 読んでて、あーこういうのでいいんだよって気分になる。 何より男くさい感じが、読んでて惹かれる。 ご飯というより、飯!って感じ。 グルメ漫画の巨匠と呼ばれるだけのパワーある作品です。
タワマン文学なるものが、まことしやかに囁かれている昨今。 つまり、人より良い暮らしを演じる(もしくは目指す)ために、色々犠牲になって自分らしさを失っている人を面白おかしく描いたものだが(たぶん)、本作はその真逆をいっている感じで、たいへん自分好みでした。 フリーターといえど高収入な方も登場しますが、いずれにせよ、自分の中の価値を犠牲にしたり、誰かと比較して優劣つけたりなんてせず、たんたんと自分の好きなことを好きなだけして、自由に生活しているさまは読んでいて、学ぶことが多かった。 「〇〇じゃなきゃダメ」 と、〇〇が世間一般の評価だったり、多くの人がその道を通るやり方だったり、いつの間にかそういうもので凝り固まっていた感覚を再認識しました。 本作に出てくる勝ち組フリーターの方のように、もう少し肩の力を抜いていいんだ、それでも生活できるんだと教えてくれます。 個人的に洞窟おじさんの話が、生い立ちが凄まじいのですが(13歳で家出し43年間も山の中で生活した人)その後のエピソード含めて好きですね。
重要なのは手段ではなくて行動するかどうかという事です。 この漫画ではフリーターでもお金持ちになる方法をおもしろく描いています。 でも手段なんてググれば出てくるのだけど、誰もやらないから行動した人が特別な存在になる。 転売なんて超余裕よ。誰でもできて稼げる。 でもやらないのは何か後めたい気持ちになる。 周りの人間の目を気にしているようじゃ勝ち組になれんね。知らんけど。
ずっと読みたかったんですが紙版しかなくて手に入らなかったんですよ〜!突然の電子書籍化は定額制夫のこづかい万歳きっかけで踊るさんま御殿に出演して世間での知名度が爆上がりしたからなんでしょうか?笑。なんにせよありがたい!! 2006年に出版されたものなので内容に古さは感じましたが、フリーターで財を成す人は何かしらの能力に長けてることがよく分かりました。でも自分の人生を思いっきり楽しむことによってそれがお金になるって目から鱗の発想ですね! しかしこの時点で吉本浩二先生は保険証も持っていなかったのには驚きでした。それが今や踊るヒット賞も獲られる人気作家ですし、素敵なご家庭もあるし、誰よりも夢がある人生を送っているのは吉本先生なんじゃないかな〜と思いました。
吉本浩二作品ではお馴染みの、私小説とインタビューを混ぜたようなスタイルは、この作品から始まったそうです。漫画家を続けるか辞めるか迷っていた時期の葛藤を描いた「自伝マンガ」としての一面を持っている作品。 世の中の普通から外れた、個性の強い7人のフリーターたちとの出会いに影響され、終盤で吉本先生はあることを決意します。それは次作の「日本をゆっくり走ってみたよ」に繋がっていきます。この作品における出会いが大きな転機となってることを考えると、マストで読むべき作品なのですが、しかし残念ながら電子書籍化されていない為、読むには古本屋などで手に入れるしかないです。※ 後に「ブラックジャック創作秘話」で輝かしい賞を取るとは思えないくらいのダメっぷりが描かれてますが、そんな吉本先生を支えていた大西祥平さんの功績というのめちゃくちゃ大きかったんだなあというのを読んでいて感じました。 ※追記: 2022年12月に電子書籍化
今まで食べた中で一番うまい飯の話を語り、思わず唾を飲みこんだ人が多ければ多いほど勝ち。 今そこに飯があるわけじゃないからこそ面白い、それを漫画でやるのがこれまた面白い。 落語とか怪談とか民話とか、語りの良さってやっぱり語りにあると思うんです。語られてる事象や世界はそこに存在しなくて、でも語り口であったり表情だったりがその世界に引き入れてくれる。想像の余地があるからこそ面白い。 漫画は絵と文字だからある意味想像の余地がない…美味しそうな料理も、それを食べたときの表情も、見た瞬間にわかる。 でも、味は想像するしかないんですよねえ…。 想像の余地がないって言ったけど、いっちばん知りたくて知りたくて仕方ないところだけ想像するしかないっていうのがたまらなく面白い。 さらに、語りにおいて重要な声も聞くことができない。唾を飲みこむ音ももちろん聞こえない。 凄いなあ。漫画的面白さ詰め込んでるなあ。 料理における味、語りにおける音、この2つがわからないから余計に面白いんだなあ…。 なんてことを考えてもう一周読んだら面白かったです。漫画って面白いですね。
スネに傷があるような囚人たちが、年に1度の「おせち料理」をかけて自慢の飯バナをする。 そして、一番美味しそうな話をした人が、他の人のおせち料理を1つもらえるという飯バナバトル漫画。 設定がとにかく面白い。 まず、囚人というところ。 本作にも記載あるが、とにかく彼らは食事以外に楽しみがない。 別に、刑務所の料理が特段美味しいわけでもなく、なんなら白米100%ではなく麦が入ったり、貧相なものだったりする。 そんな極限状態で、昔シャバで食べ、塀の中ではなかなか食べれない料理を情感たっぷりに伝える様が、滑稽だったりする。 そして、その語る料理が、ありふれた平凡な料理なのに、心ときめく様が非常に共感できる。 たぶん、地球最後の日に食べたい料理は? と言われて、きっと多くの人が馴染みのあるものを選択すると思うが、それに近しい感じ。 読んでて、あーこういうのでいいんだよって気分になる。 何より男くさい感じが、読んでて惹かれる。 ご飯というより、飯!って感じ。 グルメ漫画の巨匠と呼ばれるだけのパワーある作品です。