ガレキ!-造形乙女の放課後-

ガレキとは文字通り命を削って創るもの #1巻応援

ガレキ!-造形乙女の放課後- ヨゲンメ
兎来栄寿
兎来栄寿

古くは島本和彦さんの『ガレキの翔』から、最近では『となりのフィギュア原型師』など実は良作が多い造形ジャンルのマンガ。 本日発売したこの『ガレキ!-造形乙女の放課後-』も、そこに名を連ねるべき名作です。フィギュアとガレージキット、何が違うのか判らない。そんな人こそ、このマンガを読むと楽しめることでしょう。知らない世界を知ることは楽しいものです。 本作の主人公である、うどん屋の娘の真白もフィギュアのことなどまったく知らなかったのですが、ガレージキットを自作しワンフェスに出展しているクラスメイトの雛瑚と出逢ったことで、未知の世界へと入門していきます。 真白の性格がとても良く、ややもすれば否定的になられてもおかしくない雛瑚の趣味に対して、優しく積極的な理解を示す姿勢を見せてくれます。何なら創作元のアニメも一晩で観てくれるなど、雛瑚にとっては神対応の真白。しかし、ガレキの道は1日にしてならず。何なら有毒ガスの出る作業や危険の伴う工程もあり、文字通り命を削って作られている側面もあって素人には厳しい道ですが、真白は果敢に挑戦していきます。そうなったらもう、雛瑚との距離は縮まっていかざるを得ません。優しい世界がそこには広がっています。 読者としては、何も知識がなくとも真白と同じ目線で少しずついろいろなことを知りながら楽しく物語を追っていけますし、詳しい人はあるあると共感しながら真白の成長・沼へと脚を沈めていく様を笑顔で眺めていく楽しみ方もあろうと思います。 「無いなら自分で作る」 という、ガレキや引いては二次創作の究極的な部分も非常に気持ちよく描かれていて、好感触です。 令和的な感覚ですが、世間的にはこうした趣味も20〜30年前より格段に受け入れられ易くなっているのだろうと思います。アニメを観るのは普通のことになり、フィギュアもより身近なものになりました。真白のように、自分で積極的に手にしたことはなくても、それを創っている人に対して尊敬を持ち、好意的になる若い世代の子は増えていることでしょう。そう考えると、ある意味では良い時代になってきているなと。 気が早いですが、この作品がアニメ化されて人気が出たらそこから原型師になる人も出てくるでしょう。長く続いていって欲しいです。