晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない

ポップに見えて実はジェンダーに深く切り込む作品 #1巻応援

晃くんかもしれないし晃ちゃんかもしれない 八寿子
sogor25
sogor25

ひょんなことから出会った同級生・晃と仲良くなるものの、晃の性別が男性なのか女性なのかわからず、それに翻弄される一真の様子を描いた作品 一読するとラブコメっぽい作品なんですが、解像度を少し上げて読むと、その第一印象とは違った側面が見えてきます。 仲良くなるにつれて一真が晃に直接性別を聞きづらくなってくる、という展開までは想像に難くないのですが、一真が晃の性別を探る中で露わになってくるのが、一真の内面に存在した“ジェンダーロール”の意識。 つまり、男性ならこういう行動をするはず、女性ならこういう行動をするはずという潜在的な意識を元に一真が晃の性別を見極めようとしている様が描かれます。 その結果、“ジェンダーロール”に囚われない振る舞いをしている晃、そして友人たちもそれを自然に受け入れている様子と、実は“男らしさ”という固定観念に縛られて生きていた一真の様子が対比となって浮かび上がってきます。 軽妙なタッチで描かれていますが、その見た目に反してジェンダーについて深いところに切り込んでいる作品です。 もちろん一真と晃の関係性の変化を追っていくだけで楽しく読める作品ですが、晃の性別がどちらかという2択だけではない、様々な可能性が散りばめられているので、そういう要素を汲み取っていくとより楽しめる作品だと思います。 1巻まで読了

ブラックバウンズ

暗い、黒い、怖い、面白い。 #1巻応援

ブラックバウンズ 堀出井靖水
nyae
nyae

とにかくすごい漫画が生まれたなと思います。語彙力ないので、このクチコミ読んでもストーリーは理解できないと思いますが(自分もそんなに分かってないかも)、興味のある方だけ読んでください。 まず、特徴として舞台が深海なので1巻の3分の2ほどのページがほとんど黒くて暗い(内容がではなく)。紙の単行本見ると一目瞭然。あるところから突然紙が白くなるので、ここから何かがガラッと変わるんだなというのがわかる。 いざ読み始めると、前半はひたすら命の危険が伴いながらも目的のために深海の底を行くリビティナとジャック2人の様子が描かれます。ここまでで既にそこそこの長旅をしてきた様子。リビティナは深海で生まれ浅海を知らないので、ここを抜け出したいと思っている。一方ジャックは、浅海で生まれ育ち、とある出来事(これもまだ謎)をきっかけに、深海から故郷への帰還を目指しています。しかし、2人はいつどこでどのように出会ってなぜ共に行動するようになったのかは、1巻には描いてありません。そんなところも含め、謎がとにかく多い。 前述のガラッと変わるところからは、事情がありジャックと別行動になったリビティナの正体が明かされます。その姿が予想外すぎて驚きました!同時に登場人物も一気に増えるとともに、深海の歴史と知られざる秘密も徐々に暴かれるが…と、ざっくりいうとそういう話。 他のコメントにもありますが、常につきまとう不安感・得体の知れない感がメイドインアビスやBLAME!ぽさがある。ダークファンタジー好きにはたまらない内容だと思います。謎が多い分、なにか凄いものが隠されていそうな気がしてとても興奮します!

猫とシュガーポット

「人に言えない」生々しい百合 #1巻応援

猫とシュガーポット 雪子
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

『ふたりべや』雪子先生の短編集は、kadokawa、双葉社のアンソロジー掲載作品、同人作品に加え、書き下ろし。アンソロジー読者には既読の作品もあるのだが、一冊に纏まると共通点が見えてくるのが、面白いところ。 全体を貫いているのは「人に言えない」事。 人に言うのが憚られるような、変わった嗜好や感覚の生々しさ。性癖的にも精神的にも、遂に受け入れられる時の無常の喜び。秘密の関係に、密かに浸る背徳感……細やかで軽いタッチに中和されつつ、濃厚な感覚がクセになる。 ●『猫に離人』『猫と囀り』『猫に電話』…人が野菜にしか見えないキャバ嬢は、人の姿に見えた女性と付き合い始める。 ●『シュガーポットは壊れない』…かなり変わったM癖を持つ女性は、友人に連れられたSMイベントで意外な人と会う。 ●『つるつる』…恋人の毛を抜きたい子。 ●『私の幼なじみは…。』…幼馴染と離れたいギャルは、清楚系幼馴染に「アブノーマルに」ガンガン迫られる。 ●『午前1時のコインランドリー』…上京したてのOLは、コインランドリーで知り合った美人に部屋に誘われる。 ●『蝶々の暇つぶし』…やる気のないメイドがお嬢様に取り立てられて……? ●『鬼と山神』…人の世を追われた鬼の姫は、山の神に触れられる。

数学ゴールデン

高校数学の最高峰を目指す#1巻応援

数学ゴールデン 藏丸竜彦
六文銭
六文銭

絹田村子先生の「数字であそぼ。」もそうですが数学系のマンガが出てきて、かつて数学好きだったものとしてはホクホクします。 youtubeでも数学を解いている動画が増えて、個人的に世は数学ブームなのか?と期待してます。 (意図的に自分がそういう情報を拾っているだけという噂も) 数学の世界って何が面白いのかって、理論のほうが現実よりも先行しているってところなんですよね。 理論的には正しいことを証明できるけど現実で観測できない(むしろ実態がない)とか、なんで星の数ほどあります。 昔、自分が数学に夢中になったエピソードの一つが虚数です。 2乗するとー1になるものをオイラー先生が「i(アイ)」と設定し、ガウス先生が実数と虚数をあわせて「複素数平面」として導入したのが、1700~1800年代。 もう200~300年くらい前なのですが、これが今の携帯電話の回路のなかで使っていると聞いて、ぶったまげましたよ。 稀代の天才たちが水も漏らさぬ理論を作り上げて、テクノロジーが進化することで凡人たちにも活用されるとか、どんだけ数学が先行しているのかを物語るエピソードだと思います。 数学の凄さと面白さを知った青少年時代です。 (その後、大学で数学の深遠なる闇を知って挫折したものです。高校までの数学とはなんだったのか?となる感覚は「数字であそぼ。」をお読み頂くとよくわかると思います。) さて、本作は、高校数学の最高峰ともいえる「数学オリンピック」を目指す主人公の話。 部活でインターハイを狙うとかはよくありますが、数学オリンピックとはなかなかニッチなライン。 これが理解されず周囲の嘲笑の的になってますが、それでも自身の強い思いで目指す姿と、また主人公は有名私立高校を落ちて、数学オリンピック出場者がでたこともない高校から目指すハングリーなところも良い。 やっていることは頭脳戦だが、熱いスポ根の臭いを感じます。 一風変わった、だけど同じ目標をもつヒロイン(?)七瀬マミも、なんだかんだと切磋琢磨し、今後才能を発揮しそうな予感。 数学という思考世界に情熱を捧げる高校生の姿も、スポーツと違ってまた良いものですよ。

瀧夜叉姫 陰陽師絵草子

超絶筆致の平安陰陽ファンタジー #1巻応援

瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 夢枕獏 伊藤勢
ANAGUMA
ANAGUMA

これはすごい…。あやしくもきらびやかな平安の空気感を醸す精緻な設定に、一癖も二癖もあるキャラクターたちの洒脱な掛け合い。そして読後に全コマもう一度見返したくなるようなエネルギーに満ちた画面! 自分は夢枕獏作品にも平安時代にもとんと疎いのですが、本作に触れ「こんなにも心躍る世界があったとは!」とさっそく沼にハマりそうです。 近頃とある英霊バトルゲームなんかでも平安時代がフォーカスされたりして、本作に出てくるような登場人物の名前も見かける機会が増えてきた次第。 スカした態度の安倍晴明に存在そのものがヤバそうな蘆屋道満(でもめちゃめちゃカッコイイ)、そして最強の格が溢れんばかりの俵藤太!! 名だたるスーパースターたちが本作でも危険な魅力を爆発させていて、歴史をふんわりとしか知らない自分も心を鷲掴みにされてしまいました。 安倍晴明と源博雅がさまざまな怪事件の調査に乗り出すまでが1巻で、本格始動はこれからというのにも関わらず読み応えがすごいです。ゴリゴリの陰陽バトルが始まってしまったら一体どうなってしまうんだ…。もう続きが楽しみでしょうがないです。

Lost Children

身分の異なる2人の友情、決別、そして未来の物語 #1巻応援

Lost Children 隅山巴文
sogor25
sogor25

舞台となるのは厳格な身分制度が残るシャルダオ連邦王国。 その身分制度の最下層ガティヤに属する少年ランは、乾物屋の店主に難癖をつけられているところを通りがかりの女性カヤに助けられ、そこで彼女の息子・ユリと出会います。 富裕層の子供でありながら学校でいじめられているユリは最下層に見ながら一生懸命に生きるランと意気投合し親交を深めていきます。 そんな身分の違う2人の友情を描いた作品です。 と、ここまで紹介したあらすじなんですが、実はこちらは本編第3話からの内容になっています。 というのも第1~2話はこの2人の出会いから6年後を描いており、ランは革命軍の一員として政府と戦っており、一方のユリは山岳地帯の村というランとは離れた場所でひっそりと暮らしています。 なぜこの2人が袂を分かつことになったのか、そして今後2人の運命がどのような道を進んでいくことになるのか、過去から現在そして未来へ向かう繋がりから目が離せない作品です。 この作品は日本国内の作家さんが書かれているのですが、最初は単行本として書き下ろされフランスで発売されており、現在は秋田書店の別冊少年チャンピオンで連載中のようです。 そういう経緯もあって、今後も応援していきたい作品です。 2巻まで読了

凸凹のワルツ

弁当男子×不器用教師の"秘密のレッスン" #1巻応援

凸凹のワルツ 森野きこり
sogor25
sogor25

お弁当を作ってそれをSNSに投稿することが趣味の高校生・春海くんはある日、提出物を出しに国語科準備室に入ったときに古文の水原先生が中身が真っ黒なお弁当を広げているのを目にします。 そのお弁当が自分が投稿したお弁当のレシピをもとに作られたことを知った彼は、思わずその日持ってきていた自分のお弁当を先生にあげてしまいます。 それをきっかけに晴海くんが水原先生に弁当作りを教えることになるというストーリーの作品です。 春海くんは匿名で投稿しているSNS上では上々の人気を得ていましたが、過去の経験から自分の好きを否定されることを恐れて学校の友達には弁当作りの趣味のことを話せずにいました。 そんな秘密を結果的に自分から水原先生にバラしてしまうことになるのですが 水原先生がその趣味を否定せず認めてくれたために、徐々に彼女に対して心を開いていきます。 水原先生は身長180cm以上で授業の雰囲気からも暗い印象がある先生でしたが、春海くんとの弁当作りの"レッスン"の中では普段とは違う柔らかい表情も見られそのギャップも楽しい作品です。 もしかしたらこの二人の中が今後さらに発展するかもしれないっていう期待もあり、また、登場するお弁当は見た目も中身も良くできていて料理漫画としての側面もしっかりある、いろんな魅力の詰まった作品です。 1巻まで読了

シルバーポールフラワーズ

官能と競技、二人が交わる時 #1巻応援

シルバーポールフラワーズ 如意自在
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

前作『はるかなレシーブ』では、カメコやマスコミのせいでエロスな視線で見られがちなビーチバレーを、躍動する肉体の迫力と明るいロマンシス群像劇で性的な視線を打ち消し、感動的な王道スポーツ漫画として結実させた如意自在先生。 新作『シルバーポールフラワーズ』はそこから更に踏み込んで、「ポールダンス」という性的なショーを想起させる物を扱い、官能と競技の狭間にあるズレと共通する物、アンビバレンツな感情を描いている。 ★☆★☆★ ポールダンスを、従来のエロス漂うショーとして舞う女性と、「ポールスポーツ」という競技として取り組む女性。この二人が出会う事から、物語は始まる。 お互いを「冒涜だ」と感じ、反発する二人はぶつかり合う。それぞれの思い入れが語られる事で、どちらにも共感出来る私の心は宙吊りのまま、話が進んで行く。 古く妖しい劇場で、プライドを賭けて踊り合う二人。その一瞬の邂逅は互いに影響を与え、またそれぞれの「戦い」に戻っていく。方や競技の高みに、方や本当の誇りを取り戻す為に。 2巻以降、どうなるのだろう……先が見えない。どちらの場にも二度と立つ事は無さそうな、二人はどう関わっていくのか。 それぞれの道を描きながら、心の強敵(と書いて友)的な関係性が紡がれていくのか……もしかしたら強い反発の分、焼けつく様に熱いロマンシスが、展開されるのかも知れない(1巻時点での予想です)。

舞台に咲け!

演劇部で始まる、心揺さぶる青春ストーリー #1巻応援

舞台に咲け! 春園ショウ
sogor25
sogor25

人と話すのが苦手で、高校入学を機にそんな自分を変えたいと思っていた主人公の尾庭旭(あさひ)。 そう思っていた矢先の入学2日目、電車の遅延のせいで学校に遅れてしまいます。 学校では部活動紹介の真っ最中、急いで体育館に向かう彼でしたが、体育館へ向かう未知の途中でうずくまっている人を見つけます。 旭が声を掛けると、どうやら彼も部活動紹介に遅れてしまったのですが、彼は人の目線が苦手で、体育館に入ろうとしたに振り返るみんなの目に怯えて中に入れなくなってしまったとのこと。 何とか彼を中へと送り、自分もクラスの列に入り部活動紹介を見ていた旭でしたが、演劇部の紹介に入った時にあることに気が付きます たった1人で舞台の上に立ち堂々と演じている人物、それが先ほど道端でうずくまっていた彼だったのです この出会いをきっかけに旭が演劇部に入部することになるという物語です 旭が入ることになった演劇部は実は部員が3人しかおらず、部活動紹介で演じられたのが1人芝居だったのもそれが理由でした。 そこに旭が入り、4人で活動していくことになるのですがこの4人の関係性が抜群に魅力的で、部活動の運営や演劇論を通して互いのことを知り関係性が深くなっていく様子に素直に心が動かされます。 また、人と話すのが苦手という旭のコンプレックスが単なる物語の導入の取っ掛かりとしてだけでなく、彼の人物像の深堀り、そして彼が部活に入ったことで触れる演劇論にもリンクしていて、旭の成長の物語としてもすごく完成された作品です。 1巻まで読了

りこさんブッチギリです!

ギャルが魅せるカット主戦型! #1巻応援

りこさんブッチギリです! 大田均
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

いやぁ、りこさんカッコイイわぁー。 マイペースを貫くギャルの明るさ、相手を手玉に取る余裕、手の内を見せない底の知れなさ……そしてカットマン! 卓球やってると、カットマン憧れます。(私、中学時代卓球部でした)で、実際にやってみようとすると、これがえらく難しい。 相手の強い打球に対してミスの許されない返球、広い守備範囲をカバーするフットワーク、長いラリーを重ねる気力・体力……かなりしんどいけど、観ている方はワクワクするんですよね、パワーをいなし、軽々と返球するクールな感じが。 りこさんは、男子の強打もあっさり打ち返すし、強い回転のサーブも完璧にブロック。「あ〜しんど!」とか言いながら爽やかな笑顔。そしてカット打ちのフォームが、しなやかで美しいこと……もう惚れる!でもどうしてそんなに強いの? 「卓球は布石のスポーツ」という言葉は、りこさんの二つの試合(非公式)にも端的に表れています。巧者に対して、なかなか手の内を見せない。相手にギャルと侮らせ、完璧な守備で相手を引き出し、狂わせ、最後に牙を剥く。完全にりこさんの掌中。気持ちいい! マイナーな「カット主戦型」がトップを獲る可能性は、ギャル姿で堂々としているりこさんの強メンタルにあるのかも?今後りこさんが何処まで躍進するのか、期待してしまいます。 そして部活からはみ出した連中に、りこさんが何を教え、彼らがどう変わっていくのか?元ボクサー女子が、りこさんの守備型卓球を見て、どう触発されるか? ……目標はやたら高いけど、大丈夫?

こいぐるみ

彼女は「べき思考」を手放すか #1巻応援

こいぐるみ たなかのか
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

すべき思考orべき思考とは、認知の歪みと言われる偏った思考の一つ。道徳・一般通念や理想像に過度に固執する状態であり、精神疾患を長引かせる要因にもなる厄介な思考。 主人公の女性はこの「べき(すべき)思考」の持ち主。常に「べき」を振り撒く彼女は、何をするにも「べき」と音を出していて痛々しい。 そんな彼女の心を救うプランナーの男性は、キャラクターデザイナーの彼女が創るキャラを愛し、彼女をいつも見てくれる。しかし実は彼は……なんじゃそりゃ!?(試し読みを読もう!) 軽いタッチのラブコメには、ちょっとモヤッとする人ばかり登場する。主人公の家族の人でなし感は物凄いし、主人公に求愛する男性も何を考えているのやら……そして主人公のべき思考も頑なで、自他に押し付ける姿には抵抗感がある。 だが主人公の「べき」が己の心を守っている事、彼女が『アリとキリギリス』の呪いの被害者である事には、心底同調してしまう。誰も望んで苦しい思考を身に付けない。それは防御反応なので、ある程度は周囲のせいなのだ。 男性の可笑しな求愛に振り回され、怒り傷つきながら気付かされる考え方に、ハッとする。頑なな自分と向き合って、べき思考の奥にある「望み」を知る様子に、彼女の心に平和が訪れる事を、我が事の様に祈ってしまう。

魔女をまもる。

"魔女狩り"から人々を救うため奔走した、実在した医師の物語 #1巻応援

魔女をまもる。 槇えびし
sogor25
sogor25

物語の舞台は16世紀ヨーロッパ。 領主のヴィルヘルム5世に仕える医師・ヨーハン・ヴァイヤーは、狼の姿になって人間襲う“人狼”が現れたという町に派遣される。 そこで彼は自身の医学の知識と当時の宗教観に囚われない分析眼で人狼の正体を見極めようとする、というのが導入のエピソードとなる作品。 16世紀のヨーロッパに実在し、魔女裁判に反対した最初期の人物として知られる医師・ヨーハンの生涯を描く物語。 作中では魔女を筆頭に人狼や悪魔など、人々を恐怖に陥れる者たちの存在が仄めかされる。 それに対しヨーハンは、それら未知の存在は医学で説明することが可能だというスタンスをとり、その上で「無知こそが恐怖の根源であり、知ることをためらってはいけない」という師の教えに従い、"魔女"とされてしまった人々を医療の力で救うために奔走する。 なのでこの作品は決してファンタジーではなく、自らの信じる道に従い人々のために奮闘するヨーハンの戦いの記録である。 また、ヨーハンの行っている治療は当時の倫理観で見るならば異端であるが、現在の医療の知識を持ってこの作品を読むと作中のヨーハンすらも辿り着いていない事実が見えてくる。 この「当時の人々の視点」「主人公の視点」に加え「現代にいる読者の視点」によって見え方が異なる、そういう意味ではこの作品はもはや"歴史"そのものを描いているのかもしれない、そういう感覚を覚える作品。 上中下巻読了

九条学園生徒会は交わる

男女混合オメガバース×エリート同士の頭脳戦 #1巻応援

九条学園生徒会は交わる 幸路 月夜涙
sogor25
sogor25

優秀な人材を集めて日本一のエリートを育てるための学校・九条学園。 そこには絶対的な権力を持つ生徒会が存在する。 ある日、"α"である生徒会長の蓮は、1年生の首席でありながら"Ω"であるために虐げられている綾音と出会い、彼女を生徒会に入れることを宣言する。 この作品は"オメガバース"の世界観を踏襲しており、特に"生まれつきの能力により人間の階級を分ける"という要素を強く作品に組み込んでいる。 αである生徒会長の蓮と副会長の楓、βである会計の樹、そして蓮に拾われる形になったΩの綾音、この生まれつき階級の違う4人が同じ生徒会にいる事自体が不自然なのだが、九条学園生徒会という絶対的な権力を持った存在の中で それぞれの"目的"のために策略を巡らせていくという、頭脳戦・心理戦が物語の中心にある作品。 登場人物たちの思考が深く展開もテンポよく進んでいき、そしてその中にオメガバースの設定が上手く組み込まれているので、会話劇や作品の世界観にとにかく引き込まれる作品。 ただし、オメガバースの"番を作る"という意味合いの描写のほうが全くないわけではなく、恐らく今後の頭脳戦・心理戦の中に絡んできそうな雰囲気がある。男女混合のオメガバースということもあり、いろんな要素が絡み合ってどんどん複雑な関係性が生まれる作品になっていきそう。 1巻まで読了

いじめるアイツが悪いのか、いじめられた僕が悪いのか?

20年の時を越えた、いじめの"因果応報" #1巻応援

いじめるアイツが悪いのか、いじめられた僕が悪いのか? 日丘円 君塚力
sogor25
sogor25

20年ぶりの中学の同窓会で再会した、いじめられっこの相沢とその首謀者だった鈴木。 同窓会の間は表向き楽しそうに談笑する二人だったが、写真撮影でみんなの注目が外れたタイミングで鈴木は相沢に声を掛けてきて「いじめられる側にも原因がある」、など挑発するような発言をする。 このように今だに相沢のこと見下してる様子の鈴木だったが、実は相澤には鈴木に伝えていない秘密があった。それは自分が鈴木の1人娘・詩織の担任の教師だということ…。 一見すると相沢の鈴木に対する復讐の物語だが、どうやら物語はそう単純ではなさそう。というのも、相沢だけでなく、他の登場人物の負の感情が物語の端々に描かれていて、それらが複雑に絡み合って現在の関係性が成り立っている様子。そしてその中心にいるのが、何も知らずに学校生活を送る鈴木の娘・詩織。 気になるのは、相沢が鈴木に対する復讐心を持っていそうな雰囲気はあるのだが、彼が鈴木や詩織に復習のためのアクションを起こしたという"明確な描写"が今のところ見られないこと。この作品が相沢の復習の物語なのか、それとももっと多くの登場人物の感情が入り乱れた複雑な愛憎劇なのか、詩織の今後の運命と合わせて予断の許さない作品。 1巻まで読了