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少年から大人に変わっていく思春期悩み、間違い、考えながらも少しずついろんなことに向き合っていく少年たちの物語――。文武両道でいつも自然と周りに人が集まる人気者の棚橋優征《たなはしゆうせい》。優征には誰にも打ち明けられない憧れている同級生がいる。それは、周りの友人たちが気にも留めないような目立たない少年、同級生の中川。ふたりはある出来事をきっかけに親しくなっていく……。表題作『変声』のほか「変声~それから~」「変声~蕾(つぼみ)」描き下ろし「モダンにめしませ」を含む4編を収録
『銀のくに』と、この『変声』はやしわかさんの初単行本が2冊同時発売となりました。
こちらは、表題作の「変声」と、それに連なる「変声~それから~」「変声~蕾(つぼみ)」、そして「モダンにめしませ」の4編を収録した短編集です。
表題作の「変声」については、以前に↓で書きましたのでご参照ください。
「変声~それから~」を読むと、サブキャラクターたちの掘り下げによって「変声」の魅力がさらに立体的になります。
「変声~蕾(つぼみ)」は、「変声」本編を読んだ人へのご褒美のように感じます。
「モダンにめしませ」は、恋する隼人くんがバイトをする古着屋で買ったコートに宿ったモダンガールの幻霊に戸惑う、20歳の女の子・陽奈の物語。
自分に自信のない陽奈でしたが、可愛くない女の子なんていないと鼓舞してくれるモダンガールの影響で、陽奈は少しずつ変化を遂げていきます。
モダンガールが語る
″己を知らずに合わないことや興味のないことを
無理にやってもダメよ
彼の好みの中で自分の好きを見つけなさい
それはこの恋に限らず今後のアンタの武器にもなるわ″
というのは、すごく良いアティテュードだなと思いました。たとえ恋が実らなかったとしても、確実に自分は成長できる。10代初期かその前に知っておきたい言葉です。
恋をすることでより自分に向き合い、今まで知らなかった自分も知っていくところは「変声」の終盤に最後にラジオで語られた誠実な言葉とも重なりました。
『銀のくに』もそうですが、蟠るものもありながらそれを真っ当に乗り越えていく姿を見て心に風が通ります。
総じて「誠実に向き合う」ということの大切さ・尊さを語ってくれる短編集です。はやしわかさんは今後もますます活躍していくであろう方なので、今からぜひ注目してみてください。