幼いころから絵を描くことが大好きで、それによって周りを幸せにしてきた妹の維音。美大を目指す彼女ですが、どうも様子がどうもおかしく、実はいじめや親からのプレッシャーなど強いストレスに曝され続けて統合失調症を発症していたことが判明します。
まともな生活を送ることができない維音、そしてそれを支える兄の自分はどうなってしまうのか。現実でも大きな事件を引き起こすこともある切実なテーマに取り組んでいる作品です。
自分を罵倒する幻聴が聞こえてくる様子や、もうひとりの自分が視える様子など統合失調症の症状が上手く可視化され表現されておりその辛さがよく伝わってきます。
統合失調症を揶揄するモブの若者たちも登場しますが、後天的な要因で誰しもが陥ってしまう可能性があるもので決して他人事ではありません。自分や身の回りの人が突然そうなるかもしれないのです。そうなったときに、どんな苦しみがあってどうやって接するべきでどうやって乗り越えて前に進んでいけば良いのかという心構えがあるのとないのでは大きく差が生まれてくるでしょう。
元々は優しく真面目であった維音が豹変してしまう姿は、私が接してきた統合失調症の人とも通ずるものです。ましてや、唯一無二の妹がそうなってしまった時の主人公の苦しみを考えると居た堪れません。
しかし、救いなのはカットバックで冒頭に希望溢れる未来が示されていることです。
作中で担当の医師が
″苦しみの中で生み出されたものは
人の心を打つ力があると信じています″
という言葉を伝えてくれて、それが希望の縁になっていくシーンは沁みます。
苦難に満ちて傷つき汚れに塗れても、その先にある光への祈りを絶やしたくないと思う物語です。
ゲーム会社の契約社員として働く凪は、ある日両親の離婚が原因で離ればなれになった妹の維音と再会する。幼い頃と雰囲気の変わった維音に困惑する凪だったが、美大に入るために浪人中で息抜きにきたという維音を快く迎え入れた。しかし、徐々に維音の様子がおかしいことに気づき――…!?統合失調症を患いながら画家を目指す少女と、その家族をリアルに描いたヒューマンドラマ。
ゲーム会社の契約社員として働く凪は、ある日両親の離婚が原因で離ればなれになった妹の維音と再会する。幼い頃と雰囲気の変わった維音に困惑する凪だったが、美大に入るために浪人中で息抜きにきたという維音を快く迎え入れた。しかし、徐々に維音の様子がおかしいことに気づき――…!?統合失調症を患いながら画家を目指す少女と、その家族をリアルに描いたヒューマンドラマ。