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放課後帰宅びより

夢破れた先で歩む道から見える景色 #1巻応援

放課後帰宅びより 松田舞
兎来栄寿
兎来栄寿

惜しまれながら終わってしまった『ひかるイン・ザ・ライト!』の松田舞さんによる最新作です。 『錦糸町ナイトサバイブ』はローカルかつニッチな面白さがあり、『ひかるイン・ザ・ライト!』はまっすぐな情熱にあてられるのが気持ち良い作品でしたが、本作はそれらともまた違った雰囲気をまとっています。 主人公の佐藤瞬は、中学時代はサッカーの県大会でMVPに輝き将来を期待されていたものの、足のケガにより運動全般ができなくなってしまった少年。そんな瞬が、「直帰ちゃん」と渾名される佐藤直希の「ハイパー帰宅部」に強引に誘われていく物語です。 私も中学までは運動部だったのですが肺を患ってしまい、高校では本気で運動をして上を目指すことができなくなってしまっていたので、運動は諦め文化系活動を極めようと方向転換しました。その結果、今があるので人生万事塞翁が馬です。ともあれ瞬くんの気持ちは多少なりとも解ります。 本当に夢を叶えられる人というのはほんの一握りで、多くの人の人生には挫折や諦念をする瞬間が訪れます。それでも、その先に人生は続いていきます。そこで何を見て、何を為していくのか。その分岐の先でしか見られなかった景色も、案外悪くなかったりします。そういった意味で、この物語が響く人は少なくないでしょう。 学校の帰り道にある何気ないものからもロマンを感じられる直希の影響により、瞬が少しずつ変わっていく様子に心が解れます。明けても暮れてもサッカーに打ち込んでいて夕陽に染まる町並みを見る瞬間もなかなかなかったであろう瞬が、高校生になって初めて味わうゆっくりと過ごす時間に人生の機微や大切なものが詰まっています。 瞬と直希の何とも言えない関係性、ラブのコメり具合もとても良いです。5話や6話を経て8話で見せる瞬の表情など堪りません。3話のエピソードも好きですが、その最後に出てくる直希のセリフから滲み出る感性が本当に良いし、瞬が絆されるのも解ります。 余談ですが、文化祭の出し物が「赤ずきんオブ・ザ・デッド」だったり、「サイバーパンクメイド喫茶」だったりする自由な校風も、私が通っていた学校に近いものがあり親近感が湧きました。

宝石の国

重さと軽さが同居する、命の話

宝石の国
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。

ほうかごきたくびより
放課後帰宅びより : 1
放課後帰宅びより : 2
放課後帰宅びより : 3
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