![やまさん~山小屋三姉妹~](https://res.cloudinary.com/hstqcxa7w/image/fetch/c_fit,f_auto,fl_lossy,h_120,q_auto,w_120/https://manba-storage-production.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/uploads/book/regular_thumbnail/688700/4557b739-39f9-4184-bd3d-9a804723304a.jpg)
山の上に登り、雲海の上に昇る朝日を見るのが大好きです。
草木も眠る丑三つ時に目を覚まして、身を切るような冷気を頬に感じながら一切の光がない暗黒の山道を登る。登る。登る。息も絶え絶えになりながらも、徐々に白んでいく世界を感じつつ頂上に辿り着く。興奮で疲れを忘れた体を少し休めながら、紫がかる大好きな色の空の移ろいを眺める。清澄な空気は一呼吸ごとに自分を再生させてくれるようで。暫くして山の向こうから一際眩いご来光が立ち昇る。照らされる霧のかかった山々と、どこまでも美しく広がる空は現世とは思えないように霊妙で、思わずただありゆるものへの感謝が湧いてくる。
そんな瞬間を、こよなく愛しています。そして、この『やまさん~山小屋三姉妹~』は、そんな瞬間の素晴らしさを疑似体験させてくれる作品です。
私が主に登る山はまだギリギリ電波も届き、ある程度までは車も走れますが、この作品の舞台となる徳盛連峰の「雲海小屋」はもっと僻地にあり、電波も電気も通っておらずスマホも使えなければ、車では登れず人の足でないと辿り着けない場所。
そんな所とは知らずに、クラスメイトにプリントを届けようとして迷い込み滑落してしまった無謀な少年と、山小屋を運営する三姉妹の物語です。
山はただ美しいばかりではなく人の命を容易く奪う危険な場所であることを大前提に、それでもなお余りある山と山小屋での暮らしぶりの魅力をディティール豊かに描いて行きます。
まず何と言っても山の景色の絵が美しく、上で述べたような雲海とご来光のシーンなどは最高です。なるべく大きな画面で見ていただくと、よりその美しさや迫力が伝わることでしょう。雄大な景色を目の当たりにする主人公に、400%シンクロします。
山小屋も設備は古く、虫や獣などの対策やトイレなど不便も多く、歩いて運んでこないと物資も何もなく管理の大変さも伝わってきますが、それでも魅力的な露天風呂の存在だったり、山小屋ならではの濃密なコミュニケーションの楽しさだったりが描かれていることで「良いなぁ、行ってみたいなぁ」と思わせてくれます。
三姉妹のキャラクターもそれぞれ個性があり魅力的で、主人公との関係性の変化が気になるところです。
今現在、となりのヤングジャンプで無料で読めるのは3話までなのですが、4話のご来光シーンは読んでみて欲しいなと思います。
単行本発売に際してボイスコミック化もされたので、まずはそちらから試しに入ってみるのも良いかと思います。上記のご来光シーンがこちらでは観られます。