じじまごぐらし【単行本版】 森脇葵
尓太郎の実父・瑛二は許していい男なのか?
おじいちゃんが育児をするマンガといえば『じじいくじ ~元最強刑事の初孫育児~』がありますが、あちらよりもかなりシリアス寄りな作品です。切なく、しかし心温まる内容になっています。
妊娠報告を受けた時に「もう帰ってくるな」と勘当して以来会っていなかった娘が、その5年後に交通事故で帰らぬ人となってしまい、遺された5歳の男の子・尓太郎(にたろう)を引き取ってふたり暮らしを始める68歳の老年男性が本作の主人公です。
5歳にしてしっかり初対面の人への挨拶やごみの分別ができる孫と、葬儀の仕事一筋だったため家は散らかり放題で味噌汁すらろくに作れない祖父。色々といびつなふたりが、それぞれに支え合いながら否応なく始まる新生活の様子が描かれます。
(ご愁傷さまの)
”愁とは憂い
傷とは痛み
心の傷を癒やすには
思い出を分かち合うこと”
というモノローグと共に、孫から見た母親である自分の娘の話をするシーンが印象的です。自分を「じじちゃん」と呼び、自分にも母親にも似た部分がある孫の愛しさといったらないでしょう。
私自身も割とそういう子供で、その時分に『こどものおもちゃ』を読んだ際にも同じことを思いましたが、幼くして老成せねばならない境遇は不幸です。が、それ故に他者に優しくなれる部分もあると思います。
生前にもっとできることがあった、掛けられる言葉があった、という後悔は一生消えないでしょう。それでも、悲しみと共にそれらを乗り越えて新たな小さな幸せを得ていく彼らを応援してしまいます。尓太郎くんが元気で優しい青年になりますように。