蒲田の裏通りに実際にありそうなお店の話。
鎌田にあるスナックを日替わりで担当している小夜子。 昼は、OLとして働いている。 客として来ていたりきやが、生活に困窮していると知った小夜子は・・・。 無口だけと、外見も良く、好みのタイプである、りきやとヒモ契約を提案する。 そして、ふたりの不思議な関係が始まる。 りきやは、自分の知らないうちに魅力をばらまいている男子。 何でも、受け入れてくれる器はありそうだが、ただ、生活力に問題がある。 結婚したら、大変そうだが、癒しにはなりそう。
名手による淡麗な描線から生まれる濃密な関係性を、日替わりで店を預かる小夜子と彼女の恋人の力也の視点で紡いだ連作集。二人の日常と様々な来客とを、夜の時間を軸に展開する物語として描きます。
顔は良いのに社会生活を送るのに少し向いてない若い青年が、ダブルワークの女性に体目当てで養われる物語。
絶妙なのは、青年が基本的な気質は真面目であるにも関わらず、純粋に仕事ができないのとコミュニケーション能力にも長けていないことで、自分にもっとできることはないかと日々罪悪感を覚えながらヒモ生活を送るところです。女に稼がせて自分は悠々自適、というヒモとは一線を画します。
しかしながら、そんな中でもナチュラルなクズっぷりも各所で発揮していき、総体として表出する人間らしさのリアルな描写に感じ入ります。
単巻で綺麗にまとまっており、読後感はとてと良いです。夜の街に漂う世の中の酸い・甘いをしみじみ味わいたい方にお勧めです。
巻末で触れられている、ゴリラスロウ名義での『ツインズシング』も面白いのですが、玉置勉強さんはこういったテイストの作品で一際輝きを放むと感じます。
勤め先のバーで起こる、「ワリヤス」に頼み忘れてドリンクが足りなくなってしまうことや、少し空気の読めない客への対応など、バー的なお店をやっていた身として共感を覚えるシーンも多々ありました。