コールスローサラダを作ろうとしたわたしを置き去りに居なくなった夫。
どこにでもあるような夫婦のスレ違いから始まる物語ですが、ディティールに富んだ描写がザクザクと突き刺さり、読むほどに感情が揺さぶられました。

読み進めると甲斐性なしにか見えない清司さんも、不器用ながらも糸のことを思って行動していたことがわかります。しかしそれは本人が言うように逃げのアリバイ作りだったんだと思います。
一方で糸も清司さんの象徴である「パンまつり」を守ろうとしました。義務感からだったのか、それを欠けば清司さんとのつながりも消えてしまうと考えたのか…。「パンまつり」が失われたことで、ふたりの関係は一変します。

案の定「パンまつり」を失った清司さんはその変化に耐えられませんでした。
「パンまつり」のなかに佇む糸のイメージは侮辱的かつ残酷です。清司さんにとって糸は「パンまつり」と等価な存在だったことが暴露されるのです。

糸は、ヒトも世界も変わっていくものだと語ります。清司さんを「殺してしまった」糸が彼に手を差し出すのはお腹の子と一緒に生きていくためです。離婚届を握りつぶし、「パンまつり」の欠片に囲まれながら立ち上がった糸は対等な立場で答えを迫ります。
「どうやって生きていくか」を悩み抜いた末の糸の力強く、凛々しい姿が強く印象に残りました。

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